2008.03.30 (Sun)
2000オーバー記念絵

いや、だからカウンターがぶち壊れてやがるから〜(以下省略)
それでもあわてて記念絵描きましたっ!
この子は自小説『Kiss and Cry』の登場人物で、後々重要な役割を果たす予定のキーパーソン的キャラクター…なのですが、まだ名前すら決まっておりません爆
登場もまだ先ですから…い、いつになるんだ…?
いかにも何か悪巧みをたくらんでそうです笑
ええ、そんなキャラです。
当ブログにおいで下さいました方々へ、日頃の感謝の気持ちを込めてささやかではありますが、こちらの2000オーバー記念絵はご自由にお持ち帰り下さって結構です。
いえ、全く無理強いはしませんから、欲しい方だけどうぞ(´∀`;A
ま、ネームはしっかり入れちゃいましたけど笑、しかも扱いづらい縦長…
それと、え〜、シャツのお花柄ですがウチの庭に自生してしまった栽培してはいけない種類のお花の写真を加工したものです(爆)ので、お持ち帰りの際には自己責任において管理して下さいませ笑
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2008.03.30 (Sun)
ウソは罪〜
じつはこの本も欲しいんですよ…
イメージ画像出てないな笑
し、しかし2000円越えとなるとキツイっすよね…
この本は東京サーガと呼ばれるシリーズで、過去の登場人物、主人公たちがちょっとお話に上ったり登場したりしてるので、『朝日のあたる家』が心のバイブルとなりつつある私にとって、なかなかはずすことができない内容なのですよ〜
しかも、『朝日〜』では三番手の役割だった(あ、ウソつきました、五番手くらいです笑)風間センセが主人公と言うことで少し興味があるんですのよ…
他の東京サーガシリーズ、特に『翼あるもの』『真夜中の天使』『朝日のあたる家』を読んだことない人にはあまりおすすめしません…
ほんとはちょっと苦言を言いたい…
手塚治虫キャラみたいにあっちこっち出てこられるのは読む側からするとかなり意地悪ですよ
書く方としては楽しいだろうよ、くそ、私もやってやる〜
はっきり言って主人公が森田透なら即買いしてます爆
ほんの少し登場する程度だとすると微妙です…う〜ん、どうしよう…
続きを読むでコメ返しです。
イメージ画像出てないな笑
し、しかし2000円越えとなるとキツイっすよね…
この本は東京サーガと呼ばれるシリーズで、過去の登場人物、主人公たちがちょっとお話に上ったり登場したりしてるので、『朝日のあたる家』が心のバイブルとなりつつある私にとって、なかなかはずすことができない内容なのですよ〜
しかも、『朝日〜』では三番手の役割だった(あ、ウソつきました、五番手くらいです笑)風間センセが主人公と言うことで少し興味があるんですのよ…
他の東京サーガシリーズ、特に『翼あるもの』『真夜中の天使』『朝日のあたる家』を読んだことない人にはあまりおすすめしません…
ほんとはちょっと苦言を言いたい…
手塚治虫キャラみたいにあっちこっち出てこられるのは読む側からするとかなり意地悪ですよ
書く方としては楽しいだろうよ、くそ、私もやってやる〜
はっきり言って主人公が森田透なら即買いしてます爆
ほんの少し登場する程度だとすると微妙です…う〜ん、どうしよう…
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2008.03.29 (Sat)
新刊出たぜ!
やっと出ました!最新刊♪
でもまだ購入してないんすよ〜(ノД`)
いや、田舎にもどってから使える本屋がないってのは以前、話したとは思うんですけど、それでネットで買うことにしてるんですがね…まとめて1500円以上買わないと送料分かかっちゃうんで、今月はまだ達してないんでちょっと躊躇してるんです笑
他に買う予定の本があるから一緒に頼んどきたいのに、そっちは予約検索してもひっかからないし爆
すげ〜早く読みたい気持ちはあるんですけど、いま激しく貧乏なんで(*´Д`)=з
海斗はどうなっちゃったの?
ジェフリーとナイジェルは無事に潜入できたのかしら?
ついでにキットも笑
でもまだ購入してないんすよ〜(ノД`)
いや、田舎にもどってから使える本屋がないってのは以前、話したとは思うんですけど、それでネットで買うことにしてるんですがね…まとめて1500円以上買わないと送料分かかっちゃうんで、今月はまだ達してないんでちょっと躊躇してるんです笑
他に買う予定の本があるから一緒に頼んどきたいのに、そっちは予約検索してもひっかからないし爆
すげ〜早く読みたい気持ちはあるんですけど、いま激しく貧乏なんで(*´Д`)=з
海斗はどうなっちゃったの?
ジェフリーとナイジェルは無事に潜入できたのかしら?
ついでにキットも笑
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2008.03.27 (Thu)
よその子2
また参加コミュのよその子描いちゃいました。
最近なにげにお絵描き熱アップしてるんでない?
まあね、こんな楽しい企画ないと、多分まったく描かないよ笑
原作者様:凌雪さん
キャラ名:エルダ・イル・ファナードちゃん
凌雪さん、素敵なお子様ありがとうございました♪
好き勝手いじっちゃって、多分別人化してると思いますが、私は楽しく、さらに緊張感を持って作業しました爆
懲りずに下書きなしでべたべた塗り始めたら…Σ(´Д`;)うあ゙
いや〜あやうく日の目を見ないで終わるトコだった…
もう、やめよう、せめて簡単な下書きくらいはした方がいい…

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最近なにげにお絵描き熱アップしてるんでない?
まあね、こんな楽しい企画ないと、多分まったく描かないよ笑
原作者様:凌雪さん
キャラ名:エルダ・イル・ファナードちゃん
凌雪さん、素敵なお子様ありがとうございました♪
好き勝手いじっちゃって、多分別人化してると思いますが、私は楽しく、さらに緊張感を持って作業しました爆
懲りずに下書きなしでべたべた塗り始めたら…Σ(´Д`;)うあ゙
いや〜あやうく日の目を見ないで終わるトコだった…
もう、やめよう、せめて簡単な下書きくらいはした方がいい…

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テーマ : 自作イラスト(二次創作) - ジャンル : アニメ・コミック
2008.03.26 (Wed)
K&C Fly High 1
次の日慌しく家族に別れを告げ、成田から目的地ザルツブルグまで、乗り継ぎを入れずにおよそ12時間半のフライトである。
渡航期間はおよそ三週間を目処にしているが、どうなるかは現地に行って目的の人物に会うまではわからない。
父が指摘したようにかなり無茶苦茶ではあるが、遠征などで旅慣れてもいる上、元来フットワークの軽い翔太であるからこれくらいのことは何ほどのことでもない。
それよりも久しぶりの日常から抜け出せる機会に心が浮き立つばかりだ。
乗り継ぎ地のフランクフルトのライン・マイン空港で4時間の足止めをくらった以外は比較的順調なフライトだった。
だが長時間に及ぶフライトはさすがにこたえた。
翔太は長時間じっとしてるのがことのほか苦手だったので、客室乗務員がいなくなった隙に、席を立ってレストルームそばの空いたスペースや後方部の目立たない所へ移動し、なまった体をほぐしていた。
それ以外は外国人が日本人は乗り物に乗った途端すぐに眠りに就く…などと呆れられてるそのままに、後部座席の空席に移動すると、勝手に2座席分確保して横になって眠り込んでいた。
母の美佐子が出掛けに心配のあまり、やっぱり自分も同行しようかと申し出たが、翔太は断固として拒否した。
指導を頼みに行くのに母親と同伴では格好悪いし洒落にならない、一人では何も出来ない赤ちゃんと思われては師弟関係も結べないかも知れないではないか。
それ以上に翔太自身が人に管理されたり、干渉されるのが嫌いだった。
大概は放任主義の鷹森家であるが、さすがに初めての海外一人旅と言うことで心配だったのだが、息子に拒否されて美佐子は少しいじけたが、それでも最後に小遣いを押しつけて寄越した。
どうやら息子の強がりのうそなど、母はとうにお見通しだったらしい。
父は気を付けて行って来いなどと、当たり前のことを当たり前に言ったが、普通の常識を持った大人がそばに居てくれるのはありがたい。
翔太が本当に間違ったことをしてしまった時に、軌道修正してくれるのも実は父なのだから。
だが父はもうとっくに次男の破天荒さには半ば呆れてあきらめかけているのだが…
正直、世間様に顔向けが出来ないことをしでかした時の後始末くらいしか、己の役割はないと思っていたりする。
母にお兄ちゃんにも連絡しときなさいと言われて、それまですっかり忘れていた兄の翼に電話でおざなりに渡航の件を話した次第だった。
『お前ってばどこまでお騒がせな奴なんだよ。ま、大人しく連盟やマスコミの言い成りになってるよりは、お前らしくて良いんじゃないの。気の済むまであがいてみな』
呆れたように苦笑した後、翔太の決意に発破をかけてくれた。
流石にコーチの杉沼へはお伺いを立てるのに折り詰め持って持参したのだが、渡航の話をしたら快く了承してくれたばかりか、協会に問い合わせてマリア・グルダの正確な連絡先を教えてもらい、ついでにアポイントも取り付けて貰ったのだ。
至れり尽くせりで、戦々恐々とコーチの自宅にお邪魔したのがばかみたいな杞憂に終わった。
けして敵ばかりではない、自分を応援してくれる味方がここにもいる。
いくら感謝しても、し足りないくらいだった。
日本との時差は約8時間、入国手続きを済ませて空港から出るとすでにあたりは暗くなっていた。
空港からタクシーで予約済みのザルツブルグ市内にあるホテルにチェックインすると、その日は疲れて早めに眠った。
翌日地図を片手に、ザルツブルグ郊外にあるという、マリア・グルダの自宅に向かった。
外はまだかなり寒いので、防寒対策はしっかりしてきたし、トランクだと段差のあるところは逆に不便なので、今回カート付のバックパッカースタイルにした。
貴重品だけ持ってホテルに荷物を置いていくことも考えたが、予約したホテルのランクが心配だったため、安全策に持ち歩くことにしたのだ。
元々必要最小限の衣類しか持って来てないので、それほど嵩張らない。
だが、日本から持ってきたスケート靴を無くしたら、悔やんでも悔やみきれない、途方にくれて多分泣いてしまうだろう…
ザルツブルグはのどかで思ったよりも小さな街である。
元々オーストリアという国自体も、面積は日本の北海道ほどであるから日本以上に小国なのだ。
またオーストリアはクラシック音楽を中心に世界に誇る文化大国でもある。
だが中欧ヨーロッパのこの国は、周囲をスイス、イタリア、ハンガリー、ドイツなどに隣接し、目まぐるしい歴史の変転を辿ってきた国でもある。
そして今回訪れたザルツブルグはモーツァルトの生地として、また映画「サウンド・オブ・ミュージック」の舞台や、また夏の音楽祭でも有名である。
もちろん街の景観や、郊外の風景など見所のつきない人気の観光地でもある。
時間があれば翔太も高台に見えるホーエンザルツブルク城をゆっくり観光したいものだが…
ホテルのフロントでも簡単に教えてもらったが、翔太のブロークンな英語プラスジェスチャーでしつこく懸命に聞いた結果、なんとか目的地行きのバスに乗り込むことが出来た。
ヨーロッパは伝統を重んじる頑固な土地柄のゆえか、あまり英語が伝わらないのが難点だった。
その辺もふまえてドイツ語入りの電子辞書も一応携帯してあるが、アジア人には冷たい人間も多く、呼び止めて電子辞書を出す前にうるさく追い払われるのが常である。
だがそんなことでめげるような翔太ではない。
トラブルさえも乗り越えて楽しむことや面白がることが旅の醍醐味でもある。
その点翔太は存分に今の状況を楽しんでいた。
他人に無条件で親切にしてもらうのを当然に思うようでは海外に出る資格はない。
郷に入っては郷に従えと言うことわざにもある通り、お国柄によっては自己主張してうるさいくらい助けを求めなければ誰も気にかけてはくれないのだ。
案外ジェスチャーだけでもあきらめなければ通じるものである。
バスの運転手にも前もってしつこく自分の降りる先を伝えてあったので、最初は迷惑顔だったが最後は呆れて苦笑交じりで目的地の停留所で降ろしてくれた。
のどかな田舎町、春になれば緑も色付いて美しい景色が望めるだろう。
可愛らしい如何にもヨーロッパ的な趣きのある家々が立ち並んでいる。
地図を取り出して住所を確認して10分ほど歩いたところで、その中の一軒家から年配の女性が出てきた。
「あんたがショウタかい?」
「……はい」
翔太は最初かなり訝しげな表情を浮かべていたらしい。
相手はそれを察して名乗った。
「日本のインストラクター協会から連絡をもらってある。あたしがマリアだよ」
これには翔太は内心の動揺を隠し切れなかった。
その心の内面はこうだ。
(このまるいおばさんが伝説の振付師…)
いや、伝説と言うのは翔太が勝手に付けた名詞なのだが…
「まあ、立ち話もなんだ、長旅で疲れただろ。家にお入りよ」
どたどたと巨体をゆすりながら先を行くマリアに促されて、翔太は大人しく従った。
とりあえず英語が通じて助かった…が、ビデオの美女の面影は微塵も感じられず、年月は無情なんだな…としみじみと思ってしまった翔太であった。
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渡航期間はおよそ三週間を目処にしているが、どうなるかは現地に行って目的の人物に会うまではわからない。
父が指摘したようにかなり無茶苦茶ではあるが、遠征などで旅慣れてもいる上、元来フットワークの軽い翔太であるからこれくらいのことは何ほどのことでもない。
それよりも久しぶりの日常から抜け出せる機会に心が浮き立つばかりだ。
乗り継ぎ地のフランクフルトのライン・マイン空港で4時間の足止めをくらった以外は比較的順調なフライトだった。
だが長時間に及ぶフライトはさすがにこたえた。
翔太は長時間じっとしてるのがことのほか苦手だったので、客室乗務員がいなくなった隙に、席を立ってレストルームそばの空いたスペースや後方部の目立たない所へ移動し、なまった体をほぐしていた。
それ以外は外国人が日本人は乗り物に乗った途端すぐに眠りに就く…などと呆れられてるそのままに、後部座席の空席に移動すると、勝手に2座席分確保して横になって眠り込んでいた。
母の美佐子が出掛けに心配のあまり、やっぱり自分も同行しようかと申し出たが、翔太は断固として拒否した。
指導を頼みに行くのに母親と同伴では格好悪いし洒落にならない、一人では何も出来ない赤ちゃんと思われては師弟関係も結べないかも知れないではないか。
それ以上に翔太自身が人に管理されたり、干渉されるのが嫌いだった。
大概は放任主義の鷹森家であるが、さすがに初めての海外一人旅と言うことで心配だったのだが、息子に拒否されて美佐子は少しいじけたが、それでも最後に小遣いを押しつけて寄越した。
どうやら息子の強がりのうそなど、母はとうにお見通しだったらしい。
父は気を付けて行って来いなどと、当たり前のことを当たり前に言ったが、普通の常識を持った大人がそばに居てくれるのはありがたい。
翔太が本当に間違ったことをしてしまった時に、軌道修正してくれるのも実は父なのだから。
だが父はもうとっくに次男の破天荒さには半ば呆れてあきらめかけているのだが…
正直、世間様に顔向けが出来ないことをしでかした時の後始末くらいしか、己の役割はないと思っていたりする。
母にお兄ちゃんにも連絡しときなさいと言われて、それまですっかり忘れていた兄の翼に電話でおざなりに渡航の件を話した次第だった。
『お前ってばどこまでお騒がせな奴なんだよ。ま、大人しく連盟やマスコミの言い成りになってるよりは、お前らしくて良いんじゃないの。気の済むまであがいてみな』
呆れたように苦笑した後、翔太の決意に発破をかけてくれた。
流石にコーチの杉沼へはお伺いを立てるのに折り詰め持って持参したのだが、渡航の話をしたら快く了承してくれたばかりか、協会に問い合わせてマリア・グルダの正確な連絡先を教えてもらい、ついでにアポイントも取り付けて貰ったのだ。
至れり尽くせりで、戦々恐々とコーチの自宅にお邪魔したのがばかみたいな杞憂に終わった。
けして敵ばかりではない、自分を応援してくれる味方がここにもいる。
いくら感謝しても、し足りないくらいだった。
日本との時差は約8時間、入国手続きを済ませて空港から出るとすでにあたりは暗くなっていた。
空港からタクシーで予約済みのザルツブルグ市内にあるホテルにチェックインすると、その日は疲れて早めに眠った。
翌日地図を片手に、ザルツブルグ郊外にあるという、マリア・グルダの自宅に向かった。
外はまだかなり寒いので、防寒対策はしっかりしてきたし、トランクだと段差のあるところは逆に不便なので、今回カート付のバックパッカースタイルにした。
貴重品だけ持ってホテルに荷物を置いていくことも考えたが、予約したホテルのランクが心配だったため、安全策に持ち歩くことにしたのだ。
元々必要最小限の衣類しか持って来てないので、それほど嵩張らない。
だが、日本から持ってきたスケート靴を無くしたら、悔やんでも悔やみきれない、途方にくれて多分泣いてしまうだろう…
ザルツブルグはのどかで思ったよりも小さな街である。
元々オーストリアという国自体も、面積は日本の北海道ほどであるから日本以上に小国なのだ。
またオーストリアはクラシック音楽を中心に世界に誇る文化大国でもある。
だが中欧ヨーロッパのこの国は、周囲をスイス、イタリア、ハンガリー、ドイツなどに隣接し、目まぐるしい歴史の変転を辿ってきた国でもある。
そして今回訪れたザルツブルグはモーツァルトの生地として、また映画「サウンド・オブ・ミュージック」の舞台や、また夏の音楽祭でも有名である。
もちろん街の景観や、郊外の風景など見所のつきない人気の観光地でもある。
時間があれば翔太も高台に見えるホーエンザルツブルク城をゆっくり観光したいものだが…
ホテルのフロントでも簡単に教えてもらったが、翔太のブロークンな英語プラスジェスチャーでしつこく懸命に聞いた結果、なんとか目的地行きのバスに乗り込むことが出来た。
ヨーロッパは伝統を重んじる頑固な土地柄のゆえか、あまり英語が伝わらないのが難点だった。
その辺もふまえてドイツ語入りの電子辞書も一応携帯してあるが、アジア人には冷たい人間も多く、呼び止めて電子辞書を出す前にうるさく追い払われるのが常である。
だがそんなことでめげるような翔太ではない。
トラブルさえも乗り越えて楽しむことや面白がることが旅の醍醐味でもある。
その点翔太は存分に今の状況を楽しんでいた。
他人に無条件で親切にしてもらうのを当然に思うようでは海外に出る資格はない。
郷に入っては郷に従えと言うことわざにもある通り、お国柄によっては自己主張してうるさいくらい助けを求めなければ誰も気にかけてはくれないのだ。
案外ジェスチャーだけでもあきらめなければ通じるものである。
バスの運転手にも前もってしつこく自分の降りる先を伝えてあったので、最初は迷惑顔だったが最後は呆れて苦笑交じりで目的地の停留所で降ろしてくれた。
のどかな田舎町、春になれば緑も色付いて美しい景色が望めるだろう。
可愛らしい如何にもヨーロッパ的な趣きのある家々が立ち並んでいる。
地図を取り出して住所を確認して10分ほど歩いたところで、その中の一軒家から年配の女性が出てきた。
「あんたがショウタかい?」
「……はい」
翔太は最初かなり訝しげな表情を浮かべていたらしい。
相手はそれを察して名乗った。
「日本のインストラクター協会から連絡をもらってある。あたしがマリアだよ」
これには翔太は内心の動揺を隠し切れなかった。
その心の内面はこうだ。
(このまるいおばさんが伝説の振付師…)
いや、伝説と言うのは翔太が勝手に付けた名詞なのだが…
「まあ、立ち話もなんだ、長旅で疲れただろ。家にお入りよ」
どたどたと巨体をゆすりながら先を行くマリアに促されて、翔太は大人しく従った。
とりあえず英語が通じて助かった…が、ビデオの美女の面影は微塵も感じられず、年月は無情なんだな…としみじみと思ってしまった翔太であった。
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2008.03.25 (Tue)
うちの子
うちの子描いてもらいましたっ!!!
なんとこの間よその子描いた原作者のハルネさんが、お礼にとのことでわざわざ描いて下さったのです。
めっさ、うれしいぜぃっv(*^o^*)
やんちゃ坊主の翔太です笑
かなり特徴を捉えてると思いませんか?
目つきの悪い(失礼ナッ生意気そうなところといい、態度のでかそうな所といい、すごく翔太らしいですよね笑
塗りもとてもポップで翔太のイメージに合っていると思います。
ハルネさん、貴重なお時間とらせて、翔太を描いてくれて本当にどうもありがとうございました 人´Д`*)

なんとこの間よその子描いた原作者のハルネさんが、お礼にとのことでわざわざ描いて下さったのです。
めっさ、うれしいぜぃっv(*^o^*)
やんちゃ坊主の翔太です笑
かなり特徴を捉えてると思いませんか?
目つきの悪い(失礼ナッ生意気そうなところといい、態度のでかそうな所といい、すごく翔太らしいですよね笑
塗りもとてもポップで翔太のイメージに合っていると思います。
ハルネさん、貴重なお時間とらせて、翔太を描いてくれて本当にどうもありがとうございました 人´Д`*)

テーマ : 日記とアニメ・マンガ関連ごちゃまぜ - ジャンル : アニメ・コミック
2008.03.24 (Mon)
BLイラストにつき
ああ、世界フィギュアおわっちゃった…
真央ちゃんはよかったw
高橋くんはホント残念でした、でもまたがんばって!
痛恨のミスに一番悔しい思いをしてるのは本人だろうから、外野は黙ってあたたかく見守っててあげよう。
しかし、リンクの壁一面に貼られてるのはアジエンスとかの日本企業ばっかり笑
ちょっと健全すぎちゃってるのでBLイラストを描いてみました笑
お子様は見ちゃダメです、それと偶然来てしまった人や、BLに嫌悪感をお持ちの人は特に。
そういえばモバイルは追記の機能がきいてないんだった…はは、ごめんよ〜
お好きな人もかわいらしくはないんで笑
真央ちゃんはよかったw
高橋くんはホント残念でした、でもまたがんばって!
痛恨のミスに一番悔しい思いをしてるのは本人だろうから、外野は黙ってあたたかく見守っててあげよう。
しかし、リンクの壁一面に貼られてるのはアジエンスとかの日本企業ばっかり笑
ちょっと健全すぎちゃってるのでBLイラストを描いてみました笑
お子様は見ちゃダメです、それと偶然来てしまった人や、BLに嫌悪感をお持ちの人は特に。
そういえばモバイルは追記の機能がきいてないんだった…はは、ごめんよ〜
お好きな人もかわいらしくはないんで笑
2008.03.21 (Fri)
ヘタレ日記
うん、書けねぇ笑
ええ、お絵描きに逃避してますとも笑
PCの前に長時間座ってられないやつだし、目も疲れちゃうし…
内容も全くの妄想では書けないネタなんでね…
PCで検索しても目当ての資料がなかなかみつからないと、吐き気をもよおしてきたり…
本当は文章は紙面で読みたい派なんですけど、資料に金出せるほど余裕ありません笑
図書館が近くにあればいいんですけど、バリ遠いし…
うだうだやってる間に世界フィギュアも始まったし、バンクーバーまで追い越されたら洒落になりませんから、ちょっと気合い入れなきゃね笑
世界フィギュアのショート、なんだかキミーちゃんに点数からくなかった?
アジア勢にも…コストナーよりも、真央ちゃんの方が良かったような気がするんだけどね…
まあ、ホームとアウェイは何もサッカーだけの話ではありませんから笑
ええ、お絵描きに逃避してますとも笑
PCの前に長時間座ってられないやつだし、目も疲れちゃうし…
内容も全くの妄想では書けないネタなんでね…
PCで検索しても目当ての資料がなかなかみつからないと、吐き気をもよおしてきたり…
本当は文章は紙面で読みたい派なんですけど、資料に金出せるほど余裕ありません笑
図書館が近くにあればいいんですけど、バリ遠いし…
うだうだやってる間に世界フィギュアも始まったし、バンクーバーまで追い越されたら洒落になりませんから、ちょっと気合い入れなきゃね笑
世界フィギュアのショート、なんだかキミーちゃんに点数からくなかった?
アジア勢にも…コストナーよりも、真央ちゃんの方が良かったような気がするんだけどね…
まあ、ホームとアウェイは何もサッカーだけの話ではありませんから笑
2008.03.20 (Thu)
よその子
参加コミュのよその子描いてみました〜♪
原作者はハルネ様です。
キャラクター名はゼル=レイヴアークくんです。
素敵なお子様ありがとうございました(*^_^*)
おお!久しぶりにふぁんたじぃに触れた気がする!!
いや…なんか申し訳ない感じですね…(^^;)
自信あるわけでもないのに下書き、殴り書き程度で塗り出したら案の定、修正きかなくなりました…
ちなみに手に持ってるのは槍です、ほうきじゃありません笑

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原作者はハルネ様です。
キャラクター名はゼル=レイヴアークくんです。
素敵なお子様ありがとうございました(*^_^*)
おお!久しぶりにふぁんたじぃに触れた気がする!!
いや…なんか申し訳ない感じですね…(^^;)
自信あるわけでもないのに下書き、殴り書き程度で塗り出したら案の定、修正きかなくなりました…
ちなみに手に持ってるのは槍です、ほうきじゃありません笑

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テーマ : 自作イラスト(二次創作) - ジャンル : アニメ・コミック
2008.03.19 (Wed)
K&C 折れた翼 7
学生生活とも別れを告げ、出場停止処分が解けるまでは競技会にも出られない身の上で、日課の自主トレを終えて時間を持て余していた翔太は、横浜にあるスポーツセンター内のリンクで、今頃は練習しているだろうとジュニアまで所属していたスケートクラブを覗いてみることにした。
顔馴染みのスタッフに挨拶したところ、いいところに来たとばかりに雑用を押し付けられた。
「いや〜、いいとこに来てくれたね、助かったよ〜、三階の資料室だから、よろしくね!」
そう言ってスタッフは、両手に持ってた手さげのついた紙袋を二つ翔太の前にどさりと差し出すと、どこかに消え去ってしまった。
紙袋の中にはスケートに関する資料が山ほど詰め込まれている。
つまり資料室から借りた資料を所定の場所に戻しとけと言う訳である。
曲がりなりにもオリンピック代表選手だった翔太に対するこの雑な扱い…かなり理不尽だったが、このままほっとくことも出来ないので、仕方なく雑用に取り掛かることにした。
スタッフはそんなつもりはなかったのだが、最近の己の置かれてる現状を再確認してしまい、ちょっと卑屈になってしまったのが本音である。
資料室に入ると翔太は、フイギュアスケート関連の資料が収められた書棚へ、紙袋の中身を地道に戻していく作業に取り掛かった。
残りわずかというところで、ラベルが擦り切れてる古いビデオテープが出てきた。
(これも同じ場所に戻してもいいのか?)
辺りを見回すと、映像コーナーがちゃんとあったのでコーナーへ行き、戻そうとしたが…
「フイギュアのビデオ…と、あれ、分類番号のとこが擦り切れててわかんねぇよ、これ。ま、いいか」
と、適当なスペースに置こうとしたが、棚の下にはしっかりと注意書が書かれている。
『閲覧済みの資料は元の場所にお戻し下さい』
(マジかよ〜)
もう一度ビデオテープのラベルに書かれたタイトルを見てみる。
『1992アルベールビル冬季オリンピックフィギュアスケート女子シングル』と書いてある。
「あ、日本人初の銀メダリストが出たやつじゃん、佐藤あけみ選手だよ。14年前って、おれまだ4つじゃん」
興味がむくむくと湧いてくる。
閲覧スペースには都合良く年代物のビデオ一体型のテレビが置いてある。
「ふふん」
いたずらな笑みを浮かべて翔太はいそいそと閲覧スペースに向かうと、ビデオデッキに持っていたビデオテープをセットして観始めた。
映像はメダリストのオリンピックまでの軌跡、中でも終始一貫して銀メダリストの佐藤に焦点を当てていた。
日々進化するスポーツの世界であるから、フィギュアスケートも昔に比べれば格段にレベルが高くなっている。
10年以上も前のしかも女子の演技で、翔太は次第に退屈になってきた。
だが日本の佐藤が出てきた途端、『これだよ!』と思ってしまった。
確かにこの時代の他の女子のスケーティングは、優雅な演技でスピードもジャンプも迫力がない、その中でずば抜けたスピードとジャンプ力を持った佐藤の演技は正にアスリートと呼ぶに相応しい。
『観客はゴム鞠が跳ねるのを見に来ているわけではないわ』
カルガリーの金メダリストは佐藤の演技を暗に揶揄してそう言ったらしい。
賛否両論あるだろうが『フィギュアスケートは、芸術かスポーツか』相反する二つの要素を含んでいるからこそフィギュアは多くの人を魅了するのではないだろうか…
フィギュアスケーターにはアスリートタイプと芸術家タイプがいる。
アスリートタイプとは技術レベルが高い選手であり、芸術家タイプとはジャンプを飛ばなくとも観客を魅了する演技が出来る選手のことである。
どちらかのタイプの選手が、自分に欠けている資質を補い、精一杯鍛錬するのだ。
そして、両方の資質を兼ね備えた選手が稀に現れる。
良太は鳥肌が立って、目は画面に釘付けだった。
いま画面に写っているのはオーストリア代表、金メダリストに輝いたヨウコ・クリスティーネ・グルダだった。
何の変哲もないただの練習風景が流れていた。
30代後半と思われる美女が指導しており、その人物はヨウコのコーチ兼振付師らしい。
映像は彼女の生い立ちに移っていた。
ヨウコ・クリスティーネ・グルダ。
日本人とオーストリア人のハーフで幼い頃に両親が離婚し、祖母に育てられたが、祖母が死亡後は両親共に親権を放棄した為、施設に預けられるところだったが、その才能に惚れ込んだ現コーチ兼振付師のマリア・グルダの養女に迎え入れられたと言う話だった。
たおやかで美しく、どこか儚げで憂いのある演技をするヨウコは、天涯孤独となってしまった行き場のない幼少時の悲哀を感じさせた。
一瞬にして観客の心を掴む、演技力と表現力は脱帽であり、これが芸術家タイプの選手の強みでもある。
しかしそれに続く、切れのあるジャンプやスピンは、日本の佐藤と比べても遜色ない技術の高さを持っていた。
「ヨウコは幼い頃からバレエを習っていた。私は彼女の才能はたぐいまれな表現力だと思っている。元々高い運動神経を持っていた子だから、それに技術要素をプラスしてやれば、誰にも負けることはないでしょう」
コーチ兼振付師でもあり養母となったマリア・グルダのインタビューである。
続いてヨウコ本人のインタビューが始まった。
「母のマリアがいたから私は代表選手になることが出来たと思っているわ。元々ジャンプは得意じゃなかったけど、彼女の的確な指導のおかげで一段上の安定した滑りを得ることが出来たし、苦手なジャンプも克服できたわ」
これには驚きだった。
翔太は最初ヨウコの滑りを見て、彼女こそが両方の資質を兼ね備えた稀有な選手だと思ったのだ。
それが、訓練で培われた技術だったとは驚きだった。
同業者の翔太から見ても、鍛錬して得たレベルではないほど、完成されたジャンプの技術を持っていた。
最後はオリンピック本番の上位者の演技で締め括られていた。
キス&クライで得点が出た瞬間、感涙に咽び泣くヨウコを、隣に座って見守っていた母がやさしく抱きしめていた。
資料室を出た後クラブの練習を見学する予定だったが、早々に翔太は帰宅した。
自宅に戻った翔太は自室のPCの電源を入れ、しばらくネットで調べ物をしていた。
次の日の朝、翔太は母と父のそろった食卓で爆弾発言をかました。
夜更かししたと思われる、睡眠不足丸出しの寝ぼけ眼に寝癖頭を手櫛で整えながら…
「おれ、明日からオーストリアに行くから」
「あら、まあ…」
「遠征でもあるのか?競技会にはまだしばらく出られないんだろう?」
「いんや、大会とかじゃなくて、おれ、ちょっと師事したい人が出来たから、直接頼んでみようかな…ってね。ほら、誠意をみせれば向こうもその気になってくれる確率高いじゃん、はは」
「………」
「先方にはアポイントは取ったのか?まさか、いきあたりばったりの押しかけじゃないだろうな」
父の透は役所勤めの公務員なだけあって、常識的で面白みのない性格だったが、そのぶん母が多少ズレていた。
「いま連絡先わかんねぇし、後でインストラクター協会とかにあたってみるけどさ。そもそもおれ電話で会話できるほど英語わかんないじゃん」
「…だったら、誰か間に入って話つけてもらうとかだな…」
「めんどくせぇ…」
「だいたい明日って何だ?チケットだっていきなり取れるもんか」
「だいじょうブイ!もうネットでチケット予約したもんね」
「あんた、いまお金ないんでしょ?オーストリアなんて飛行機代かなりかかるわよ。ちょっと待ってなさい…」
いそいそと金の用意をしに隣室に向かう母に父は唖然としていた。
「あ、母ちゃん、だいじょぶだって。こないだのCMのギャラ入ったから、いまおれリッチなんだぜ」
うそである。
家族にはこれ以上負担をかけたくなかった。
余裕をかまして見せたが、実はいままでの競技会などで獲得した賞金やらを切り崩した、なけなしの貯金から今回の渡航費を当てることに決めていた。
正直言って、こんな無謀な計画を実行するのは馬鹿げている。
だが翔太はいま、オーストリアに行かなければならなかった。
これは勘としか言いようのないものだった。
あの古い一本のビデオテープを観た後に予感したのだ。
行って、ヨウコを育てたマリア・グルダに師事を仰ぐ。
行けば必ず何かが起こる。
いますぐにでも翔太は飛び立ちたい気持ちだった。
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顔馴染みのスタッフに挨拶したところ、いいところに来たとばかりに雑用を押し付けられた。
「いや〜、いいとこに来てくれたね、助かったよ〜、三階の資料室だから、よろしくね!」
そう言ってスタッフは、両手に持ってた手さげのついた紙袋を二つ翔太の前にどさりと差し出すと、どこかに消え去ってしまった。
紙袋の中にはスケートに関する資料が山ほど詰め込まれている。
つまり資料室から借りた資料を所定の場所に戻しとけと言う訳である。
曲がりなりにもオリンピック代表選手だった翔太に対するこの雑な扱い…かなり理不尽だったが、このままほっとくことも出来ないので、仕方なく雑用に取り掛かることにした。
スタッフはそんなつもりはなかったのだが、最近の己の置かれてる現状を再確認してしまい、ちょっと卑屈になってしまったのが本音である。
資料室に入ると翔太は、フイギュアスケート関連の資料が収められた書棚へ、紙袋の中身を地道に戻していく作業に取り掛かった。
残りわずかというところで、ラベルが擦り切れてる古いビデオテープが出てきた。
(これも同じ場所に戻してもいいのか?)
辺りを見回すと、映像コーナーがちゃんとあったのでコーナーへ行き、戻そうとしたが…
「フイギュアのビデオ…と、あれ、分類番号のとこが擦り切れててわかんねぇよ、これ。ま、いいか」
と、適当なスペースに置こうとしたが、棚の下にはしっかりと注意書が書かれている。
『閲覧済みの資料は元の場所にお戻し下さい』
(マジかよ〜)
もう一度ビデオテープのラベルに書かれたタイトルを見てみる。
『1992アルベールビル冬季オリンピックフィギュアスケート女子シングル』と書いてある。
「あ、日本人初の銀メダリストが出たやつじゃん、佐藤あけみ選手だよ。14年前って、おれまだ4つじゃん」
興味がむくむくと湧いてくる。
閲覧スペースには都合良く年代物のビデオ一体型のテレビが置いてある。
「ふふん」
いたずらな笑みを浮かべて翔太はいそいそと閲覧スペースに向かうと、ビデオデッキに持っていたビデオテープをセットして観始めた。
映像はメダリストのオリンピックまでの軌跡、中でも終始一貫して銀メダリストの佐藤に焦点を当てていた。
日々進化するスポーツの世界であるから、フィギュアスケートも昔に比べれば格段にレベルが高くなっている。
10年以上も前のしかも女子の演技で、翔太は次第に退屈になってきた。
だが日本の佐藤が出てきた途端、『これだよ!』と思ってしまった。
確かにこの時代の他の女子のスケーティングは、優雅な演技でスピードもジャンプも迫力がない、その中でずば抜けたスピードとジャンプ力を持った佐藤の演技は正にアスリートと呼ぶに相応しい。
『観客はゴム鞠が跳ねるのを見に来ているわけではないわ』
カルガリーの金メダリストは佐藤の演技を暗に揶揄してそう言ったらしい。
賛否両論あるだろうが『フィギュアスケートは、芸術かスポーツか』相反する二つの要素を含んでいるからこそフィギュアは多くの人を魅了するのではないだろうか…
フィギュアスケーターにはアスリートタイプと芸術家タイプがいる。
アスリートタイプとは技術レベルが高い選手であり、芸術家タイプとはジャンプを飛ばなくとも観客を魅了する演技が出来る選手のことである。
どちらかのタイプの選手が、自分に欠けている資質を補い、精一杯鍛錬するのだ。
そして、両方の資質を兼ね備えた選手が稀に現れる。
良太は鳥肌が立って、目は画面に釘付けだった。
いま画面に写っているのはオーストリア代表、金メダリストに輝いたヨウコ・クリスティーネ・グルダだった。
何の変哲もないただの練習風景が流れていた。
30代後半と思われる美女が指導しており、その人物はヨウコのコーチ兼振付師らしい。
映像は彼女の生い立ちに移っていた。
ヨウコ・クリスティーネ・グルダ。
日本人とオーストリア人のハーフで幼い頃に両親が離婚し、祖母に育てられたが、祖母が死亡後は両親共に親権を放棄した為、施設に預けられるところだったが、その才能に惚れ込んだ現コーチ兼振付師のマリア・グルダの養女に迎え入れられたと言う話だった。
たおやかで美しく、どこか儚げで憂いのある演技をするヨウコは、天涯孤独となってしまった行き場のない幼少時の悲哀を感じさせた。
一瞬にして観客の心を掴む、演技力と表現力は脱帽であり、これが芸術家タイプの選手の強みでもある。
しかしそれに続く、切れのあるジャンプやスピンは、日本の佐藤と比べても遜色ない技術の高さを持っていた。
「ヨウコは幼い頃からバレエを習っていた。私は彼女の才能はたぐいまれな表現力だと思っている。元々高い運動神経を持っていた子だから、それに技術要素をプラスしてやれば、誰にも負けることはないでしょう」
コーチ兼振付師でもあり養母となったマリア・グルダのインタビューである。
続いてヨウコ本人のインタビューが始まった。
「母のマリアがいたから私は代表選手になることが出来たと思っているわ。元々ジャンプは得意じゃなかったけど、彼女の的確な指導のおかげで一段上の安定した滑りを得ることが出来たし、苦手なジャンプも克服できたわ」
これには驚きだった。
翔太は最初ヨウコの滑りを見て、彼女こそが両方の資質を兼ね備えた稀有な選手だと思ったのだ。
それが、訓練で培われた技術だったとは驚きだった。
同業者の翔太から見ても、鍛錬して得たレベルではないほど、完成されたジャンプの技術を持っていた。
最後はオリンピック本番の上位者の演技で締め括られていた。
キス&クライで得点が出た瞬間、感涙に咽び泣くヨウコを、隣に座って見守っていた母がやさしく抱きしめていた。
資料室を出た後クラブの練習を見学する予定だったが、早々に翔太は帰宅した。
自宅に戻った翔太は自室のPCの電源を入れ、しばらくネットで調べ物をしていた。
次の日の朝、翔太は母と父のそろった食卓で爆弾発言をかました。
夜更かししたと思われる、睡眠不足丸出しの寝ぼけ眼に寝癖頭を手櫛で整えながら…
「おれ、明日からオーストリアに行くから」
「あら、まあ…」
「遠征でもあるのか?競技会にはまだしばらく出られないんだろう?」
「いんや、大会とかじゃなくて、おれ、ちょっと師事したい人が出来たから、直接頼んでみようかな…ってね。ほら、誠意をみせれば向こうもその気になってくれる確率高いじゃん、はは」
「………」
「先方にはアポイントは取ったのか?まさか、いきあたりばったりの押しかけじゃないだろうな」
父の透は役所勤めの公務員なだけあって、常識的で面白みのない性格だったが、そのぶん母が多少ズレていた。
「いま連絡先わかんねぇし、後でインストラクター協会とかにあたってみるけどさ。そもそもおれ電話で会話できるほど英語わかんないじゃん」
「…だったら、誰か間に入って話つけてもらうとかだな…」
「めんどくせぇ…」
「だいたい明日って何だ?チケットだっていきなり取れるもんか」
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いそいそと金の用意をしに隣室に向かう母に父は唖然としていた。
「あ、母ちゃん、だいじょぶだって。こないだのCMのギャラ入ったから、いまおれリッチなんだぜ」
うそである。
家族にはこれ以上負担をかけたくなかった。
余裕をかまして見せたが、実はいままでの競技会などで獲得した賞金やらを切り崩した、なけなしの貯金から今回の渡航費を当てることに決めていた。
正直言って、こんな無謀な計画を実行するのは馬鹿げている。
だが翔太はいま、オーストリアに行かなければならなかった。
これは勘としか言いようのないものだった。
あの古い一本のビデオテープを観た後に予感したのだ。
行って、ヨウコを育てたマリア・グルダに師事を仰ぐ。
行けば必ず何かが起こる。
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2008.03.17 (Mon)
『人権擁護法』って?2
『人権擁護法』について
法律なんておれ難しくてわかんないや、未成年だし〜上の偉い人に任せとけばいいじゃん…
な〜んて言ってほっといたら、それこそ偉い人の思う壺ですよ。
結局、法案が可決された後になって愕然とするのは、クソ真面目に底辺に這いつくばってるおれ達なんだぜ!
とりあえず、私に出来ることをするか…
このしょぼいブログでも何人かの人の目にとまれば、この法案の存在を知ってもらうことや、考えてもらうことが出来るかも知れん…何もしないよりはマシだと思うし…
折りに触れて訴えてみよう。
法案の内容は検索してみればいろいろ出てきますよ。
わかりやすそうなのを選んでみました。
人権擁護法
サルでも分かる?人権擁護法案
人権擁護法案漫画NARUTO風味
法律なんておれ難しくてわかんないや、未成年だし〜上の偉い人に任せとけばいいじゃん…
な〜んて言ってほっといたら、それこそ偉い人の思う壺ですよ。
結局、法案が可決された後になって愕然とするのは、クソ真面目に底辺に這いつくばってるおれ達なんだぜ!
とりあえず、私に出来ることをするか…
このしょぼいブログでも何人かの人の目にとまれば、この法案の存在を知ってもらうことや、考えてもらうことが出来るかも知れん…何もしないよりはマシだと思うし…
折りに触れて訴えてみよう。
法案の内容は検索してみればいろいろ出てきますよ。
わかりやすそうなのを選んでみました。
人権擁護法
サルでも分かる?人権擁護法案
人権擁護法案漫画NARUTO風味
2008.03.16 (Sun)
オリキャラお絵描き
2008.03.15 (Sat)
『人権擁護法』って?
最近『人権擁護法』なるものがWEB上に駆け回ってる様子?
私のブログにも危機を促してか、協力を求めに来ております。
この情報源自体がどこまで信用できるものなのかよくわからないので、真意の程を皆さんにも考えて頂きたいと思い、丸投げしちゃいます爆
事実ならばBLをはじめ多くの有害と思われる娯楽が消えるかもしれない…と言うことなので、そりゃ、過激描写を扱ってる小説ブロガーさん達は大騒ぎでございますよ。
私自身、R15BL小説などと銘打っちゃってますが、今のところ健全もいいところですがね、自分が読みたいモノを取り上げられるかも知れないとなったら、話は別です。
詳しくは人権擁護法にて説明してます。
も一つおまけサルでも分かる?人権擁護法案
私のブログにも危機を促してか、協力を求めに来ております。
この情報源自体がどこまで信用できるものなのかよくわからないので、真意の程を皆さんにも考えて頂きたいと思い、丸投げしちゃいます爆
事実ならばBLをはじめ多くの有害と思われる娯楽が消えるかもしれない…と言うことなので、そりゃ、過激描写を扱ってる小説ブロガーさん達は大騒ぎでございますよ。
私自身、R15BL小説などと銘打っちゃってますが、今のところ健全もいいところですがね、自分が読みたいモノを取り上げられるかも知れないとなったら、話は別です。
詳しくは人権擁護法にて説明してます。
も一つおまけサルでも分かる?人権擁護法案
2008.03.15 (Sat)
K&C 折れた翼 6
「ファンの方々は演技の出来以上に、今回のあなたの態度の悪さを正直かなりがっかりしてると思いますが?」
「はい、応援してくれた方々には、本当に申し訳なく思っております」
「では全面的に非を認めるわけですね」
「はい、申し訳ございませんでした」
「二週間後に迫った世界選手権についてお伺いしますが、鷹森さんは出場される予定なんですよね」
「はい、選手権に向けて体調を整えて、万全のコンディションで望みたいと思います」
「同席しておられます日本スケート連盟の澤木会長にお尋ねします。今回の鷹森君の問題行動に対して、連盟の方ではなにか処分を検討する、という話は上がっていないのですか?」
「え!?いえ、その…」
「特別強化選手から強化選手への格下げというのは伺っておりますが、国民の皆さんの期待を裏切る結果になった上に、逆切れしてインタビューをボイコットした選手に対する処分にしては軽すぎると思いますが?」
「はあ…、い、いえ、ゴホン、え〜、この会見が済み次第、役員を招集しまして、国民の皆様が納得される形で、前向きに検討したいと思います」
(おい!ちょっとまて!)
思わず翔太は隣に同席している新会長の澤木を凝視してしまった。
こうして会見は思わぬ展開に進んでいき幕を閉じた。
結局二週間後に迫った世界フィギュアの出場資格は取り消され、次点繰上げで代表はトリノの座を争った宮原が出場することになった。
オリンピックから僅か一ヵ月後の世界選手権だったので、気を引き締めて調整し、コンディションを整えていたのは何の役にも立たなかった。
そればかりか連盟は記者達にそそのかされて急遽開いた役員会議で、翔太に三ヶ月の国際大会と国内大会の出場停止処分を加えた。
またそれに伴ってトレーナーや振付師のパウル・フェデラーが契約解除を申し渡してきた。
コーチの杉沼は残ってくれたが、連盟の強い要請により最近注目株のジュニアの選手を受け持つことになり、他にも数人の選手を兼任しているため、必然的に停止処分中の翔太の指導は後回しにせざるを得なかった。
こうして翔太は世間にも忘れ去られ、フィギュア界の表舞台からも姿を消し、トリノの代表選手だったと言う華々しい過去は黙殺され、国民総意で静かなる抹殺をされたのであった。
今まで翔太の競技活動を支えてくれた人々は去っていき、環境は著しく寂しいものになり、精神的ストレスでボロボロになった。
(自分はなんてちっぽけな人間なんだろう…人の都合であっちに行ったりこっちに行ったりする)
皮肉なことにスケジュールも真っ白になった翔太は、高校の卒業証書授与式にも無事出席できた。
「じゃ、こんどまたゆっくり会おうぜ」
「おう!時間できたら誘うわ」
「翔太君、元気でね!」
「お前いまのうちに遊んどけよ!またすぐ忙しくなるんだからさ」
気の置けない友人達と別れ、翔太は一度自宅にもどって日課の自主トレの準備をしてジムに向かった。
精神的には限界だったが、体を動かしていないと逆に不安なのだ。
なぜこんなにもフィギュアにひたむきになれるのか…
翔太自身不思議だった。
翔太がフィギュアスケートを始めたのは7歳の時だった。
当時自宅の近くにスケートリンク施設が出来たのを幸いに、何をやらせても長続きしないで鬱屈した日々を送っていた翔太を見かねて、美佐子は翔太をアイスホッケークラブの見学に連れ出した。
ところが翔太は偶然その前の時間帯に開かれていたフィギュアスケート教室の方に目を奪われてしまった。
氷の上で自由に滑ったりくるくる回ったりしてるアクロバティックな動きにすっかり魅了されてしまったのである。
それが自分よりも少し上のお兄さんお姉さん達だったと言うことも、子供心に衝撃的な原風景を残した。
「お母さん、ぼくこれやりたい!」
瞳を輝かせて翔太はこの教室に通いたいと美佐子にお願いした。
意外な成り行きだったが、美佐子も異論は無かったので早速入会の手続きをした。
しかし、やり始めてわかったこと。
ただ滑るだけならあっという間に出来たが、その後が続かなかった。
大抵のスポーツならば今まで難なくこなしてきた翔太にとって、思いがけないことであった。
以前、兄の翼と一緒に通ったスイミングスクールでも翔太はすぐに泳げるようになったから。
俯瞰で見ている何者かがいたならば、いや、難なく出来てしまったからこそ、全て長続きしなくてつまらなかったのだが…とでも言いたい所だろう。
お姉さん、お兄さんみたいにうまく滑れるようになりたい!
なにくそ!と思って苦労して出来た達成感は格別だった。
翔太はこの時知る由もなかったが、この教室は元オリンピック代表、銀メダリストの安国幸子コーチ主催のスケート教室で、子供達に少しでもスケートに興味を持ってもらおうと開かれた初心者教室だった。
しかし指導者のネームバリューからか近隣の中級クラスの子供達の親が、少しでも薫陶を仰ごうと、わざわざ通わせていたと言う訳である。
まったくの初心者と聞いていた翔太が、稀に見るスピードで基礎技術をマスターしていく様をつぶさに観察していた安国コーチは内心感嘆の思いだったが、この素質を大事に育てていくために、しばらくは静観することにした。
そして物足りなさを感じ始めた翔太を見計らって、時期が来たと思い第二段階に進ませるべく、未来の選手を育成する為のクラブを紹介したのだった。
そこで師弟関係を結んだのが、現コーチの杉沼朔太郎だった。
杉沼は選手としては世界フィギュア選手権3位が自身最高の成績だったが、優秀な選手が優秀な指導者になれるとは限らないもので、安国コーチの折り紙付きでもあり、杉沼の選手育成能力の高さは、過去に優れた成績を残した選手を輩出してきたことでも証明されていた。
クラブでもメキメキと頭角を現してきた翔太は、ノービスの大会に出場したりバッジテストを受けたりして、着実に競技としてのフィギュアスケートの道に進んでいった。
その後ジュニアへと進み、全日本ジュニア選手権で2連覇を達成し、世界ジュニア選手権では惜しくも優勝を逃し2位になったが、フィギュア界では不毛の男子シングルに天才児現る!などど翔太への注目度が高まっていた。
2004年〜05年シーズンにかけてシニアへと移行し、初参戦した全日本選手権では初優勝、翌年の世界選手権に進出したが体調不良で12位と言う結果になり、次の出場枠も男子シングルは1枠のみとなった。
シーズン後半のグランプリシリーズで初優勝を果たしファイナルへと進出した。
年末のオリンピック日本代表選手最終選考会も兼ねた、全日本選手権で2連覇を果たして翔太は代表選手に選出された。
スケートを始めてからは、脇目も振らずに突っ走ってきた翔太である。
振り返ってみるといまの自分には他に何もないのだとつくづく思い知らされてしまう。
まずリンクに立つと、清々とした空間に身が引き締まり自然と落ち着く。
氷のキャンバスにブレードで思いのままに描く曲線が好きだ。
風を受けて滑るのは本当に気持ちがいい。
「おれって、ほんとスケートが好きなのな…」
今更ながら翔太は自分がどれほどスケートが好きなのか再確認して苦笑してしまった。
(やっぱりどんなに周りが辞めさせようとしても、おれ無理だわ。まだ辞めらんねぇ…)
たとえ選手として競技会に出られなくても、翔太にとってそんなことは関係なく、スケートを好きな気持ちは変わらないのだから。
皮肉なことにスケートを続けることが困難な状況に追い込まれて初めて、それが一番大切なことであることを、翔太は改めて実感したのである。
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「はい、応援してくれた方々には、本当に申し訳なく思っております」
「では全面的に非を認めるわけですね」
「はい、申し訳ございませんでした」
「二週間後に迫った世界選手権についてお伺いしますが、鷹森さんは出場される予定なんですよね」
「はい、選手権に向けて体調を整えて、万全のコンディションで望みたいと思います」
「同席しておられます日本スケート連盟の澤木会長にお尋ねします。今回の鷹森君の問題行動に対して、連盟の方ではなにか処分を検討する、という話は上がっていないのですか?」
「え!?いえ、その…」
「特別強化選手から強化選手への格下げというのは伺っておりますが、国民の皆さんの期待を裏切る結果になった上に、逆切れしてインタビューをボイコットした選手に対する処分にしては軽すぎると思いますが?」
「はあ…、い、いえ、ゴホン、え〜、この会見が済み次第、役員を招集しまして、国民の皆様が納得される形で、前向きに検討したいと思います」
(おい!ちょっとまて!)
思わず翔太は隣に同席している新会長の澤木を凝視してしまった。
こうして会見は思わぬ展開に進んでいき幕を閉じた。
結局二週間後に迫った世界フィギュアの出場資格は取り消され、次点繰上げで代表はトリノの座を争った宮原が出場することになった。
オリンピックから僅か一ヵ月後の世界選手権だったので、気を引き締めて調整し、コンディションを整えていたのは何の役にも立たなかった。
そればかりか連盟は記者達にそそのかされて急遽開いた役員会議で、翔太に三ヶ月の国際大会と国内大会の出場停止処分を加えた。
またそれに伴ってトレーナーや振付師のパウル・フェデラーが契約解除を申し渡してきた。
コーチの杉沼は残ってくれたが、連盟の強い要請により最近注目株のジュニアの選手を受け持つことになり、他にも数人の選手を兼任しているため、必然的に停止処分中の翔太の指導は後回しにせざるを得なかった。
こうして翔太は世間にも忘れ去られ、フィギュア界の表舞台からも姿を消し、トリノの代表選手だったと言う華々しい過去は黙殺され、国民総意で静かなる抹殺をされたのであった。
今まで翔太の競技活動を支えてくれた人々は去っていき、環境は著しく寂しいものになり、精神的ストレスでボロボロになった。
(自分はなんてちっぽけな人間なんだろう…人の都合であっちに行ったりこっちに行ったりする)
皮肉なことにスケジュールも真っ白になった翔太は、高校の卒業証書授与式にも無事出席できた。
「じゃ、こんどまたゆっくり会おうぜ」
「おう!時間できたら誘うわ」
「翔太君、元気でね!」
「お前いまのうちに遊んどけよ!またすぐ忙しくなるんだからさ」
気の置けない友人達と別れ、翔太は一度自宅にもどって日課の自主トレの準備をしてジムに向かった。
精神的には限界だったが、体を動かしていないと逆に不安なのだ。
なぜこんなにもフィギュアにひたむきになれるのか…
翔太自身不思議だった。
翔太がフィギュアスケートを始めたのは7歳の時だった。
当時自宅の近くにスケートリンク施設が出来たのを幸いに、何をやらせても長続きしないで鬱屈した日々を送っていた翔太を見かねて、美佐子は翔太をアイスホッケークラブの見学に連れ出した。
ところが翔太は偶然その前の時間帯に開かれていたフィギュアスケート教室の方に目を奪われてしまった。
氷の上で自由に滑ったりくるくる回ったりしてるアクロバティックな動きにすっかり魅了されてしまったのである。
それが自分よりも少し上のお兄さんお姉さん達だったと言うことも、子供心に衝撃的な原風景を残した。
「お母さん、ぼくこれやりたい!」
瞳を輝かせて翔太はこの教室に通いたいと美佐子にお願いした。
意外な成り行きだったが、美佐子も異論は無かったので早速入会の手続きをした。
しかし、やり始めてわかったこと。
ただ滑るだけならあっという間に出来たが、その後が続かなかった。
大抵のスポーツならば今まで難なくこなしてきた翔太にとって、思いがけないことであった。
以前、兄の翼と一緒に通ったスイミングスクールでも翔太はすぐに泳げるようになったから。
俯瞰で見ている何者かがいたならば、いや、難なく出来てしまったからこそ、全て長続きしなくてつまらなかったのだが…とでも言いたい所だろう。
お姉さん、お兄さんみたいにうまく滑れるようになりたい!
なにくそ!と思って苦労して出来た達成感は格別だった。
翔太はこの時知る由もなかったが、この教室は元オリンピック代表、銀メダリストの安国幸子コーチ主催のスケート教室で、子供達に少しでもスケートに興味を持ってもらおうと開かれた初心者教室だった。
しかし指導者のネームバリューからか近隣の中級クラスの子供達の親が、少しでも薫陶を仰ごうと、わざわざ通わせていたと言う訳である。
まったくの初心者と聞いていた翔太が、稀に見るスピードで基礎技術をマスターしていく様をつぶさに観察していた安国コーチは内心感嘆の思いだったが、この素質を大事に育てていくために、しばらくは静観することにした。
そして物足りなさを感じ始めた翔太を見計らって、時期が来たと思い第二段階に進ませるべく、未来の選手を育成する為のクラブを紹介したのだった。
そこで師弟関係を結んだのが、現コーチの杉沼朔太郎だった。
杉沼は選手としては世界フィギュア選手権3位が自身最高の成績だったが、優秀な選手が優秀な指導者になれるとは限らないもので、安国コーチの折り紙付きでもあり、杉沼の選手育成能力の高さは、過去に優れた成績を残した選手を輩出してきたことでも証明されていた。
クラブでもメキメキと頭角を現してきた翔太は、ノービスの大会に出場したりバッジテストを受けたりして、着実に競技としてのフィギュアスケートの道に進んでいった。
その後ジュニアへと進み、全日本ジュニア選手権で2連覇を達成し、世界ジュニア選手権では惜しくも優勝を逃し2位になったが、フィギュア界では不毛の男子シングルに天才児現る!などど翔太への注目度が高まっていた。
2004年〜05年シーズンにかけてシニアへと移行し、初参戦した全日本選手権では初優勝、翌年の世界選手権に進出したが体調不良で12位と言う結果になり、次の出場枠も男子シングルは1枠のみとなった。
シーズン後半のグランプリシリーズで初優勝を果たしファイナルへと進出した。
年末のオリンピック日本代表選手最終選考会も兼ねた、全日本選手権で2連覇を果たして翔太は代表選手に選出された。
スケートを始めてからは、脇目も振らずに突っ走ってきた翔太である。
振り返ってみるといまの自分には他に何もないのだとつくづく思い知らされてしまう。
まずリンクに立つと、清々とした空間に身が引き締まり自然と落ち着く。
氷のキャンバスにブレードで思いのままに描く曲線が好きだ。
風を受けて滑るのは本当に気持ちがいい。
「おれって、ほんとスケートが好きなのな…」
今更ながら翔太は自分がどれほどスケートが好きなのか再確認して苦笑してしまった。
(やっぱりどんなに周りが辞めさせようとしても、おれ無理だわ。まだ辞めらんねぇ…)
たとえ選手として競技会に出られなくても、翔太にとってそんなことは関係なく、スケートを好きな気持ちは変わらないのだから。
皮肉なことにスケートを続けることが困難な状況に追い込まれて初めて、それが一番大切なことであることを、翔太は改めて実感したのである。
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2008.03.13 (Thu)
K&C 折れた翼 5
学校からの呼び出しの後、自宅に戻った翔太は先ほどの話を家族達に報告しなければいけなかった。
だが、なかなか切り出しづらく玄関先でモジモジしてたら、母の美佐子が出迎えてくれた。
そしていまにも泣き出しそうなわが子を見とめると、苦笑して室内に招き入れた。
(まったくもう、この子は。中身はいつまで経ってもお子様なのよねぇ…)
「母ちゃん……おれ…」
「さっき学校から電話があったから知ってるわよ」
そして、こう付け加えた。
「あんたは何も心配しなくていいから。今まで通り好きなスケートを続けていけばいいのよ」
何でもなさそうに言ったが、内心美佐子は内定取り消しをしたレイベックスにかなり腹を立てていた。
ただでさえ落ち込んでるわが子に対して、あんまりな仕打ちではないか!
まあ、会社の企業としては利益を優先して然るべきだったろうし、翔太に商品価値がないと判断したのならば仕方がない選択なのだろうが。
だが大切な息子をいらないもののように切り捨てたレイベックスに、いまにみてろ!と美佐子はかたく決意する。
(うちの翔太はこんなことで挫けるような子じゃないし、オリンピックではちょっと失敗しちゃったけど、スケートだって超一流なんだからね!後で後悔したって遅いんだから!!)
もしかすると翔太の勝気な性格は、この母の血を色濃く受け継いでいるからかもしれない。
普段はのん気で多少ズレたところのある美佐子だが、夜なべしてでも息子の衣装を作り、次の日には家事をこなしてパートに出かける、といったことを黙々とこなす芯の強い一面を併せ持っている。
翔太の日常は、世間の人がスポーツマンを連想する規則正しいイメージとは、かけ離れているかもしれない。
もちろん出来うる限りに健康管理に気を配ってはいるが、うまく果たせないのが現状である。
まず練習場の確保である。
リンクを借りられる時間帯に合わせてスケジュールが組まれるからだ。
自分の都合に合わせて日中リンクを貸切にするには出費がかかる上に、リンク側も個人の使用に制限を設けている場合もあるので、早朝の営業前と夜の営業後の練習がメインで、練習時間は競技会の時期やプログラムの進行具合によって多少変動する。
それで足りない分は日中に一般客に交じっての練習や、数時間リンクを貸切にするという具合である。
睡眠不足を補うため昼間空いた時間仮眠を取りつつ、基礎体力トレーニングや有酸素運動、ジムでのウエイトトレーニングをこなすのが日課になっている。
翔太はもう慣れたので日々、ただ黙々と決められたトレーニングメニューを消化するのみである。
スポーツ選手の日常と言うものは、案外こうした地味な練習の積み重ねで成り立っているものなのだ。
だが、さらに翔太に追い討ちをかける事態が起こっていた。
またも呼び出しで、今回は連盟からである。
渋谷区にある岸記念体育館内。
各種アマチュアスポーツ団体の事務局があるが、財団法人日本スケート連盟の事務局もまた然り。
最近立て続けに不祥事が発覚した日本スケート連盟は、逮捕者も出たためトップの首をすげ替えることにしたが、まだ抜本的な改革はなされてない。
会長に任命された人物はやはりスピードスケート畑の人間で、以前からある競技種目の確執を取り除くには難しい人選だった。
理事会の席で役員達は茶を啜りながらこう言った。
「ほら、あれだよ、あれ。あれはまずいねぇ」
「ああ、例の…」
「うん、だってあれだけ大騒ぎになっちゃ、まずいでしょ」
「確かに…フィギュア人気が落ちちゃ、我々の旨みも減りますしねぇ…最近何かと取り締まりもキツイですし」
「だから一回、本人に謝らしときゃ、済むんじゃないの?」
「彼がいやがったら、どうします?」
「そんときゃ、連盟の登録抹消とか言って、脅しときゃ大人しく言うこと聞くでしょ」
翔太のあずかり知らぬところで役員達はこんな会話をしていたのだった。
都内の某所を貸し切って執り行われた謝罪会見は、まったくもって茶番だった。
怒りに震えた翔太が謝罪会見を開くことには直前まで拒否したが、連盟の命令に逆らうことは許されず、最終的には折れるしかなかった。
「おれ、謝罪会見なんて馬鹿らしいことすんのやです…」
叫び出しそうになるのを翔太は必死でこらえて、連盟の役員達に直訴したが無情にも却下された。
「このままじゃ、国民が納得しないんだよ」
「一度形だけでも謝っときゃ、それで済むんだから、いいじゃないかね」
「君だけにかかわってる暇はないんだよ。世界フィギュアも控えてるし、その前にきみが世間に与えた悪いイメージを払拭しないと、他の選手にまで迷惑が掛かるかも知れないしね」
他の選手にまで迷惑が掛かる…翔太もこれには参ったので嫌々ながらも記者会見を開いて謝るしかなかったのだ。
かくして会見は始まった。
幾つものフラッシュが翔太目がけて容赦なく浴びせられる。
翔太の両サイドにはコーチと連盟のお偉いさんが一人。
「この度はぼくの大人気ない振る舞いから、大変ご不快な思いをされた、さくらTVインタビュアーの方と関係者の方々、ならびに応援して下さった国民の皆様にも、期待を裏切る結果となりましたこと、競技後の説明責任を放棄しましたことを、深くお詫び申し上げます」
会見場入りした早々、翔太はそう陳謝し、深々と頭を下げて席に着いた。
だが内心の葛藤は凄まじく、屈辱に震えて口を引き結び、両手を膝の上で握り締めて耐えていたのが本音だった。
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だが、なかなか切り出しづらく玄関先でモジモジしてたら、母の美佐子が出迎えてくれた。
そしていまにも泣き出しそうなわが子を見とめると、苦笑して室内に招き入れた。
(まったくもう、この子は。中身はいつまで経ってもお子様なのよねぇ…)
「母ちゃん……おれ…」
「さっき学校から電話があったから知ってるわよ」
そして、こう付け加えた。
「あんたは何も心配しなくていいから。今まで通り好きなスケートを続けていけばいいのよ」
何でもなさそうに言ったが、内心美佐子は内定取り消しをしたレイベックスにかなり腹を立てていた。
ただでさえ落ち込んでるわが子に対して、あんまりな仕打ちではないか!
まあ、会社の企業としては利益を優先して然るべきだったろうし、翔太に商品価値がないと判断したのならば仕方がない選択なのだろうが。
だが大切な息子をいらないもののように切り捨てたレイベックスに、いまにみてろ!と美佐子はかたく決意する。
(うちの翔太はこんなことで挫けるような子じゃないし、オリンピックではちょっと失敗しちゃったけど、スケートだって超一流なんだからね!後で後悔したって遅いんだから!!)
もしかすると翔太の勝気な性格は、この母の血を色濃く受け継いでいるからかもしれない。
普段はのん気で多少ズレたところのある美佐子だが、夜なべしてでも息子の衣装を作り、次の日には家事をこなしてパートに出かける、といったことを黙々とこなす芯の強い一面を併せ持っている。
翔太の日常は、世間の人がスポーツマンを連想する規則正しいイメージとは、かけ離れているかもしれない。
もちろん出来うる限りに健康管理に気を配ってはいるが、うまく果たせないのが現状である。
まず練習場の確保である。
リンクを借りられる時間帯に合わせてスケジュールが組まれるからだ。
自分の都合に合わせて日中リンクを貸切にするには出費がかかる上に、リンク側も個人の使用に制限を設けている場合もあるので、早朝の営業前と夜の営業後の練習がメインで、練習時間は競技会の時期やプログラムの進行具合によって多少変動する。
それで足りない分は日中に一般客に交じっての練習や、数時間リンクを貸切にするという具合である。
睡眠不足を補うため昼間空いた時間仮眠を取りつつ、基礎体力トレーニングや有酸素運動、ジムでのウエイトトレーニングをこなすのが日課になっている。
翔太はもう慣れたので日々、ただ黙々と決められたトレーニングメニューを消化するのみである。
スポーツ選手の日常と言うものは、案外こうした地味な練習の積み重ねで成り立っているものなのだ。
だが、さらに翔太に追い討ちをかける事態が起こっていた。
またも呼び出しで、今回は連盟からである。
渋谷区にある岸記念体育館内。
各種アマチュアスポーツ団体の事務局があるが、財団法人日本スケート連盟の事務局もまた然り。
最近立て続けに不祥事が発覚した日本スケート連盟は、逮捕者も出たためトップの首をすげ替えることにしたが、まだ抜本的な改革はなされてない。
会長に任命された人物はやはりスピードスケート畑の人間で、以前からある競技種目の確執を取り除くには難しい人選だった。
理事会の席で役員達は茶を啜りながらこう言った。
「ほら、あれだよ、あれ。あれはまずいねぇ」
「ああ、例の…」
「うん、だってあれだけ大騒ぎになっちゃ、まずいでしょ」
「確かに…フィギュア人気が落ちちゃ、我々の旨みも減りますしねぇ…最近何かと取り締まりもキツイですし」
「だから一回、本人に謝らしときゃ、済むんじゃないの?」
「彼がいやがったら、どうします?」
「そんときゃ、連盟の登録抹消とか言って、脅しときゃ大人しく言うこと聞くでしょ」
翔太のあずかり知らぬところで役員達はこんな会話をしていたのだった。
都内の某所を貸し切って執り行われた謝罪会見は、まったくもって茶番だった。
怒りに震えた翔太が謝罪会見を開くことには直前まで拒否したが、連盟の命令に逆らうことは許されず、最終的には折れるしかなかった。
「おれ、謝罪会見なんて馬鹿らしいことすんのやです…」
叫び出しそうになるのを翔太は必死でこらえて、連盟の役員達に直訴したが無情にも却下された。
「このままじゃ、国民が納得しないんだよ」
「一度形だけでも謝っときゃ、それで済むんだから、いいじゃないかね」
「君だけにかかわってる暇はないんだよ。世界フィギュアも控えてるし、その前にきみが世間に与えた悪いイメージを払拭しないと、他の選手にまで迷惑が掛かるかも知れないしね」
他の選手にまで迷惑が掛かる…翔太もこれには参ったので嫌々ながらも記者会見を開いて謝るしかなかったのだ。
かくして会見は始まった。
幾つものフラッシュが翔太目がけて容赦なく浴びせられる。
翔太の両サイドにはコーチと連盟のお偉いさんが一人。
「この度はぼくの大人気ない振る舞いから、大変ご不快な思いをされた、さくらTVインタビュアーの方と関係者の方々、ならびに応援して下さった国民の皆様にも、期待を裏切る結果となりましたこと、競技後の説明責任を放棄しましたことを、深くお詫び申し上げます」
会見場入りした早々、翔太はそう陳謝し、深々と頭を下げて席に着いた。
だが内心の葛藤は凄まじく、屈辱に震えて口を引き結び、両手を膝の上で握り締めて耐えていたのが本音だった。
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2008.03.12 (Wed)
ちょっとヘタレ日記
『折れた翼』を読んでくれてる奇特な方々には…
いま、めちゃくちゃつまんないだろうと思います(-_-;)
特に4は書いてる本人も消耗する割には、遊ぶ隙もなく気が滅入ったしで…まあ、もうちょっとの辛抱だから、あと少しのガマン…
いや、自分に言い聞かせてるんですけどね(^_^;)
でもかなりのお気に入りがいますのよ♪
さあ、だあれでしょう?
はうぅ…私もオリキャラを溺愛するバカ親になっちまうとは…
うん、そこひくとこだから
愛しくなっちゃって本編ほったらかしで番外編書き散らしたりして、そんな暇あるなら本編書けよって感じですが、あふれる思いは止めるすべもなく…本編もサクサク書ければ苦労はないんですけどね(^_^;)
いや、誰も早く書けとは言ってないし、不定期だし、くれぐれも地味にだし笑
人気がないのも変なプレッシャーかかんないし、ちとさびしいが気楽でいいかもしれんw
そう、なにごともポジティブに♪
ちょっとぶっとんだお遊びのファンタジーネタも書いちゃおうかな…な〜んて無謀にも思ってたりしてね…
いま、めちゃくちゃつまんないだろうと思います(-_-;)
特に4は書いてる本人も消耗する割には、遊ぶ隙もなく気が滅入ったしで…まあ、もうちょっとの辛抱だから、あと少しのガマン…
いや、自分に言い聞かせてるんですけどね(^_^;)
でもかなりのお気に入りがいますのよ♪
さあ、だあれでしょう?
はうぅ…私もオリキャラを溺愛するバカ親になっちまうとは…
うん、そこひくとこだから
愛しくなっちゃって本編ほったらかしで番外編書き散らしたりして、そんな暇あるなら本編書けよって感じですが、あふれる思いは止めるすべもなく…本編もサクサク書ければ苦労はないんですけどね(^_^;)
いや、誰も早く書けとは言ってないし、不定期だし、くれぐれも地味にだし笑
人気がないのも変なプレッシャーかかんないし、ちとさびしいが気楽でいいかもしれんw
そう、なにごともポジティブに♪
ちょっとぶっとんだお遊びのファンタジーネタも書いちゃおうかな…な〜んて無謀にも思ってたりしてね…
2008.03.11 (Tue)
K&C 折れた翼 4
自宅に戻ってホッとしたのも束の間。
日本に帰国した傷心の翔太を待ち受けていたのは、世間の冷たい仕打ちだった。
メディアには連日、散々叩かれ罵られた。
実力も無いアイドル選手が、身の程もわきまえずにオリンピックの代表選手に選ばれて、調子に乗って世界に恥を晒したなどとまで言われる始末だった。
例のキス&クライの壇上でのマナーの悪さと、試合後のインタビューをすっぽかした件が尾を引いて、問題児あつかいされてしまったのも痛かった。
容赦ないメディアは公式な場での謝罪会見を要求した。
翔太がまだ弱冠18歳の現役高校生だということへの配慮は皆無だった。
さらには不甲斐ない成績を残した翔太に、日本スケート連盟は特別強化選手から強化選手に格下げした。
毎月支給される強化費が減額されるということで、実力が左右するシビアな世界、さらに人気にも付加価値をつける連盟である。
成功すれば見も知らぬ人からまで賛辞を送られるが、失敗すれば手の平を返したように罵倒される。
フィギュアスケートはたいへん金のかかるスポーツでもある。
フィギュアスケート用の靴はフィギュアスケーターにとっては一番気を使う部分であるので妥協は出来ない。
競技会に出場するような選手になると、自分の足に合わせてオーダーするのが主流となっているが、消耗品なので3〜4ヶ月ごとに買い換えることになる。
一足10万円以上の靴を履いている選手もざらである。
競技会用の衣裳代やらリンクの使用料に、コーチ、トレーナー、振付師、選任ドクターなどに支払う費用など、多額の出費を強いられるスポーツなのだ。
CMに起用されるほどのネームバリューのある選手ならば、JOCのシンボルアスリートになっている選手でも、年間一千万程度のCM出演料がもらえる。
そこまで注目されてない中堅クラスの選手達の活動費は、社会人ならば所属企業とのスポンサー契約が必要不可欠であった。
またアマチュアながらもグランプリシリーズなどに出場する選手には報酬金も出る。
だがスポンサー契約の取れない選手達は必然的にリンクを去ることになる。
学生の場合はスケートを続ける上で、裕福な家庭環境であることが重要なファクターとなっているのが現状である。
翔太の場合、父は役所勤めの公務員であり、ごく普通の中流家庭である。
本格的に競技会に出場するような選手になってからは、翔太のスケート代に掛かる費用を捻出するために、母の美佐子がパートに出るようになった。
それでも足りない分は、衣裳などを手作りしてくれたりと工夫したが、美佐子にかかる負担は大きかった。
見兼ねた翔太の祖父母達が援助を申し出てくれたのは本当にありがたいことであった。
そんな状況がしばらく続いた後、翔太が競技会で優勝や好成績を残すようになってからは、メディアの注目を浴びるようになり、CM起用が決まり一躍世間に知られるようになった。
翔太もまたJOCシンボルアスリート適用選手の1人であり、オリンピックの日本代表に選出されてからは連日CMが流れて番組出演もするほどのスター選手になった。
ただCMの出演料が入るのはまだ先のことでもあり、翔太の顔と名前が世間に知られるようになったのも、代表選手に決まったここ最近のことであった。
この春高校を卒業する翔太には、すでに内定契約を結んでいる企業がある。
いわゆるスポンサー契約である。
大手レコードレーベルを抱えるレイベックス・グループの所属となることが決定しているのだが、そこから毎月給料が支給される身となったら、いままで苦労をかけた家族達の負担も少しは減るかもしれないと思っていた。
ところが翔太の予想を上回るほどの深刻な事態が待ち受けていた。
「え…!内定…取り消し…ですか?」
春休み中でもあり、最終学年の者は卒業証書授与式までは学校に登校するのを免除されていた。
さらに翔太はスポーツ特待生でもあり、学校側も事情は良くわかっている。
それなのに呼び出しを食らって行ってみれば、何とも気の滅入る最悪の知らせだった。
曲がりなりにも翔太はこの高校の一生徒だったため、レイベックスの人事部から進路指導の教師を通して、この不愉快極まる話を聞く羽目になったのだった。
(これはいわゆる就職浪人てやつか…?)
一瞬呆けてのん気に思ったが、次第にことの重要性を飲み込めてきたら、怒りがこみ上げてきた。
「何で!?いきなり内定取り消しって、……冗談じゃねぇよっ!!ふざけんな!」
「そうだよね、ぼくも何とか考え直してくれるように先方にお願いしてみたんだけど…力不足でゴメンね」
まだ若い教師は済まなそうに翔太に謝った。
教師の責任ではないが、いくら謝って貰っても何の解決にもならない。
翔太にもいきなりレイベックスが内定を取り消した訳はわかっていた。
マスコミに散々叩かれたあの件だ。
オリンピックで良い成績も残せなかった上、すっかり傷物になってしまった選手には、会社の看板を背負って貰いたくないと言う訳である。
「…はは」
学校からの帰り道、悔しいやら情けないやら、いろいろな感情がこみ上げてきたが、翔太はただ笑うことしか出来なかった…
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日本に帰国した傷心の翔太を待ち受けていたのは、世間の冷たい仕打ちだった。
メディアには連日、散々叩かれ罵られた。
実力も無いアイドル選手が、身の程もわきまえずにオリンピックの代表選手に選ばれて、調子に乗って世界に恥を晒したなどとまで言われる始末だった。
例のキス&クライの壇上でのマナーの悪さと、試合後のインタビューをすっぽかした件が尾を引いて、問題児あつかいされてしまったのも痛かった。
容赦ないメディアは公式な場での謝罪会見を要求した。
翔太がまだ弱冠18歳の現役高校生だということへの配慮は皆無だった。
さらには不甲斐ない成績を残した翔太に、日本スケート連盟は特別強化選手から強化選手に格下げした。
毎月支給される強化費が減額されるということで、実力が左右するシビアな世界、さらに人気にも付加価値をつける連盟である。
成功すれば見も知らぬ人からまで賛辞を送られるが、失敗すれば手の平を返したように罵倒される。
フィギュアスケートはたいへん金のかかるスポーツでもある。
フィギュアスケート用の靴はフィギュアスケーターにとっては一番気を使う部分であるので妥協は出来ない。
競技会に出場するような選手になると、自分の足に合わせてオーダーするのが主流となっているが、消耗品なので3〜4ヶ月ごとに買い換えることになる。
一足10万円以上の靴を履いている選手もざらである。
競技会用の衣裳代やらリンクの使用料に、コーチ、トレーナー、振付師、選任ドクターなどに支払う費用など、多額の出費を強いられるスポーツなのだ。
CMに起用されるほどのネームバリューのある選手ならば、JOCのシンボルアスリートになっている選手でも、年間一千万程度のCM出演料がもらえる。
そこまで注目されてない中堅クラスの選手達の活動費は、社会人ならば所属企業とのスポンサー契約が必要不可欠であった。
またアマチュアながらもグランプリシリーズなどに出場する選手には報酬金も出る。
だがスポンサー契約の取れない選手達は必然的にリンクを去ることになる。
学生の場合はスケートを続ける上で、裕福な家庭環境であることが重要なファクターとなっているのが現状である。
翔太の場合、父は役所勤めの公務員であり、ごく普通の中流家庭である。
本格的に競技会に出場するような選手になってからは、翔太のスケート代に掛かる費用を捻出するために、母の美佐子がパートに出るようになった。
それでも足りない分は、衣裳などを手作りしてくれたりと工夫したが、美佐子にかかる負担は大きかった。
見兼ねた翔太の祖父母達が援助を申し出てくれたのは本当にありがたいことであった。
そんな状況がしばらく続いた後、翔太が競技会で優勝や好成績を残すようになってからは、メディアの注目を浴びるようになり、CM起用が決まり一躍世間に知られるようになった。
翔太もまたJOCシンボルアスリート適用選手の1人であり、オリンピックの日本代表に選出されてからは連日CMが流れて番組出演もするほどのスター選手になった。
ただCMの出演料が入るのはまだ先のことでもあり、翔太の顔と名前が世間に知られるようになったのも、代表選手に決まったここ最近のことであった。
この春高校を卒業する翔太には、すでに内定契約を結んでいる企業がある。
いわゆるスポンサー契約である。
大手レコードレーベルを抱えるレイベックス・グループの所属となることが決定しているのだが、そこから毎月給料が支給される身となったら、いままで苦労をかけた家族達の負担も少しは減るかもしれないと思っていた。
ところが翔太の予想を上回るほどの深刻な事態が待ち受けていた。
「え…!内定…取り消し…ですか?」
春休み中でもあり、最終学年の者は卒業証書授与式までは学校に登校するのを免除されていた。
さらに翔太はスポーツ特待生でもあり、学校側も事情は良くわかっている。
それなのに呼び出しを食らって行ってみれば、何とも気の滅入る最悪の知らせだった。
曲がりなりにも翔太はこの高校の一生徒だったため、レイベックスの人事部から進路指導の教師を通して、この不愉快極まる話を聞く羽目になったのだった。
(これはいわゆる就職浪人てやつか…?)
一瞬呆けてのん気に思ったが、次第にことの重要性を飲み込めてきたら、怒りがこみ上げてきた。
「何で!?いきなり内定取り消しって、……冗談じゃねぇよっ!!ふざけんな!」
「そうだよね、ぼくも何とか考え直してくれるように先方にお願いしてみたんだけど…力不足でゴメンね」
まだ若い教師は済まなそうに翔太に謝った。
教師の責任ではないが、いくら謝って貰っても何の解決にもならない。
翔太にもいきなりレイベックスが内定を取り消した訳はわかっていた。
マスコミに散々叩かれたあの件だ。
オリンピックで良い成績も残せなかった上、すっかり傷物になってしまった選手には、会社の看板を背負って貰いたくないと言う訳である。
「…はは」
学校からの帰り道、悔しいやら情けないやら、いろいろな感情がこみ上げてきたが、翔太はただ笑うことしか出来なかった…
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2008.03.09 (Sun)
K&C 折れた翼 3
空港で待ち構えていたのは、どこから情報が漏れたものか、他の選手達より早めに帰国したにもかかわらず、まだ見捨てないでいてくれたらしい一部のファン達の他に、真実を伝えることよりもゴシップ記事を載せることに血道を上げるスポーツ記者連中や、各局報道陣に偶然この場に居合わせたらしい通行人まで、面白そうに携帯を取り出して翔太をカメラにおさめようとしていた。
「鷹森君!応援してくれてた国民の皆さんに、何か一言ないですか?」
「不甲斐無い成績だったけど、応援してくれたファンの皆さんへの謝罪はありませんか?」
「失敗していくらショックだったからって、説明もなしで逃げ出すなんて、あまりにも自分勝手で無責任だと思うけど!」
「そうだ!そうだ!」
「オリンピック代表選手としての自覚が足りないんじゃないの!」
「翔ちゃ〜ん!私はずっと応援してるよ〜!!」
「がんばって〜!」
「一部では実力的にはまだオリンピックに出場できるレベルに達してない君が、人気にあやかって連盟とJOCが結託した結果、出場資格が与えられたとか何とか…選考に不備があったと言う情報もあるんだけどねぇ」
(何言ってやがるんだ!代表選考のかかった全日本フィギュアで、ダントツに優勝したのはじゃあ、誰だって言うんだ!それ以前にポイント制だってんだ!)
聞き捨てならないこの暴言に思わず、翔太は何か一言いってやろうとしたが、慌てたコーチに袖を引っ張られ目顔で止められた。
まあ、言わなくて済んで正解だった…そんなことしたら更にマスコミの餌食になると言う、向こうの思う壺だったろうから。
「国の代表として出場してるんだから、あんまり子供っぽい真似しないでくれるかなぁ」
「国外にも君の問題行動は流れてるんだぞ!同じ日本人として恥ずかしいよ、まったく!」
演技の内容も然ることながら、マスコミは競技終了後のインタビューをボイコットした翔太の態度の悪さを責め立てた。
熱くなった報道陣に四方から取り囲まれて、翔太の身を案じたコーチ達はなかば両サイドからガードする形で、ほうほうのていで空港から脱出する羽目になった。
長旅と空港でのトラブルにほとほと疲れ果てて、やっと東京郊外にある自宅にたどり着いた時には心底ホッとした。
こんなこともあろうかと機転を利かせたコーチ達のおかげで、騒ぎに巻き込まれないよう家族達には家で翔太の帰りを待っててもらったのは正解だった。
スーツケースを引きずって室内に入ると、家族達は至って普通に出迎えてくれた。
一番先に翔太の帰りを出迎えてくれたのは、尻尾を振ってうれしそうに纏わりついてきた鷹森家の愛犬、柴犬のコタロウだ。
「あら、おかえり」
家事をしていたらしい母の美佐子が、台所から出て来てエプロンの裾で濡れた手を拭きながら、久しぶりに顔を見る息子にのん気に声を掛ける。
翔太の父はまだ仕事中のはずだった。
「お疲れさん」
TVゲームで遊んでたらしい兄の翼はそう言うと立ち上がって近寄り、翔太のほっぺたをムニ〜っと引っぱって、こう付け加えた。
「腕白ボーズ!少しは凡人の気持ちがわかったか?」
「いってぇな、何のことだよ…」
翔太は引っぱられた自分の頬をスリスリと撫でさする。
そんな翔太に一つため息をつくと翼は苦笑いを浮かべて、こんどは翔太の頭をぐちゃぐちゃに掻き回した。
「何でもねぇよ」
「あにすんだよっ、このっ!翼まて、このやろ!」
二つしか年が離れてないのを良いことに、くそ生意気な弟は、兄を呼び捨てにする。
兄の鷹森翼はJリーグのプロサッカー選手であり、知る人ぞ知るアスリートのDNAを持った異種スポーツ兄弟として、二つの業界ではかなり有名な話であった。
高校を卒業後、実家を出て茨城にあるクラブの寮に住んでいる。
シーズンオフでもあるし、今日は傷心の弟を慰めてやろうと、久しぶりに実家に戻ってきた訳だが、傍目には虐待してるとしか見えないことだろう…
じつはこれには翼なりの翔太に対する複雑な思いも関係している。
(かわいさあまって何とやら…かもな)
翔太はいきなりスーツケースの中身をぶちまけると、家族へのイタリア土産を探し出して得意満面の笑顔で差し出した。
母への土産はセンスを疑うようなどぎつい色のスカーフで、広げられた布地を見ながら母の美佐子は困惑していた。
相変わらずの弟の無邪気っぷりを兄の翼は目を細めて苦笑するしかなかった。
翔太は手の付けられないやんちゃ坊主だった。
二つ上の兄の翼は聞き分けが良く素直でいい子だったが、なぜか翔太といると一緒になって暴れ回っていた。
元気の有り余ってた兄弟に手を焼いた美佐子は、幼稚園が終わると二人まとめて近所のスイミングスクールに通わせることにした。
ところが三歳児の翔太には退屈だったのか、ふてくされてもう行かないと駄々をこねた。
この時両親は子供のことだから、気に入らないことでもあったのだろう位の軽い気持ちで、あまり気に病まずにスイミングスクールを辞めさせた。
翔太本人はまだ幼かったから、なぜつまらなかったのかはわからなかった。
だが一番割りを食ったのは翔太のそばにいた翼だった。
翔太ほどは幼くなかったので、弟がすぐに出来たバタ足も自分はすぐには出来ないのだと、かなりのショックを受けた。
翼がやっと息継ぎができるようになった時には、翔太はすでに蛙のように泳げるようになってスクールを辞めていた。
実を言うといまの翼があるのは翔太への並々ならぬ対抗心から生まれた成功であり、弟は知らずに兄に努力と根性というものを植え付けたことになった。
その後翼は地道にクロールまでマスターした後、地元の大会で優勝も果たした。
小学校の三年生になると前々から興味のあったサッカースクールで基礎を学びながら、週末は地元地区のジュニアサッカーチームに所属し、公式戦や対外試合に出場した。
サッカーが面白くなってうち込んでいるうちに、数々の大会で優勝するようになって翼個人も認められ、サッカーの名門校に入学後は当然のようにプロに進む道が用意されていた。
翼は少し感傷的になってしまった自分を反省した。
「おい!翼、喜べ!お前にもちゃんと土産を用意してるんだぞ!」
瞳を輝かして、ガキの頃のように『兄ちゃん、褒めて!褒めて!』のオーラを垂れ流してる、満面笑顔の弟。
その手に広げられてる翼への土産のTシャツには、やはりセンスのかけらも無いプリントがどぎつく描かれている…
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「鷹森君!応援してくれてた国民の皆さんに、何か一言ないですか?」
「不甲斐無い成績だったけど、応援してくれたファンの皆さんへの謝罪はありませんか?」
「失敗していくらショックだったからって、説明もなしで逃げ出すなんて、あまりにも自分勝手で無責任だと思うけど!」
「そうだ!そうだ!」
「オリンピック代表選手としての自覚が足りないんじゃないの!」
「翔ちゃ〜ん!私はずっと応援してるよ〜!!」
「がんばって〜!」
「一部では実力的にはまだオリンピックに出場できるレベルに達してない君が、人気にあやかって連盟とJOCが結託した結果、出場資格が与えられたとか何とか…選考に不備があったと言う情報もあるんだけどねぇ」
(何言ってやがるんだ!代表選考のかかった全日本フィギュアで、ダントツに優勝したのはじゃあ、誰だって言うんだ!それ以前にポイント制だってんだ!)
聞き捨てならないこの暴言に思わず、翔太は何か一言いってやろうとしたが、慌てたコーチに袖を引っ張られ目顔で止められた。
まあ、言わなくて済んで正解だった…そんなことしたら更にマスコミの餌食になると言う、向こうの思う壺だったろうから。
「国の代表として出場してるんだから、あんまり子供っぽい真似しないでくれるかなぁ」
「国外にも君の問題行動は流れてるんだぞ!同じ日本人として恥ずかしいよ、まったく!」
演技の内容も然ることながら、マスコミは競技終了後のインタビューをボイコットした翔太の態度の悪さを責め立てた。
熱くなった報道陣に四方から取り囲まれて、翔太の身を案じたコーチ達はなかば両サイドからガードする形で、ほうほうのていで空港から脱出する羽目になった。
長旅と空港でのトラブルにほとほと疲れ果てて、やっと東京郊外にある自宅にたどり着いた時には心底ホッとした。
こんなこともあろうかと機転を利かせたコーチ達のおかげで、騒ぎに巻き込まれないよう家族達には家で翔太の帰りを待っててもらったのは正解だった。
スーツケースを引きずって室内に入ると、家族達は至って普通に出迎えてくれた。
一番先に翔太の帰りを出迎えてくれたのは、尻尾を振ってうれしそうに纏わりついてきた鷹森家の愛犬、柴犬のコタロウだ。
「あら、おかえり」
家事をしていたらしい母の美佐子が、台所から出て来てエプロンの裾で濡れた手を拭きながら、久しぶりに顔を見る息子にのん気に声を掛ける。
翔太の父はまだ仕事中のはずだった。
「お疲れさん」
TVゲームで遊んでたらしい兄の翼はそう言うと立ち上がって近寄り、翔太のほっぺたをムニ〜っと引っぱって、こう付け加えた。
「腕白ボーズ!少しは凡人の気持ちがわかったか?」
「いってぇな、何のことだよ…」
翔太は引っぱられた自分の頬をスリスリと撫でさする。
そんな翔太に一つため息をつくと翼は苦笑いを浮かべて、こんどは翔太の頭をぐちゃぐちゃに掻き回した。
「何でもねぇよ」
「あにすんだよっ、このっ!翼まて、このやろ!」
二つしか年が離れてないのを良いことに、くそ生意気な弟は、兄を呼び捨てにする。
兄の鷹森翼はJリーグのプロサッカー選手であり、知る人ぞ知るアスリートのDNAを持った異種スポーツ兄弟として、二つの業界ではかなり有名な話であった。
高校を卒業後、実家を出て茨城にあるクラブの寮に住んでいる。
シーズンオフでもあるし、今日は傷心の弟を慰めてやろうと、久しぶりに実家に戻ってきた訳だが、傍目には虐待してるとしか見えないことだろう…
じつはこれには翼なりの翔太に対する複雑な思いも関係している。
(かわいさあまって何とやら…かもな)
翔太はいきなりスーツケースの中身をぶちまけると、家族へのイタリア土産を探し出して得意満面の笑顔で差し出した。
母への土産はセンスを疑うようなどぎつい色のスカーフで、広げられた布地を見ながら母の美佐子は困惑していた。
相変わらずの弟の無邪気っぷりを兄の翼は目を細めて苦笑するしかなかった。
翔太は手の付けられないやんちゃ坊主だった。
二つ上の兄の翼は聞き分けが良く素直でいい子だったが、なぜか翔太といると一緒になって暴れ回っていた。
元気の有り余ってた兄弟に手を焼いた美佐子は、幼稚園が終わると二人まとめて近所のスイミングスクールに通わせることにした。
ところが三歳児の翔太には退屈だったのか、ふてくされてもう行かないと駄々をこねた。
この時両親は子供のことだから、気に入らないことでもあったのだろう位の軽い気持ちで、あまり気に病まずにスイミングスクールを辞めさせた。
翔太本人はまだ幼かったから、なぜつまらなかったのかはわからなかった。
だが一番割りを食ったのは翔太のそばにいた翼だった。
翔太ほどは幼くなかったので、弟がすぐに出来たバタ足も自分はすぐには出来ないのだと、かなりのショックを受けた。
翼がやっと息継ぎができるようになった時には、翔太はすでに蛙のように泳げるようになってスクールを辞めていた。
実を言うといまの翼があるのは翔太への並々ならぬ対抗心から生まれた成功であり、弟は知らずに兄に努力と根性というものを植え付けたことになった。
その後翼は地道にクロールまでマスターした後、地元の大会で優勝も果たした。
小学校の三年生になると前々から興味のあったサッカースクールで基礎を学びながら、週末は地元地区のジュニアサッカーチームに所属し、公式戦や対外試合に出場した。
サッカーが面白くなってうち込んでいるうちに、数々の大会で優勝するようになって翼個人も認められ、サッカーの名門校に入学後は当然のようにプロに進む道が用意されていた。
翼は少し感傷的になってしまった自分を反省した。
「おい!翼、喜べ!お前にもちゃんと土産を用意してるんだぞ!」
瞳を輝かして、ガキの頃のように『兄ちゃん、褒めて!褒めて!』のオーラを垂れ流してる、満面笑顔の弟。
その手に広げられてる翼への土産のTシャツには、やはりセンスのかけらも無いプリントがどぎつく描かれている…
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2008.03.07 (Fri)
K&C 折れた翼 2
控え室に戻った翔太は、下位の選手が近づきがたい程のオーラを醸し出して項垂れていた。
傍らにいるコーチの杉沼と振付師のパウル・フェデラーに、先ほどの無礼な態度、得点も見ずにキス&クライを降りたことや、予定していたインタビューをボイコットしてしまったことについて、懇々と説教されていた。
しばらくすると勢い良くドアが開き、いま最も会いたくないと思っていた人物が、満面の笑みを浮かべて翔太の前にやってきた。
先ほどの翔太の無様な滑りを直接見たのか、モニターで見たのかは不明だが、開口一番こう言った。
「こうもボッロボロだと逆に壮快だわね!」
「だまれ、オカマ!」
(なんでこいつはいつもおれの神経を逆なでするのがうまいんだ!)
これ以上同じ空気を吸ってたくないので、翔太は着替えて帰り支度をすることにする。
「きぃ〜!何ですって!ちょっと、まちなさいよっ!」
(まだなんか喚いてるが、知ったこっちゃねえ!)
ジュニア時代からの翔太のライバル兼天敵。
フランス代表のフランソワ・ビノシュは何かにつけて翔太に突っかかってくる、いけ好かないやな奴だ。
天使のような愛らしい美貌と、華麗にして繊細な演技に国内外のファンも多いが、中身は毒舌の小悪魔だ。
そして着替え終わってコーチ達と共に控え室を出て行こうとした矢先。
もう一人のライバルと鉢合わせしてしまった。
翔太に気付き、一瞬気まずそうな様子を見せたが、誠実な人柄で知られる彼の心そのままに、真心をこめて慰めてくれた。
「その、なんて言っていいか、ああ、失敗は成功を教えてくれると言うじゃないか。今日は調子が悪かったけど、あきらめなければ次にパーフェクトな演技ができるかもしれないよ」
そう言って、はんなりと微笑むのだ。
失敗した翔太を心底気遣ってくれる、心優しいナイスガイ。
アメリカ代表のロシア系アメリカ人エドゥアルド・ソロキンで、この男もまた同性愛者だ。
フィギュアスケーター、ことに男子シングルの選手にはなぜかゲイが多い。
翔太を含めた演技者達は多かれ少なかれ、ナルシストな一面を持っている。ある意味、自分に酔いしれる演技が出来ないようでは観客を魅了する演技は生まれない。などど最もらしく分析してみても、大好きな自分と同じ性を好んでいるとしか推測しようもないのだが。
そんなわけで、エドゥアルドの慰めに、翔太は素直に感謝した。
「…ありがとう」
「そんな負け犬ほっときなさいよ!」
すかさず後ろから茶々を入れる小悪魔だったが、エドゥアルドが悲しそうな顔をすると、なぜか静かになって黙り込んだ。
(おれには情け容赦ないくせに、エドには弱いんだよな〜こいつって…)
ショート・プログラムの成績で翌日の滑走順が決められるため、二人の順位は翔太の遥か先に位置する。
翔太は失敗のショックから、その後の上位順位がどうなっているかなど確認もしてもいなかったが、もしかすると二人は表彰台圏内かもしれない。
歓声と共にドアの向こうが急に慌しくなってきた。
「あ、いたいた!」
「おい、押すなよ!」
カメラを抱えた報道陣が、エドゥアルドに向かってマイクを突き出した。
「惜しかったねぇ、あと、ほんのちょっとの差だったのに…」
「え?」
「あ、すみません、ちょっと通してください」
エドゥアルドのコーチが、報道陣から彼を守るように割って入った。
エドゥアルドがコーチに視線を投げかけると、コーチはひとつ頷き彼の質問に答えた。
「いま最終滑走のヴァシチェンコの得点が出た。おめでとう、君はシルバーメダリストだよ」
「きゃ〜あ〜!!」
今の話を聞いてたらしい、控え室にいるフランソワが黄色い歓声をあげる。
(でもさっきからモニター中継で演技を見てたらしいフランソワは、とっくに知ってたはずだけど…)
エドゥアルド本人はびっくりしてたが、すぐに満面の笑顔を浮かべてコーチと抱き合った。
エドゥアルドに慰められたように、翔太も心から彼の大健闘を称えた。
「惜しかったね、金メダル。でも、おめでとう!」
「ありがとう、翔太!信じられないよ、ぼくがメダリストだなんて…!」
歓喜のメダリストは頬を上気させて、こんどは翔太に抱きついて喜びを訴える。と、後ろから抗議の声が上がる。
「ちょっと、エドゥアルド!抱きつくんならそんな縁起の悪い子じゃなくて、5位入賞のこのぼくにしなさいよっ!」
栄えある金メダルを獲得したのは、ロシアの鉄の男アイアン・マン、ミスターパーフェクトとも異名をとる、ユーリー・ヴァシチェンコだ。
現地入りしてからは一人ホテルに引きこもり、選手村にも一切顔を出さず、周囲を完全シャットアウトして競技に集中したと言う。
それが功を奏したのかは不明だが、翔太はヴァシチェンコが苦手だった。
冷静に観察してみると、エドゥアルドやフランソワ、他の白人には無愛想ながらも普通に会話してるが、翔太を含めた東洋人にはまるでその辺にいる虫けらのように、冷たい一瞥をくれるのみで無視するのである。
(まあ、海外に出ると時々いる白人至上主義者なんだろうけど、そんな奴がゴールドに輝くなんてすげームカつく…)
銀メダリストはすでにご存知の通りのアメリカ代表で、翔太はこれには本当に大満足だ。
銅メダリストはカナダ代表のダニエル・バトラーだった。
個性的な演技をする選手で、好不調の波のある選手だったが、今回はみごとに幸福の女神が微笑んだというわけだ。
閉会式に出席せずに一足先に帰国することにした翔太は、一抹の寂しさを感じながらパラヴェーラ競技場を後にする。
また一からやり直しだ、絶対に這い上がってやる。
目指すは次の開催地バンクーバーだ!
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傍らにいるコーチの杉沼と振付師のパウル・フェデラーに、先ほどの無礼な態度、得点も見ずにキス&クライを降りたことや、予定していたインタビューをボイコットしてしまったことについて、懇々と説教されていた。
しばらくすると勢い良くドアが開き、いま最も会いたくないと思っていた人物が、満面の笑みを浮かべて翔太の前にやってきた。
先ほどの翔太の無様な滑りを直接見たのか、モニターで見たのかは不明だが、開口一番こう言った。
「こうもボッロボロだと逆に壮快だわね!」
「だまれ、オカマ!」
(なんでこいつはいつもおれの神経を逆なでするのがうまいんだ!)
これ以上同じ空気を吸ってたくないので、翔太は着替えて帰り支度をすることにする。
「きぃ〜!何ですって!ちょっと、まちなさいよっ!」
(まだなんか喚いてるが、知ったこっちゃねえ!)
ジュニア時代からの翔太のライバル兼天敵。
フランス代表のフランソワ・ビノシュは何かにつけて翔太に突っかかってくる、いけ好かないやな奴だ。
天使のような愛らしい美貌と、華麗にして繊細な演技に国内外のファンも多いが、中身は毒舌の小悪魔だ。
そして着替え終わってコーチ達と共に控え室を出て行こうとした矢先。
もう一人のライバルと鉢合わせしてしまった。
翔太に気付き、一瞬気まずそうな様子を見せたが、誠実な人柄で知られる彼の心そのままに、真心をこめて慰めてくれた。
「その、なんて言っていいか、ああ、失敗は成功を教えてくれると言うじゃないか。今日は調子が悪かったけど、あきらめなければ次にパーフェクトな演技ができるかもしれないよ」
そう言って、はんなりと微笑むのだ。
失敗した翔太を心底気遣ってくれる、心優しいナイスガイ。
アメリカ代表のロシア系アメリカ人エドゥアルド・ソロキンで、この男もまた同性愛者だ。
フィギュアスケーター、ことに男子シングルの選手にはなぜかゲイが多い。
翔太を含めた演技者達は多かれ少なかれ、ナルシストな一面を持っている。ある意味、自分に酔いしれる演技が出来ないようでは観客を魅了する演技は生まれない。などど最もらしく分析してみても、大好きな自分と同じ性を好んでいるとしか推測しようもないのだが。
そんなわけで、エドゥアルドの慰めに、翔太は素直に感謝した。
「…ありがとう」
「そんな負け犬ほっときなさいよ!」
すかさず後ろから茶々を入れる小悪魔だったが、エドゥアルドが悲しそうな顔をすると、なぜか静かになって黙り込んだ。
(おれには情け容赦ないくせに、エドには弱いんだよな〜こいつって…)
ショート・プログラムの成績で翌日の滑走順が決められるため、二人の順位は翔太の遥か先に位置する。
翔太は失敗のショックから、その後の上位順位がどうなっているかなど確認もしてもいなかったが、もしかすると二人は表彰台圏内かもしれない。
歓声と共にドアの向こうが急に慌しくなってきた。
「あ、いたいた!」
「おい、押すなよ!」
カメラを抱えた報道陣が、エドゥアルドに向かってマイクを突き出した。
「惜しかったねぇ、あと、ほんのちょっとの差だったのに…」
「え?」
「あ、すみません、ちょっと通してください」
エドゥアルドのコーチが、報道陣から彼を守るように割って入った。
エドゥアルドがコーチに視線を投げかけると、コーチはひとつ頷き彼の質問に答えた。
「いま最終滑走のヴァシチェンコの得点が出た。おめでとう、君はシルバーメダリストだよ」
「きゃ〜あ〜!!」
今の話を聞いてたらしい、控え室にいるフランソワが黄色い歓声をあげる。
(でもさっきからモニター中継で演技を見てたらしいフランソワは、とっくに知ってたはずだけど…)
エドゥアルド本人はびっくりしてたが、すぐに満面の笑顔を浮かべてコーチと抱き合った。
エドゥアルドに慰められたように、翔太も心から彼の大健闘を称えた。
「惜しかったね、金メダル。でも、おめでとう!」
「ありがとう、翔太!信じられないよ、ぼくがメダリストだなんて…!」
歓喜のメダリストは頬を上気させて、こんどは翔太に抱きついて喜びを訴える。と、後ろから抗議の声が上がる。
「ちょっと、エドゥアルド!抱きつくんならそんな縁起の悪い子じゃなくて、5位入賞のこのぼくにしなさいよっ!」
栄えある金メダルを獲得したのは、ロシアの鉄の男アイアン・マン、ミスターパーフェクトとも異名をとる、ユーリー・ヴァシチェンコだ。
現地入りしてからは一人ホテルに引きこもり、選手村にも一切顔を出さず、周囲を完全シャットアウトして競技に集中したと言う。
それが功を奏したのかは不明だが、翔太はヴァシチェンコが苦手だった。
冷静に観察してみると、エドゥアルドやフランソワ、他の白人には無愛想ながらも普通に会話してるが、翔太を含めた東洋人にはまるでその辺にいる虫けらのように、冷たい一瞥をくれるのみで無視するのである。
(まあ、海外に出ると時々いる白人至上主義者なんだろうけど、そんな奴がゴールドに輝くなんてすげームカつく…)
銀メダリストはすでにご存知の通りのアメリカ代表で、翔太はこれには本当に大満足だ。
銅メダリストはカナダ代表のダニエル・バトラーだった。
個性的な演技をする選手で、好不調の波のある選手だったが、今回はみごとに幸福の女神が微笑んだというわけだ。
閉会式に出席せずに一足先に帰国することにした翔太は、一抹の寂しさを感じながらパラヴェーラ競技場を後にする。
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2008.03.05 (Wed)
K&C 折れた翼 1
その年の冬期オリンピックはイタリアのトリノで開催された。
フィギュアスケートの会場はトリノ市内にあるパラヴェーラ(パラッツォ・ア・ヴェーラ)屋内競技場で行われた。
男子シングルでは一枠のみの出場資格となった日本人唯一の期待の星。
弱冠18歳の日本不動のエース、鷹森翔太。
背負わされた重圧は重く圧し掛かるが、ある程度のプレッシャーならば生来の勝気と負けん気で乗り越えることが出来たし、ばねにかえるだけのメンタル面の強さもあったのでむしろ望むところであった。
そう、この時までは…
前日のショートプログラムでは何とか7位につけることがやっとだった。
目立ったミスは犯さなかったものの、技術要素をローリスクに抑えたため、思ったほどの得点は得られなかった。
このままでも入賞は出来るが、上位順位の点差は僅かなのでメダルのチャンスを失ったわけではない。
満を持して望んだ最初のクァドラプルトウループが失敗して転倒してしまった!
続く得意のトリプルアクセルは成功したが、トリプルループとトリプルサルコウは抜けてしまってシングルになり、苦手のスピンは回転スピードの不足でよたつき、得意のはずのサーキュラーステップまで精彩を欠いた。
後半、トリプルアクセル+ダブルトウループ+ダブルループの三連続ジャンプを予定していたが、最初のジャンプでエッジが引っかかって、続くコンビネーションを飛ぶことが出来なかった。これは三回転以上の同じ種類で同じ回転数の単独ジャンプを二回飛ぶことは出来ない、と言うザヤックルールにひっかかる。
トリプルフリップ+ダブルトウループのコンビネーションも、失敗を引きずりダブル+シングルになった上にフリップはアウトエッジに乗ってしまう…
(だめだ、これじゃ入賞もできねぇよな…よし!次のルッツで飛べなかったコンビネーションにチャレンジだ…)
けして得意ではないトリプルルッツに急遽、飛べなかった三連続ジャンプのコンビネーションを入れようとした結果、手をついてしまった。
最後のダブルアクセルは何とか着氷するが、翔太の頭の中は暗澹たる思いでいっぱいであった。
締めの見せ場とも言うべきストレートラインステップも、コンビネーションスピンも記憶すらなかった。
キス&クライで演技の結果を待つ間、放心状態で終始翔太は俯いていた。
結果は八つも順位を落としての15位と言う成績だった。
ジャッジにファーストジャンプが4回転ジャンプへの挑戦とは見なされず、三回転扱いにされてしまったというおまけもついている。
結果が出た早々、翔太は得点もろくに見ないままキス&クライを降りると、待ち構えていた日本のインタビュアーをそのまま振り切って逃げた。
(悔しい!悔しい!悔しい!まったく、なんてざまだ!なさけねぇ…おれってば……)
バックヤードで思わず溢れてくる涙を衣装の袖で拭う。
そんな自分もなさけなくって、むかついて…
野次馬が興味深そうに翔太を遠巻きにうかがっている。
(ばかやろー!じろじろ見てんじゃね〜よっ!人の失敗がそんなに面白いかよっ!)
いままでそれなりの努力はして来たものの、おおむね順風満帆でやってきた翔太にとって、この大舞台が人生で初めて味わった屈辱だったかもしれない。
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フィギュアスケートの会場はトリノ市内にあるパラヴェーラ(パラッツォ・ア・ヴェーラ)屋内競技場で行われた。
男子シングルでは一枠のみの出場資格となった日本人唯一の期待の星。
弱冠18歳の日本不動のエース、鷹森翔太。
背負わされた重圧は重く圧し掛かるが、ある程度のプレッシャーならば生来の勝気と負けん気で乗り越えることが出来たし、ばねにかえるだけのメンタル面の強さもあったのでむしろ望むところであった。
そう、この時までは…
前日のショートプログラムでは何とか7位につけることがやっとだった。
目立ったミスは犯さなかったものの、技術要素をローリスクに抑えたため、思ったほどの得点は得られなかった。
このままでも入賞は出来るが、上位順位の点差は僅かなのでメダルのチャンスを失ったわけではない。
満を持して望んだ最初のクァドラプルトウループが失敗して転倒してしまった!
続く得意のトリプルアクセルは成功したが、トリプルループとトリプルサルコウは抜けてしまってシングルになり、苦手のスピンは回転スピードの不足でよたつき、得意のはずのサーキュラーステップまで精彩を欠いた。
後半、トリプルアクセル+ダブルトウループ+ダブルループの三連続ジャンプを予定していたが、最初のジャンプでエッジが引っかかって、続くコンビネーションを飛ぶことが出来なかった。これは三回転以上の同じ種類で同じ回転数の単独ジャンプを二回飛ぶことは出来ない、と言うザヤックルールにひっかかる。
トリプルフリップ+ダブルトウループのコンビネーションも、失敗を引きずりダブル+シングルになった上にフリップはアウトエッジに乗ってしまう…
(だめだ、これじゃ入賞もできねぇよな…よし!次のルッツで飛べなかったコンビネーションにチャレンジだ…)
けして得意ではないトリプルルッツに急遽、飛べなかった三連続ジャンプのコンビネーションを入れようとした結果、手をついてしまった。
最後のダブルアクセルは何とか着氷するが、翔太の頭の中は暗澹たる思いでいっぱいであった。
締めの見せ場とも言うべきストレートラインステップも、コンビネーションスピンも記憶すらなかった。
キス&クライで演技の結果を待つ間、放心状態で終始翔太は俯いていた。
結果は八つも順位を落としての15位と言う成績だった。
ジャッジにファーストジャンプが4回転ジャンプへの挑戦とは見なされず、三回転扱いにされてしまったというおまけもついている。
結果が出た早々、翔太は得点もろくに見ないままキス&クライを降りると、待ち構えていた日本のインタビュアーをそのまま振り切って逃げた。
(悔しい!悔しい!悔しい!まったく、なんてざまだ!なさけねぇ…おれってば……)
バックヤードで思わず溢れてくる涙を衣装の袖で拭う。
そんな自分もなさけなくって、むかついて…
野次馬が興味深そうに翔太を遠巻きにうかがっている。
(ばかやろー!じろじろ見てんじゃね〜よっ!人の失敗がそんなに面白いかよっ!)
いままでそれなりの努力はして来たものの、おおむね順風満帆でやってきた翔太にとって、この大舞台が人生で初めて味わった屈辱だったかもしれない。
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2008.03.05 (Wed)
K&C プロローグ
いったい何人の選手が氷上で悔し涙を流したことだろうか…
冬の祭典の華、フィギュアスケート。
中でもシングルの選手はウィンタースポーツの花形とも呼ばれる存在だ。
美しく華麗にして、競技の枠を越えた芸術とも言えるスポーツなのである。
観る者の心をとらえて放さない、何年も語り伝えられるべき伝説のスケーター達。
女子選手として世界で初めて公式戦でトリプルアクセルを成功させたアジアのツナミガールは、それまでの優雅な女子シングル界に男子選手並みのスピードとジャンプ力を見せつけて、以後の女子シングル界のレベルを飛躍的に進化させるという金字塔を打ち建てた。
ショーマンシップに溢れたフランスの伊達男は、騎士の剣技を模したストレートラインステップで大いに観客を沸かせた。
『That's life(それが人生)』
度重なる不幸を乗り越え、それでも念願のゴールドメダルをその手に掴むことができなかったロシアの女王は、笑顔でそう答えたと言う。
それぞれの悲喜交々の思いを胸に、選手達は銀盤の上で華麗に舞う。
冬の祭典の華、フィギュアスケート。
中でもシングルの選手はウィンタースポーツの花形とも呼ばれる存在だ。
美しく華麗にして、競技の枠を越えた芸術とも言えるスポーツなのである。
観る者の心をとらえて放さない、何年も語り伝えられるべき伝説のスケーター達。
女子選手として世界で初めて公式戦でトリプルアクセルを成功させたアジアのツナミガールは、それまでの優雅な女子シングル界に男子選手並みのスピードとジャンプ力を見せつけて、以後の女子シングル界のレベルを飛躍的に進化させるという金字塔を打ち建てた。
ショーマンシップに溢れたフランスの伊達男は、騎士の剣技を模したストレートラインステップで大いに観客を沸かせた。
『That's life(それが人生)』
度重なる不幸を乗り越え、それでも念願のゴールドメダルをその手に掴むことができなかったロシアの女王は、笑顔でそう答えたと言う。
それぞれの悲喜交々の思いを胸に、選手達は銀盤の上で華麗に舞う。




