2008.02.28 (Thu)
弱音
みなさんのブログをさすらっていると、ゲームのキャラクターを愛してる方が多いんですよね。
最近のゲームは進化してるということでしょうか笑
そういう私は、昔のファミリーコンピュータで止まってまして…
まあ、いいや笑
次のネタの情報収集をしてると面白すぎてついつい横道にそれちゃうな…
こまった…
そんなことしてたら一年ぐらいあっという間に過ぎそうだ。
そして時間が経つと自分のやる気すらなくなる。
安易に決めちゃうとあとで自分の首を絞めることになるんだよ、わかってる。
でもね…
誰も書いてくれないから、自分で読みたいものを書く!
これだけがゆずれない第一条件だから、自分の知識の無さや技量不足はこの際おいとくしかありません笑
形にさえなっていれば何年か後に、いまよりは人間ができている未来の自分が書き直してくれるかも知れないしね。
録画しといた四大陸フィギュアもいい加減みなきゃいけないな…ハァ
今日はあきらかにテンションダウン…
最近のゲームは進化してるということでしょうか笑
そういう私は、昔のファミリーコンピュータで止まってまして…
まあ、いいや笑
次のネタの情報収集をしてると面白すぎてついつい横道にそれちゃうな…
こまった…
そんなことしてたら一年ぐらいあっという間に過ぎそうだ。
そして時間が経つと自分のやる気すらなくなる。
安易に決めちゃうとあとで自分の首を絞めることになるんだよ、わかってる。
でもね…
誰も書いてくれないから、自分で読みたいものを書く!
これだけがゆずれない第一条件だから、自分の知識の無さや技量不足はこの際おいとくしかありません笑
形にさえなっていれば何年か後に、いまよりは人間ができている未来の自分が書き直してくれるかも知れないしね。
録画しといた四大陸フィギュアもいい加減みなきゃいけないな…ハァ
今日はあきらかにテンションダウン…
2008.02.26 (Tue)
モーターショーの思い出
3年位前の東京モーターショーの写真です。
ご承知とは思うが写ってるのは私じゃないよ笑
キャンペーンガールのお姉さん、その中で顔が暗くて見えないのを選んでみたが、だいじょうぶだよね…(~_~;)
車やバイクに興味はないし、もちろんキャンペーンガールのお姉さん達目当ての趣味の人では断じてない…
当時やってた仕事のためで、写真のコスチュームは私が考えたものです。

社長命令『他のとこのコスチュームも撮ってきて!』
かくして私は広大な会場内を、カメラ小僧に混じって負けじとキャンペーンガールのお姉さん達を撮りまくるハメになる。
しかし途中で会社のカメラが機能しなくなり、ちょうどその時カメラのメーカーさんのブースがそばにあったので聞いてみたら、たんに充電が十分じゃなかったらしい。
そういえば、社長はメカオンチだった…
仕方がないのでそれからは自分の携帯で撮った。
なんという律儀な性格笑
いま考えるとキャンペーンガールばかりを追っかけて写真を撮りまくる、さぞやおかしなオンナと思われてたことだろう…
ご承知とは思うが写ってるのは私じゃないよ笑
キャンペーンガールのお姉さん、その中で顔が暗くて見えないのを選んでみたが、だいじょうぶだよね…(~_~;)
車やバイクに興味はないし、もちろんキャンペーンガールのお姉さん達目当ての趣味の人では断じてない…
当時やってた仕事のためで、写真のコスチュームは私が考えたものです。

社長命令『他のとこのコスチュームも撮ってきて!』
かくして私は広大な会場内を、カメラ小僧に混じって負けじとキャンペーンガールのお姉さん達を撮りまくるハメになる。
しかし途中で会社のカメラが機能しなくなり、ちょうどその時カメラのメーカーさんのブースがそばにあったので聞いてみたら、たんに充電が十分じゃなかったらしい。
そういえば、社長はメカオンチだった…
仕方がないのでそれからは自分の携帯で撮った。
なんという律儀な性格笑
いま考えるとキャンペーンガールばかりを追っかけて写真を撮りまくる、さぞやおかしなオンナと思われてたことだろう…
2008.02.25 (Mon)
妄想と現実の狭間
ちょっとうかがってもいいですか?
ここだけの話だから、あなたの大切なものってなあに?
これだけは絶対ゆずれないものってありますか?
さて、私はいったいだれに問いかけているのでしょうね…
そうです、運悪くこの妄想の扉を開いてしまった、ついてないあなたにです。
ナニ?訪問者リストをたどってきた?
きく耳もちません。
あれは巧妙に仕掛けられたトラップです。
だからあなたは私の妄想魂を満足させるために、この質問に答えなくてはいけません。
いまから10分以内に100文字以内で答えてください。
※うそです笑
お遊びが過ぎました…
答えていただいてもあめ玉ひとつ出ませんので、ご自由に出たり入ったりしてくださいませ。
そしてご来店のあかつきには管理人からの熱い抱擁をお付けします。
え、いらねぇって…? 失礼いたしました(__;)
ごらんの通りしょうもないブログでございます…
ネタが尽きたら実のない言葉遊びでお茶を濁す、ここは妄想のネタ
>凌雪様
コメント頂きありがとうございました!
とてもうれしかったです(*^o^*)
ブログと別館の方にも少しお邪魔させていただきました。
未熟だなんてとんでもありません笑、お若いのにびっくりです!
またゆっくり拝見させていただきますね(^o^)
>cherrio様
コメント頂きありがとうございました!
cherrioさんとは長い付き合いになります笑
私が不精して消息を絶ってしまっても、やさしく手を差し伸べてくれる懐の深い人です。
このたびはお付き合いくださいまして、深くご同情申し上げるとともに感謝の気持ちでいっぱいです笑
この上もなく私は大満足であります、侵略完了!
ここだけの話だから、あなたの大切なものってなあに?
これだけは絶対ゆずれないものってありますか?
さて、私はいったいだれに問いかけているのでしょうね…
そうです、運悪くこの妄想の扉を開いてしまった、ついてないあなたにです。
ナニ?訪問者リストをたどってきた?
きく耳もちません。
あれは巧妙に仕掛けられたトラップです。
だからあなたは私の妄想魂を満足させるために、この質問に答えなくてはいけません。
いまから10分以内に100文字以内で答えてください。
※うそです笑
お遊びが過ぎました…
答えていただいてもあめ玉ひとつ出ませんので、ご自由に出たり入ったりしてくださいませ。
そしてご来店のあかつきには管理人からの熱い抱擁をお付けします。
え、いらねぇって…? 失礼いたしました(__;)
ごらんの通りしょうもないブログでございます…
ネタが尽きたら実のない言葉遊びでお茶を濁す、ここは妄想のネタ
>凌雪様
コメント頂きありがとうございました!
とてもうれしかったです(*^o^*)
ブログと別館の方にも少しお邪魔させていただきました。
未熟だなんてとんでもありません笑、お若いのにびっくりです!
またゆっくり拝見させていただきますね(^o^)
>cherrio様
コメント頂きありがとうございました!
cherrioさんとは長い付き合いになります笑
私が不精して消息を絶ってしまっても、やさしく手を差し伸べてくれる懐の深い人です。
このたびはお付き合いくださいまして、深くご同情申し上げるとともに感謝の気持ちでいっぱいです笑
この上もなく私は大満足であります、侵略完了!
2008.02.24 (Sun)
ぬりえ
お絵かきコミュで『ぬりえ』しましたのでお披露目いたします!
え、逃避すんじゃねぇって?ごもっとも、でもこの線画、ずっと塗りたいと思ってたんでね…
久しぶりにがんばったよ、自分…
そしてこの素敵な線画の作者であられる ぽんち様 本当にどうもありがとう
ございましたm(_ _)m
蛙がキモいことになってしまって申し訳ありません(^^;)
しっかり整えられた構図に脱帽デス!
自分の絵だと髪の毛の塗りがうまくいかないのですが、元絵のデッサン力が
すばらしいので塗りやすかったです(^o^)v
これはもちろんお宝部屋に飾らしてもらいます笑
※画像をクリックすると大きくなるよb(^_^)

え、逃避すんじゃねぇって?ごもっとも、でもこの線画、ずっと塗りたいと思ってたんでね…
久しぶりにがんばったよ、自分…
そしてこの素敵な線画の作者であられる ぽんち様 本当にどうもありがとう
ございましたm(_ _)m
蛙がキモいことになってしまって申し訳ありません(^^;)
しっかり整えられた構図に脱帽デス!
自分の絵だと髪の毛の塗りがうまくいかないのですが、元絵のデッサン力が
すばらしいので塗りやすかったです(^o^)v
これはもちろんお宝部屋に飾らしてもらいます笑
※画像をクリックすると大きくなるよb(^_^)

2008.02.23 (Sat)
ありがとう!

あいかわらずのバストショットでございます…
目玉のでかい男の子、ガン○ムに出てきそうだな…と思ってるうちにこうなってしまいました笑
それにしても私は目を描くのが苦手だ!!
よくみるとキモい?うん、わたしもそう思ってるよ…
でもカウンターぶちこわれてるみたいで、ほんとはまだまだ達してないハズなんです笑
二重カウントしない設定にしてるのにあきらかにしてるんでね…
サポートにも問い合わせてみたんですけど気のせいとか〜?
まあ、いいことにしときます笑
私のブログに訪れてくれた(運悪く覗いたも含め)みなさま。
ほんとうにほんとうに、どうもありがとう
ございますヽ(^O^)ノ
またこれからも、訪れていただけるよう、精進していきたいと思います。
2008.02.21 (Thu)
新刊出るぞ!
おお!オンラインショップをチェックしてみたら、3/27にFLESH&BLOODの
11巻がやっと出るらしい!!
いや、油断は禁物…
またぬか喜びだったりして…あまり期待せずに待っとこう笑
その前にグイン・サーガを読まねば…もはや意地ですけどね〜
描写が細か過ぎです、栗本センセ…こんなんじゃ全300巻でも終わりません笑
>しぐのみ様
コメント頂きありがとうございました!
サイトの方にもお邪魔させていただきましたが、
楽しみにしてくださって、これに勝る喜びはありません。
また読んでいただけるようにBLネタも精進いたします笑
>shio様
コメント頂きありがとうございました!
こちらもサイトにお邪魔させていただきました。
面白そうな小説を載せてたんで要チェックしてました笑
また、ゆっくり拝見させて頂きます。
11巻がやっと出るらしい!!
いや、油断は禁物…
またぬか喜びだったりして…あまり期待せずに待っとこう笑
その前にグイン・サーガを読まねば…もはや意地ですけどね〜
描写が細か過ぎです、栗本センセ…こんなんじゃ全300巻でも終わりません笑
>しぐのみ様
コメント頂きありがとうございました!
サイトの方にもお邪魔させていただきましたが、
楽しみにしてくださって、これに勝る喜びはありません。
また読んでいただけるようにBLネタも精進いたします笑
>shio様
コメント頂きありがとうございました!
こちらもサイトにお邪魔させていただきました。
面白そうな小説を載せてたんで要チェックしてました笑
また、ゆっくり拝見させて頂きます。
2008.02.19 (Tue)
ぬけがら〜
自分で首絞めといてナンですが、クリスを書くのはまずしんどい…
思わず逃避してよそ様の小説を覗いたり、地味にプロフ変えてみたりとかですねぇ笑
読んでくれた方がいらっしゃいますかねぇ…
もしそうならとてもうれしいです!ついでにコメントもヨロ笑
自分はマンガ畑の人間なので、文章はしょせん素人でございます〜
誤字脱字、これ文法間違ってない?みたいなご指摘も、ありがたく受け付けますので、心置きなく鞭打ってくださいませ。
あ、先に言っとくと、あのラストのとってつけたようなのは、めんどくさくなったとかじゃ(…多分)なくてですね、JPが呼びさえすればあの子は、全ての思考をやめて尻尾振ってついてくだろって、私なりの不憫な子を表わしてる一言だと思うんですけど…どうですかねぇ?
つぎのネタは目処がつきそうになったらお知らせします…
それまでお遊びにお付き合いくださいませ。
思わず逃避してよそ様の小説を覗いたり、地味にプロフ変えてみたりとかですねぇ笑
読んでくれた方がいらっしゃいますかねぇ…
もしそうならとてもうれしいです!ついでにコメントもヨロ笑
自分はマンガ畑の人間なので、文章はしょせん素人でございます〜
誤字脱字、これ文法間違ってない?みたいなご指摘も、ありがたく受け付けますので、心置きなく鞭打ってくださいませ。
あ、先に言っとくと、あのラストのとってつけたようなのは、めんどくさくなったとかじゃ(…多分)なくてですね、JPが呼びさえすればあの子は、全ての思考をやめて尻尾振ってついてくだろって、私なりの不憫な子を表わしてる一言だと思うんですけど…どうですかねぇ?
つぎのネタは目処がつきそうになったらお知らせします…
それまでお遊びにお付き合いくださいませ。
2008.02.17 (Sun)
バロック ファミリー番外編
ぼくという人間が、人格的に多少歪んでいたとしても仕方がないことだと思う。
だって人間の嫌な部分を知りすぎてしまったのだもの。
学校に通えなくなって何ヶ月経った頃だろう。
パパに殴られて、酒を買いに夜遅く表通りの酒屋に走ったが、あいにく酒屋の店員に追い返された。
そりゃあ、そうだろう。IDカードを提示するまでもない子供なんだから…
帰りたくない足を引きずって、それでも家に帰るしかなかった。
治安の良くない地区の裏町の入り組んだ路地。
売人やホームレスやギャング達が今日もたむろしている。
ここは横道にそれて戻れなくなってしまった人々の吹き溜まりだ。
一歩裏通りに入れば、閑散と寂びれた通りになり、得体の知れない誰だかの吐奢物やらも至る所に吐き捨てられ、アスファルトの舗装がところどころ捲れ上がって無残な姿のまま放置されている。
路地を抜けたところに、低所得者達が住む、およそ廃屋同然のアパートが何軒か立ち並んでいる。
その一つの棟がぼくの住んでるアパートで、たかが知れてるはずの家賃も、ここ数ヶ月溜めこんでるから、いつ追い出されるかはわかったものではない。
赤錆だらけで古びて軋むアパートの鉄階段を登って、買えなかった酒の言い訳を考えたが、子供だから売ってくれなかったと言ったところで、パパは許してくれないだろう。
ため息をついて、手垢で汚れたドアノブを開けると、汚れた衣服や食べ残しの残がい、酒瓶の散乱した見慣れたいつもの光景がそこにある。
まったく不衛生な部屋だ。
淀んだ空気が部屋中を満たしていた。
人間の体臭、酒やタバコや腐った食物やらが混ざり合った、吐き気を催すほどの饐えた臭気が鼻を刺す。
部屋の空気を入れ替えようと窓を開けようとして、注意深く散乱したものをよけたつもりが、足の下でパリンと何かが砕ける音がした。
足をよけると、割れた注射器が現れる。
うんざりした。
最近パパは、得体の知れない人相の悪い男達と付き合い出すようになっていた。
奴らが来るとぼくはフィービーを連れてママの寝室に避難する。
一度からまれて、そのうちの一人にあやうくレイプされそうになったことがあるからだ。
パパは止めようともしなかった…ただ、宙を見据えて夢うつつの状態だった。
しかし、何かが違っていた。
この違和感の正体は…
静か過ぎるんだ。
パパはどこに居るのだろう。
いつも泣いてるフィービーの泣き声がしない。
パパの怒鳴り声も聞こえない。
だって人間の嫌な部分を知りすぎてしまったのだもの。
学校に通えなくなって何ヶ月経った頃だろう。
パパに殴られて、酒を買いに夜遅く表通りの酒屋に走ったが、あいにく酒屋の店員に追い返された。
そりゃあ、そうだろう。IDカードを提示するまでもない子供なんだから…
帰りたくない足を引きずって、それでも家に帰るしかなかった。
治安の良くない地区の裏町の入り組んだ路地。
売人やホームレスやギャング達が今日もたむろしている。
ここは横道にそれて戻れなくなってしまった人々の吹き溜まりだ。
一歩裏通りに入れば、閑散と寂びれた通りになり、得体の知れない誰だかの吐奢物やらも至る所に吐き捨てられ、アスファルトの舗装がところどころ捲れ上がって無残な姿のまま放置されている。
路地を抜けたところに、低所得者達が住む、およそ廃屋同然のアパートが何軒か立ち並んでいる。
その一つの棟がぼくの住んでるアパートで、たかが知れてるはずの家賃も、ここ数ヶ月溜めこんでるから、いつ追い出されるかはわかったものではない。
赤錆だらけで古びて軋むアパートの鉄階段を登って、買えなかった酒の言い訳を考えたが、子供だから売ってくれなかったと言ったところで、パパは許してくれないだろう。
ため息をついて、手垢で汚れたドアノブを開けると、汚れた衣服や食べ残しの残がい、酒瓶の散乱した見慣れたいつもの光景がそこにある。
まったく不衛生な部屋だ。
淀んだ空気が部屋中を満たしていた。
人間の体臭、酒やタバコや腐った食物やらが混ざり合った、吐き気を催すほどの饐えた臭気が鼻を刺す。
部屋の空気を入れ替えようと窓を開けようとして、注意深く散乱したものをよけたつもりが、足の下でパリンと何かが砕ける音がした。
足をよけると、割れた注射器が現れる。
うんざりした。
最近パパは、得体の知れない人相の悪い男達と付き合い出すようになっていた。
奴らが来るとぼくはフィービーを連れてママの寝室に避難する。
一度からまれて、そのうちの一人にあやうくレイプされそうになったことがあるからだ。
パパは止めようともしなかった…ただ、宙を見据えて夢うつつの状態だった。
しかし、何かが違っていた。
この違和感の正体は…
静か過ぎるんだ。
パパはどこに居るのだろう。
いつも泣いてるフィービーの泣き声がしない。
パパの怒鳴り声も聞こえない。
2008.02.15 (Fri)
家族の食卓 ファミリー番外編
「おれと一緒になる?」
彼方の方を向きながら、頬杖ついて何の気なしに洩らした一言が、その場の空気を一変させた。
久しぶりに休暇が取れて、アンダーソン家に戻ってきたクリスを囲み、牧童達も招いてのディナーの席での一言だった。
ひとしきり続いたバカ話が途切れ、話の継穂に洩らしたそれは、あいにくこの場には相応しくなかったようだ。
給仕をしていたトーニャが、思わず皿を落っことしそうになり、あわてて引っ掴んだが、ご自慢のスープはテーブルやらに飛び散ってしまった。
親父を含めた牧童達一同は、おれの洩らした爆弾発言に、クリスの方を凝視し固唾を呑んで見守っている。
おれが誰に向かって言ったことなのかってことは、なるほど、周知の事実ってワケだ。
けして触れてはいけない、気になる恋の行末だったことがこれではっきりした。
みんなの痛いほどの視線を受けながら、当のご本人はと言うと、褐色の目をこれ以上はないほど見開いて、スプーンをスープ皿に落っことしたまま、テーブルクロスを両手で握り締めて、おれを見つめていた。
「……………うん」
衝撃が甚大だったようで、瞬きも忘れたように瞳孔が開きっぱなしのまま、奴はおれのプロポーズを受け入れた。
その瞬間、アンダーソン家のダイニングルームは、コングラチュレーションの嵐に包まれた。
牧童達は雄叫びを上げ、酒を要求してディナーの席は一気に宴会場と化してしまった。
親父はひとしきりおれを抱きしめて頭を手荒く掻き回した後、クリスの方に向かって行くと同じことをやってたが、奴は呆けたようにされるがままだった。
彼方の方を向きながら、頬杖ついて何の気なしに洩らした一言が、その場の空気を一変させた。
久しぶりに休暇が取れて、アンダーソン家に戻ってきたクリスを囲み、牧童達も招いてのディナーの席での一言だった。
ひとしきり続いたバカ話が途切れ、話の継穂に洩らしたそれは、あいにくこの場には相応しくなかったようだ。
給仕をしていたトーニャが、思わず皿を落っことしそうになり、あわてて引っ掴んだが、ご自慢のスープはテーブルやらに飛び散ってしまった。
親父を含めた牧童達一同は、おれの洩らした爆弾発言に、クリスの方を凝視し固唾を呑んで見守っている。
おれが誰に向かって言ったことなのかってことは、なるほど、周知の事実ってワケだ。
けして触れてはいけない、気になる恋の行末だったことがこれではっきりした。
みんなの痛いほどの視線を受けながら、当のご本人はと言うと、褐色の目をこれ以上はないほど見開いて、スプーンをスープ皿に落っことしたまま、テーブルクロスを両手で握り締めて、おれを見つめていた。
「……………うん」
衝撃が甚大だったようで、瞬きも忘れたように瞳孔が開きっぱなしのまま、奴はおれのプロポーズを受け入れた。
その瞬間、アンダーソン家のダイニングルームは、コングラチュレーションの嵐に包まれた。
牧童達は雄叫びを上げ、酒を要求してディナーの席は一気に宴会場と化してしまった。
親父はひとしきりおれを抱きしめて頭を手荒く掻き回した後、クリスの方に向かって行くと同じことをやってたが、奴は呆けたようにされるがままだった。
2008.02.12 (Tue)
番外編告知
ウインドウズに元から内蔵してある日本語変換は、バカ過ぎて使いモンになりません。
最近ひしひしと限界を感じ始めました……
でも金が無いからまだエートック買えません。
次のネタに取り掛かろうとしてたんですが、頭の中でJPとクリスが騒ぎ出して来て、うるさくてかなわんのです。
君達もっと別の宿主探したほうが良いよ…
などと蛇足は百も承知の上で番外編二本載せることにします。
宣言しちゃって良いのか?
本編自体が短くて駆け足だったので、バランスが悪いとは思うのですが、ブログ小説の醍醐味だし好きにします笑
最近ひしひしと限界を感じ始めました……
でも金が無いからまだエートック買えません。
次のネタに取り掛かろうとしてたんですが、頭の中でJPとクリスが騒ぎ出して来て、うるさくてかなわんのです。
君達もっと別の宿主探したほうが良いよ…
などと蛇足は百も承知の上で番外編二本載せることにします。
宣言しちゃって良いのか?
本編自体が短くて駆け足だったので、バランスが悪いとは思うのですが、ブログ小説の醍醐味だし好きにします笑
2008.02.11 (Mon)
ポップにチャレンジ
2008.02.10 (Sun)
まあ、いいや
2008.02.09 (Sat)
打ち上げ〜カンパイッ!
ふう、無事に終わらせることが出来てホッとしました。
連載中に口挟むの、なんかヤだったんでジッと我慢の子でいました〜
とりあえず、ちゃんと生きとります笑
全編通して読んでくれた奇特な方は、果たしていらっしゃったのか?
欲を言えばコメントなども欲しかったところですが、しょうがないですね笑
まあ、がんばるよ〜遠い目……と、思ってたら
キョロリ様
拍手コメントありがとうございました!
これに勝る喜びはありません。
ほとんど新しく書き直した苦労が、一気に報われる思いでございます笑
あ、もしBLを期待されてた読者の方がいらっしゃったのなら、スミマセン…
BLの場合は明記しますので、それ以外は普通のネタだと思ってやってください。てか、冒頭にあらかじめ書いとくべきでしたね…うう
それにしても、カウンターがぶち壊れてやがるみたいで、ほんとにどうにかしてほしいもんです。
他にもおかしいぞってことがチラホラと…
サポートにメールしたら、気のせいだとかナントカ…でもさっき障害情報確認してみたら、私の苦情そのまんまの内容が載ってて、気のせいじゃなかったのね…て、感じです。
ブログのサーバー状況もヤバそうだったんで、とりあえず初めてバックアップしてみた次第です。
え?まだしたことなかったのかって?ハイ…その通りでございます笑
連載中に口挟むの、なんかヤだったんでジッと我慢の子でいました〜
とりあえず、ちゃんと生きとります笑
全編通して読んでくれた奇特な方は、果たしていらっしゃったのか?
欲を言えばコメントなども欲しかったところですが、しょうがないですね笑
まあ、がんばるよ〜遠い目……と、思ってたら
キョロリ様
拍手コメントありがとうございました!
これに勝る喜びはありません。
ほとんど新しく書き直した苦労が、一気に報われる思いでございます笑
あ、もしBLを期待されてた読者の方がいらっしゃったのなら、スミマセン…
BLの場合は明記しますので、それ以外は普通のネタだと思ってやってください。てか、冒頭にあらかじめ書いとくべきでしたね…うう
それにしても、カウンターがぶち壊れてやがるみたいで、ほんとにどうにかしてほしいもんです。
他にもおかしいぞってことがチラホラと…
サポートにメールしたら、気のせいだとかナントカ…でもさっき障害情報確認してみたら、私の苦情そのまんまの内容が載ってて、気のせいじゃなかったのね…て、感じです。
ブログのサーバー状況もヤバそうだったんで、とりあえず初めてバックアップしてみた次第です。
え?まだしたことなかったのかって?ハイ…その通りでございます笑
2008.02.08 (Fri)
ファミリー 最終話
「お前ら、何やってんだぁ?」
間の悪いことに、親父がリビングに入ってきやがった。
ああ、もう、どうとでもなれ!
「いいから、座っとけよ!」
口をへの字に曲げて、クリスはあきらめた。
「ミス・ブリーから話を聞いた」
「あの、女ギツネ…」
クリスの口から汚い言葉が飛び出たが、いまは聞かなかったことにしておこう。
「何で急に進路を変えた?おれが牧場を継ぐって言って、お前がおれの仕事を手伝うって、言い出したからだろ?」
予想外の展開に、事の成り行きを見守ることにしたらしい親父は、おれの座ってるソファーの空きスペースに腰を下ろして腕を組んだ。
「ミス・ブリーがあんまりしつこかったから、からかっただけだよ。初めから大学にいくつもりなんかなかった。やだな、JPもおじさんも、深刻な顔しないでよ」
「これ以上、嘘つくなよ!何年一緒に暮らしてると思ってんだ?もう、お前の顔見りゃ、それが本心から言ってることかどうか位、おれ達はわかってるぜ、あんまり人をなめんなってぇ〜の!」
思わず、テーブルを殴っちまった…いてぇな!
「やりたいことあるんだろ…?」
できるだけ気を静めて、クリスに問いかけた。
徐々にクリスの様子が変わってきて、その顔色は蒼白で小刻みに震えてる。
もう下手な演技もできないらしい。
「おれ、お前がこの家に来て、だんだん、笑うようになったのがうれしかった。だんだん、図太くなって、おれに失礼な態度をとるようになったのだって、ほんとの家族になったんだなって思うと、すげーうれしかった」
見ると、クリスは俯いて泣いてた。
「なんで、自分のやりたいこと、しようとしないんだ?」
「クリス」
ずっと腕を組んで黙っていた親父が、初めて口を挟んだ。
そして、クリスにやさしく語りかけた。
「ああ、お前もやりたいことをするがいい。大学だって行きたければ行けばいい。学費の心配なら無用だよ。二人とも私の大切な子供達だ」
「ぼ、ぼくは、大学なんて、行きたくないよ。ぼくだってアンダーソン家の一員なんだから、みんなのそばにずっと居たいんだ。JPの夢を二人で叶えたいんだ…」
ったく、こいつは、まだこんなこと言ってやがる…
「おれの夢はなぁ、お前が無理してお手伝いして下さるような、いい加減な夢じゃ、ねぇーんだよっ!!」
「……無理なんか」
「そうだぞ、クリス。お前がJPに合わせることはない。お前には、お前の道があるんだから。それに、たとえ別々に暮らそうとも、私達はもう家族なんだから。なあ、本当の家族ってのは、そのようなものじゃないかな」
親父、さすがはアンダーソン家の家長だぜ…
「お前の夢を私達にも遠慮なく話して欲しい。みんなで話し合って、私達にできる最大限のことをしてあげたいんだよ。それが出来なくて、何のための家族かね?」
「おじさん…」
そして、クリスは鼻の頭を真っ赤にして、話し始めた。
「だって、…だってぼくは、事業に失敗しておかしくなっちゃったパパが、ママとまだ小さかった妹のフィービーを道連れに拳銃自殺して…ぼく一人だけ生き残ってしまったんだ…JPは何も聞かなかったけど…そんなイカれた、人殺しの息子なんだよ」
「……クリス」
初めて聞いたクリスの過去は、やっばり悲しいものだった…
「NYのソーシャルワーカーは、ぼくの将来を考えて、パパの起こした事件の知らない、遠い州に行くことを進めてくれた。それで、ママの遠縁に当たる、このアンダーソン家に引き取られることになったんだ。そして、ここの人たちはみんな、ほんとにあたたかくぼくを迎え入れてくれたんだ。まるで、昔からぼくがいるように接してくれた。ぼくがどんなにJPやおじさん、ルピータや牧場のみんなに感謝してるかわかる?牧場の経営がどんなに大変か、わかってるつもりだよ。おじさんだって、本当はやりたくなかった新規事業をしなくちゃならないくらい大変なんだ。JPだって、この家を守ってアンダーソン牧場を引き継ぐって言う、とても立派な夢をもってる。ぼくだって、お世話になったアンダーソン家のために何かしたかったんだ…それなのに、こんなに良くしてもらって、ぼくだけ勝手なわがまま通して迷惑かけたくないんだ!」
あんれまあ…という感じだ。
「おれ、立派なんかじゃないぜ。別に犠牲的精神でこの牧場を継ぎたいって言ってる訳じゃないもん。はっきり言って、親父のことなんか考えてないし、おれが勝手に後を継ぎたいって言ってるだけだから、親父にお前には任せられんって言われるかもだしさ。おれの夢がたまたま、この牧場を継ぎたいってだけのことだろ?」
クリスの奴はおれの言葉に、驚きの表情を浮かべて、しばらく後、脱力した。
「はは、そうか…」
「うん…」
それから肝心なことを言い忘れてた。
「つーか、おれだって経営学、学びたいし、ゆくゆくは奨学金もらってサンアントニオの大学にいくつもりだけど」
「えっ!?」
「…あんだよ」
「JP…それ、マジで言ってんの?」
「なんだよ、悪いかよ」
「いまの君の成績じゃ、奨学金くれる大学は軍隊くらいしかないと思うよ」
いつものクリスの調子がもどってきたみたいだから、おれへの失礼な態度は水に流すことにしよう…
「お前も好きなことしろよ」
「…うん、でもぼくには本当に、JPみたいな明確な夢は無いんだ。…ただ、もっともっと学びたいし、知りたいんだ」
クリスの褐色の瞳が、いまではない遠い未来を思い浮かべていた。
「そっか…」
「なるほど…知りたい…か。大いに結構じゃないかね」
親父が目尻のシワを深くして満足そうに頷いた。
「…おじさん」
「クリス、もう、いいだろう?呼んでくれないかな…私達をお前のニ番目のファミリーとして、認めてもらえんかね?」
クリスは涙ぐみながら、この日最高の笑顔で答えた。
「はい、パパ」
そして親父にハグしてもらった。
それを横目に、やっぱり笑ってるおれ…
キッチンの方からは食欲を掻き立てる、何ともいえない旨そうな香りが漂ってきた。
エピローグ
結局クリスはミドルスクールを卒業後、家を出てマサチューセッツ州にある、ボーディングスクールに入学した。そしてナショナル・メリットのファイナリストという大変名誉な奨学金を筆頭に、複数の奨学金を貰って志望の大学に合格し、更にはメディカルスクールに進み、アンダーソン家の金銭的援助をほとんど必要としなかった。
おれ達が思ってた以上に、奴はギフテッド『天才児』だったらしい。
世界中飛び回って、絶滅危惧種の人工繁殖だの、傷病治療だのをしてるらしいが、休暇がとれるたびに我が家に帰って、カウボーイ生活を満喫してる。
あいかわらず乗馬は、おれの足元にも及ばないけどな。
ところが厩舎の掃除で根を上げてたくせに、いまでは牛の肛門に素手で手をつっこむくらい平気の奴になってた。人間、変われば変わるもんだ。思うんだが、クリスが獣医学の分野に進んだのって、うちの牧場暮らしが、かなりの影響を与えてると思うな…
一緒に過ごした年月は、いま思えばほんのわずかの時間だったけど、おれ達の間には家族という絆ができたから、どんなに遠く離れていても、こうして再び戻ってくる。何度も、何度も…
『JP、ただいま!』
笑顔のクリスを迎えるために、おれは奴の帰るこの場所を守っていくのだ。
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間の悪いことに、親父がリビングに入ってきやがった。
ああ、もう、どうとでもなれ!
「いいから、座っとけよ!」
口をへの字に曲げて、クリスはあきらめた。
「ミス・ブリーから話を聞いた」
「あの、女ギツネ…」
クリスの口から汚い言葉が飛び出たが、いまは聞かなかったことにしておこう。
「何で急に進路を変えた?おれが牧場を継ぐって言って、お前がおれの仕事を手伝うって、言い出したからだろ?」
予想外の展開に、事の成り行きを見守ることにしたらしい親父は、おれの座ってるソファーの空きスペースに腰を下ろして腕を組んだ。
「ミス・ブリーがあんまりしつこかったから、からかっただけだよ。初めから大学にいくつもりなんかなかった。やだな、JPもおじさんも、深刻な顔しないでよ」
「これ以上、嘘つくなよ!何年一緒に暮らしてると思ってんだ?もう、お前の顔見りゃ、それが本心から言ってることかどうか位、おれ達はわかってるぜ、あんまり人をなめんなってぇ〜の!」
思わず、テーブルを殴っちまった…いてぇな!
「やりたいことあるんだろ…?」
できるだけ気を静めて、クリスに問いかけた。
徐々にクリスの様子が変わってきて、その顔色は蒼白で小刻みに震えてる。
もう下手な演技もできないらしい。
「おれ、お前がこの家に来て、だんだん、笑うようになったのがうれしかった。だんだん、図太くなって、おれに失礼な態度をとるようになったのだって、ほんとの家族になったんだなって思うと、すげーうれしかった」
見ると、クリスは俯いて泣いてた。
「なんで、自分のやりたいこと、しようとしないんだ?」
「クリス」
ずっと腕を組んで黙っていた親父が、初めて口を挟んだ。
そして、クリスにやさしく語りかけた。
「ああ、お前もやりたいことをするがいい。大学だって行きたければ行けばいい。学費の心配なら無用だよ。二人とも私の大切な子供達だ」
「ぼ、ぼくは、大学なんて、行きたくないよ。ぼくだってアンダーソン家の一員なんだから、みんなのそばにずっと居たいんだ。JPの夢を二人で叶えたいんだ…」
ったく、こいつは、まだこんなこと言ってやがる…
「おれの夢はなぁ、お前が無理してお手伝いして下さるような、いい加減な夢じゃ、ねぇーんだよっ!!」
「……無理なんか」
「そうだぞ、クリス。お前がJPに合わせることはない。お前には、お前の道があるんだから。それに、たとえ別々に暮らそうとも、私達はもう家族なんだから。なあ、本当の家族ってのは、そのようなものじゃないかな」
親父、さすがはアンダーソン家の家長だぜ…
「お前の夢を私達にも遠慮なく話して欲しい。みんなで話し合って、私達にできる最大限のことをしてあげたいんだよ。それが出来なくて、何のための家族かね?」
「おじさん…」
そして、クリスは鼻の頭を真っ赤にして、話し始めた。
「だって、…だってぼくは、事業に失敗しておかしくなっちゃったパパが、ママとまだ小さかった妹のフィービーを道連れに拳銃自殺して…ぼく一人だけ生き残ってしまったんだ…JPは何も聞かなかったけど…そんなイカれた、人殺しの息子なんだよ」
「……クリス」
初めて聞いたクリスの過去は、やっばり悲しいものだった…
「NYのソーシャルワーカーは、ぼくの将来を考えて、パパの起こした事件の知らない、遠い州に行くことを進めてくれた。それで、ママの遠縁に当たる、このアンダーソン家に引き取られることになったんだ。そして、ここの人たちはみんな、ほんとにあたたかくぼくを迎え入れてくれたんだ。まるで、昔からぼくがいるように接してくれた。ぼくがどんなにJPやおじさん、ルピータや牧場のみんなに感謝してるかわかる?牧場の経営がどんなに大変か、わかってるつもりだよ。おじさんだって、本当はやりたくなかった新規事業をしなくちゃならないくらい大変なんだ。JPだって、この家を守ってアンダーソン牧場を引き継ぐって言う、とても立派な夢をもってる。ぼくだって、お世話になったアンダーソン家のために何かしたかったんだ…それなのに、こんなに良くしてもらって、ぼくだけ勝手なわがまま通して迷惑かけたくないんだ!」
あんれまあ…という感じだ。
「おれ、立派なんかじゃないぜ。別に犠牲的精神でこの牧場を継ぎたいって言ってる訳じゃないもん。はっきり言って、親父のことなんか考えてないし、おれが勝手に後を継ぎたいって言ってるだけだから、親父にお前には任せられんって言われるかもだしさ。おれの夢がたまたま、この牧場を継ぎたいってだけのことだろ?」
クリスの奴はおれの言葉に、驚きの表情を浮かべて、しばらく後、脱力した。
「はは、そうか…」
「うん…」
それから肝心なことを言い忘れてた。
「つーか、おれだって経営学、学びたいし、ゆくゆくは奨学金もらってサンアントニオの大学にいくつもりだけど」
「えっ!?」
「…あんだよ」
「JP…それ、マジで言ってんの?」
「なんだよ、悪いかよ」
「いまの君の成績じゃ、奨学金くれる大学は軍隊くらいしかないと思うよ」
いつものクリスの調子がもどってきたみたいだから、おれへの失礼な態度は水に流すことにしよう…
「お前も好きなことしろよ」
「…うん、でもぼくには本当に、JPみたいな明確な夢は無いんだ。…ただ、もっともっと学びたいし、知りたいんだ」
クリスの褐色の瞳が、いまではない遠い未来を思い浮かべていた。
「そっか…」
「なるほど…知りたい…か。大いに結構じゃないかね」
親父が目尻のシワを深くして満足そうに頷いた。
「…おじさん」
「クリス、もう、いいだろう?呼んでくれないかな…私達をお前のニ番目のファミリーとして、認めてもらえんかね?」
クリスは涙ぐみながら、この日最高の笑顔で答えた。
「はい、パパ」
そして親父にハグしてもらった。
それを横目に、やっぱり笑ってるおれ…
キッチンの方からは食欲を掻き立てる、何ともいえない旨そうな香りが漂ってきた。
エピローグ
結局クリスはミドルスクールを卒業後、家を出てマサチューセッツ州にある、ボーディングスクールに入学した。そしてナショナル・メリットのファイナリストという大変名誉な奨学金を筆頭に、複数の奨学金を貰って志望の大学に合格し、更にはメディカルスクールに進み、アンダーソン家の金銭的援助をほとんど必要としなかった。
おれ達が思ってた以上に、奴はギフテッド『天才児』だったらしい。
世界中飛び回って、絶滅危惧種の人工繁殖だの、傷病治療だのをしてるらしいが、休暇がとれるたびに我が家に帰って、カウボーイ生活を満喫してる。
あいかわらず乗馬は、おれの足元にも及ばないけどな。
ところが厩舎の掃除で根を上げてたくせに、いまでは牛の肛門に素手で手をつっこむくらい平気の奴になってた。人間、変われば変わるもんだ。思うんだが、クリスが獣医学の分野に進んだのって、うちの牧場暮らしが、かなりの影響を与えてると思うな…
一緒に過ごした年月は、いま思えばほんのわずかの時間だったけど、おれ達の間には家族という絆ができたから、どんなに遠く離れていても、こうして再び戻ってくる。何度も、何度も…
『JP、ただいま!』
笑顔のクリスを迎えるために、おれは奴の帰るこの場所を守っていくのだ。
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2008.02.07 (Thu)
ファミリー 6
だがほどもなく、ミドルスクールでそれを知ることとなったのだった。
クラスを移動してる途中、談話スペースの奥の方で、カリキュラム・カウンセラーのミス・ブリーに捕まってるクリスを見かけてしまった。
「大学へ進学しないって、本気で言ってるの?あなたの成績なら、アイビーリーグへの入学だって可能だわ!」
その瞬間、おれには見せたことのない歪んだ笑みを貼りつけて、クリスは吐き捨てるように言った。
「それこそ、ぼくには無縁ですね。私立大学に通えるような余裕はありませんから」
「あなたの家庭の事情は、おおむね前任のフォックス先生から伺っているわ。でもこのままレベルの低い教育を受け続けていても、あなたのためにはならないわよ。私はそれをとても残念に思うの。とにかくいまのご家族と、あなたの将来のことについて話し合ってみることを勧めるわ、もし、あなたから話しづらいのなら私の方から…」
「余計な真似はしないでください!!」
びっくりした…
クリスが声を荒げて怒鳴るなんてこと、はじめてのことだったから。
それきりクリスは、ミス・ブリーの前から立ち去ってしまった。
それ以上に驚いたこと…
アイビーリーグといやぁ、北米が誇る私立の名門大学ハーバードやイェールだよな、エレメンタリースクールでもアカデミッククラスにいやがったから、それなりにできるやつだとは思ってたけど…
考え込んでるうちに、ミス・ブリーに立ち聞きを見つかっちまった。
「あなた、確かクリスのシスターよね?」
「あっはい…」
「まったく、どうなってるの?」
ミス・ブリーはクリスの立ち去った方を、しきりに気にかけながら先を続けた。
「いまのままでも、ミドルスクールを卒業後、スキップして大学に進学する学力は十分に持っているけれど、それだと体格差もあるから人間関係もうまく築けないかもしれないでしょう。それで優秀な子を受け入れるハイスクールを、何校かピックアップしてあげたのよ。その中のハイスクールに通ったらどうかしらって進言して、先週まではあの子もそのつもりだったのよ、それが突然サンアントニオのハイスクールに入学する、大学へはいかない、なんて言い出すのよ!」
唖然とした……
「あなたのお父さまが進学に反対なさってるの?失礼だけど彼個人の資産管理はお父さまがなさってるのよねぇ…」
ミス・ブリーの態度は、露骨におれ達親子が、クリスの財産までがめてるんじゃないのかって、不信の眼差しでいっぱいだ。
クリスがこの女にムカついた気持ちがよく分かったので、おれもこの場から立ち去ることにした。
それよりも、クリスの進学問題だ。
『先週まではあの子もそのつもりだったのよ…』
先週までは…
『ぼくも手伝うよ!』
『ぼくの夢?……いや、そんなの考えたこともなかったから。だから、いま決めたんだ。ぼくの夢はJPの夢だ!!』
あんにゃろぉ…
その瞬間、おれの頭の中でパズルのピースがうまくはまった気がした。
思えば、あの日以来、クリスは不自然なほど明るかった。
痛々しいくらいで、逆に息がつまった。
クリスの神経がポッキリと折れたその先には、どんな魔物が出でくるのかと、こわくて見ない振りをしてたんだ。
なあ、クリス、お前が無理してたらおれ達だって、辛くて悲しいんだよ。
授業を終えて、結局考えがまとまらないまま帰宅すると、クリスは一本前のスクールバスで帰ってきてたらしく、農作業用に着替えて、牧場に出る支度をしてたとこだった。
「おかえりJP!ぼくの方が早かったね」
朗らかに笑みを浮かべるクリス。
このおれが無い頭を絞って、どうやって話を切り出していこうか悩んでる時に、当の本人が内面はどうであれ、ヘラヘラ笑ってるのを見ると、無性にムカついてきた。
いいさ、ボーイ…そっちがその気なら、こっちだって出たとこ勝負だ!
「話があるんだ、リビングルームまできてくれ」
おれは返事も待たずに奴を置き去りにして、さっさと居間に向った。
キッチンから顔を出したルピータが陽気に出迎えてくる。
「JP、今日のディナーはチキンフライに、チリ・コン・カルネだよ!楽しみにしといで」
そう言い残すと、鼻歌まじりに自分の城に引っ込んでった。
リビングのソファーに腰を下ろすと、おとなしくついてきたクリスが、テーブルをはさんで向かいに置いてある、年代物の椅子を引っぱってきて、おれの斜め前に陣取った。
「話ってなに?」
テーブルに肘をついて、無邪気におれを見つめるクリス。
だが、おれはいまからお前の心の内を暴く。
「お前、進路のことで、おれに話しとくことがあるはずだろ?」
クリスはその瞬間あきらかに動揺したが、すぐに押し隠してシラをきった。
「何のこと?それより、もう仕事に行かなくちゃ…」
立ち上がって逃げようとしやがったので、おれはクリスの腕をつかんで、引き止めた。
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クラスを移動してる途中、談話スペースの奥の方で、カリキュラム・カウンセラーのミス・ブリーに捕まってるクリスを見かけてしまった。
「大学へ進学しないって、本気で言ってるの?あなたの成績なら、アイビーリーグへの入学だって可能だわ!」
その瞬間、おれには見せたことのない歪んだ笑みを貼りつけて、クリスは吐き捨てるように言った。
「それこそ、ぼくには無縁ですね。私立大学に通えるような余裕はありませんから」
「あなたの家庭の事情は、おおむね前任のフォックス先生から伺っているわ。でもこのままレベルの低い教育を受け続けていても、あなたのためにはならないわよ。私はそれをとても残念に思うの。とにかくいまのご家族と、あなたの将来のことについて話し合ってみることを勧めるわ、もし、あなたから話しづらいのなら私の方から…」
「余計な真似はしないでください!!」
びっくりした…
クリスが声を荒げて怒鳴るなんてこと、はじめてのことだったから。
それきりクリスは、ミス・ブリーの前から立ち去ってしまった。
それ以上に驚いたこと…
アイビーリーグといやぁ、北米が誇る私立の名門大学ハーバードやイェールだよな、エレメンタリースクールでもアカデミッククラスにいやがったから、それなりにできるやつだとは思ってたけど…
考え込んでるうちに、ミス・ブリーに立ち聞きを見つかっちまった。
「あなた、確かクリスのシスターよね?」
「あっはい…」
「まったく、どうなってるの?」
ミス・ブリーはクリスの立ち去った方を、しきりに気にかけながら先を続けた。
「いまのままでも、ミドルスクールを卒業後、スキップして大学に進学する学力は十分に持っているけれど、それだと体格差もあるから人間関係もうまく築けないかもしれないでしょう。それで優秀な子を受け入れるハイスクールを、何校かピックアップしてあげたのよ。その中のハイスクールに通ったらどうかしらって進言して、先週まではあの子もそのつもりだったのよ、それが突然サンアントニオのハイスクールに入学する、大学へはいかない、なんて言い出すのよ!」
唖然とした……
「あなたのお父さまが進学に反対なさってるの?失礼だけど彼個人の資産管理はお父さまがなさってるのよねぇ…」
ミス・ブリーの態度は、露骨におれ達親子が、クリスの財産までがめてるんじゃないのかって、不信の眼差しでいっぱいだ。
クリスがこの女にムカついた気持ちがよく分かったので、おれもこの場から立ち去ることにした。
それよりも、クリスの進学問題だ。
『先週まではあの子もそのつもりだったのよ…』
先週までは…
『ぼくも手伝うよ!』
『ぼくの夢?……いや、そんなの考えたこともなかったから。だから、いま決めたんだ。ぼくの夢はJPの夢だ!!』
あんにゃろぉ…
その瞬間、おれの頭の中でパズルのピースがうまくはまった気がした。
思えば、あの日以来、クリスは不自然なほど明るかった。
痛々しいくらいで、逆に息がつまった。
クリスの神経がポッキリと折れたその先には、どんな魔物が出でくるのかと、こわくて見ない振りをしてたんだ。
なあ、クリス、お前が無理してたらおれ達だって、辛くて悲しいんだよ。
授業を終えて、結局考えがまとまらないまま帰宅すると、クリスは一本前のスクールバスで帰ってきてたらしく、農作業用に着替えて、牧場に出る支度をしてたとこだった。
「おかえりJP!ぼくの方が早かったね」
朗らかに笑みを浮かべるクリス。
このおれが無い頭を絞って、どうやって話を切り出していこうか悩んでる時に、当の本人が内面はどうであれ、ヘラヘラ笑ってるのを見ると、無性にムカついてきた。
いいさ、ボーイ…そっちがその気なら、こっちだって出たとこ勝負だ!
「話があるんだ、リビングルームまできてくれ」
おれは返事も待たずに奴を置き去りにして、さっさと居間に向った。
キッチンから顔を出したルピータが陽気に出迎えてくる。
「JP、今日のディナーはチキンフライに、チリ・コン・カルネだよ!楽しみにしといで」
そう言い残すと、鼻歌まじりに自分の城に引っ込んでった。
リビングのソファーに腰を下ろすと、おとなしくついてきたクリスが、テーブルをはさんで向かいに置いてある、年代物の椅子を引っぱってきて、おれの斜め前に陣取った。
「話ってなに?」
テーブルに肘をついて、無邪気におれを見つめるクリス。
だが、おれはいまからお前の心の内を暴く。
「お前、進路のことで、おれに話しとくことがあるはずだろ?」
クリスはその瞬間あきらかに動揺したが、すぐに押し隠してシラをきった。
「何のこと?それより、もう仕事に行かなくちゃ…」
立ち上がって逃げようとしやがったので、おれはクリスの腕をつかんで、引き止めた。
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2008.02.06 (Wed)
ファミリー 5
スクールバスで下校して、母屋の玄関ホールを潜ると、併設してある事務所の方から深刻な話し声が聞こえてきた。
クリスと顔を見交わせると、気になったおれはこっそりと中の様子を覗いてみることにした。
「だめだよ、JP!…」
クリスはおれのTシャツを引っ張って止めようとするが、知ったことではない。
忍び足でドアの隙間から様子を伺うと、なんのことはない、親父と牧童頭のジムが仏頂面で話し込んでいた。
小難しい話に用はないので踵を返すと、叔父さんの呆れたような声が聞こえてくる。
「兄さん、あんな荒地を開墾する気かよ」
「土質はそんなに悪くないから、十分育つと思うんだがな」
「スプリンクラーをひかなきゃならんでしょう。初期費用がかかりますよ。元が取れるかどうかもわからんのに、そこまでする必要があるとは思えんね」
「我々南部の男は如何なる時もフロンティア・スピリットを忘れちゃいけない。失敗を恐れずにチャレンジした者にのみ、栄光が与えられるというものだよ」
「……栄光はひとまずおいといて、ぶっちゃけた話、うちの財政状態はそんなに切羽つまった状況なんですか?」
「…ううむ」
「なるほど、わかりました。スプリンクラーは自分たちで設置すれば人件費の節約になるでしょう」
ちょっと、まて!
おれは事務所に飛び込んだ。
「おい!あんた達、何の話してんだよっ!」
おれの後ろにはクリスが、すでにおれよりでかい図体のくせして、昔みたいに人の影に隠れて、心配そうに伺ってやがったが。
おれ達の顔を交互に見ながら、何でもなさそうに親父は言った。
「来期から余剰地を使って、バイオ燃料用のコーンを作ろうと思ってるんだよ」
「…農家のまねごとして、うちもエコ燃料を作るって訳だ!バイオ燃料用のコーンばかり作るから、貧しい奴らは食用のコーンが値上がりして食えないって問題になってるこの時期にねっ!」
親父は片方の眉だけ器用に上げると厳かに言い放った。
「ご立派な意見があるようだが、ジェーン・パトリシア…まずは自分たちが飢えない心配をしなさい」
ううっ…ここしばらく見てなかった親父の迫力に、おれはうろたえてしまう…
けして頭ごなしに怒鳴るわけでもないのに、こう真に迫るというか…
「私にはこの牧場を続けていく使命と責任がある。アンダーソン家100年の重みだ。不況のあおりを受けて意に沿わないこともしなければならないが、私はこの牧場とおまえ達を守るためなら、誰に非難されようが何ら恥じるところはないね」
何も言い返すことなどできない。
親父の正論に、唇をかみしめてバカみたいにつっ立ってることしかできなかった。
クリスがおれの肩に手を置いて、心配そうに覗き込んでいる。
ばかやろー!ほっとけよっ!なさけねぇー…
いらない世話を焼いた気の毒なクリスを振り切って、おれは事務所を飛び出した。
後を追ってくる気配がしたが、知ったこっちゃねぇ、ほっとけよ!
しばらく走って気がついたら、主のようにそびえ立ってるヒッコリーの木に抱きしめてもらってた。
巨木の心音が聞こえて、とても落ち着く。
収穫の時期を迎えるとラグビーボールに似た実を落とす。クルミ科の木の実でアメリカ人、ことにテキサス人にはなじみが深い豆だ。ルピータにはよくピーカン・パイを焼いてもらってた。
…わかってる。
恥じ入らなきゃならないのはおれの方だ。
うちの牧場には様々な人種の牧童たちがいるけど、中でも国境に近いせいか、メキシカンやチカーノがやっぱり多い。
彼らと接するうちにスパングリッシュやスペイン語が少し話せるようになったわけだ。
当然、スクールでもチカーノの友達が多いし、移民たちはおしなべて低所得者が多い。
親父に反発したのは、友達に「お前も貧乏人を省みない利益優先の白人」って、軽蔑の目で見られるのがこわかったから…
クリスがやっとおれを探し当てて、傍らで静かに見守っていた。
ーはあ
強い心が欲しいな。ちょっとのことで動揺したりしない、強い信念を持った心が欲しい。
「強くなりたい」
口に出して言ってみた。それをクリスが黙って聞いていた。
「おれの夢はさ、アンダーソン牧場を引き継いで行くことなんだ。経営するのが難しくなって、今度こそ土地を売る羽目になるかもしれない。それでも、おれ、この牧場の仕事が好きだからさ」
そこで、ちょっと思いついた…
「お前の夢は?」
おれの質問にクリスはびっくりしたように褐色の目を見張った。そして何かを振り切るように答えた。
「ぼくも手伝うよ!」
はあ!?
「ずっとJPのそばにいて、牧場経営の手伝いをする!」
おれはちょっと考え込んだ…そして、この違和感の答えが出た。
「でもそれは、お前の夢じゃないだろ?」
「ぼくの夢?……いや、そんなの考えたこともなかったから。だから、いま決めたんだ。ぼくの夢はJPの夢だ!!」
何か釈然としないものを感じたんだが、この時のおれには、クリスの抱えてる懊悩に気付く余裕などなかった。
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クリスと顔を見交わせると、気になったおれはこっそりと中の様子を覗いてみることにした。
「だめだよ、JP!…」
クリスはおれのTシャツを引っ張って止めようとするが、知ったことではない。
忍び足でドアの隙間から様子を伺うと、なんのことはない、親父と牧童頭のジムが仏頂面で話し込んでいた。
小難しい話に用はないので踵を返すと、叔父さんの呆れたような声が聞こえてくる。
「兄さん、あんな荒地を開墾する気かよ」
「土質はそんなに悪くないから、十分育つと思うんだがな」
「スプリンクラーをひかなきゃならんでしょう。初期費用がかかりますよ。元が取れるかどうかもわからんのに、そこまでする必要があるとは思えんね」
「我々南部の男は如何なる時もフロンティア・スピリットを忘れちゃいけない。失敗を恐れずにチャレンジした者にのみ、栄光が与えられるというものだよ」
「……栄光はひとまずおいといて、ぶっちゃけた話、うちの財政状態はそんなに切羽つまった状況なんですか?」
「…ううむ」
「なるほど、わかりました。スプリンクラーは自分たちで設置すれば人件費の節約になるでしょう」
ちょっと、まて!
おれは事務所に飛び込んだ。
「おい!あんた達、何の話してんだよっ!」
おれの後ろにはクリスが、すでにおれよりでかい図体のくせして、昔みたいに人の影に隠れて、心配そうに伺ってやがったが。
おれ達の顔を交互に見ながら、何でもなさそうに親父は言った。
「来期から余剰地を使って、バイオ燃料用のコーンを作ろうと思ってるんだよ」
「…農家のまねごとして、うちもエコ燃料を作るって訳だ!バイオ燃料用のコーンばかり作るから、貧しい奴らは食用のコーンが値上がりして食えないって問題になってるこの時期にねっ!」
親父は片方の眉だけ器用に上げると厳かに言い放った。
「ご立派な意見があるようだが、ジェーン・パトリシア…まずは自分たちが飢えない心配をしなさい」
ううっ…ここしばらく見てなかった親父の迫力に、おれはうろたえてしまう…
けして頭ごなしに怒鳴るわけでもないのに、こう真に迫るというか…
「私にはこの牧場を続けていく使命と責任がある。アンダーソン家100年の重みだ。不況のあおりを受けて意に沿わないこともしなければならないが、私はこの牧場とおまえ達を守るためなら、誰に非難されようが何ら恥じるところはないね」
何も言い返すことなどできない。
親父の正論に、唇をかみしめてバカみたいにつっ立ってることしかできなかった。
クリスがおれの肩に手を置いて、心配そうに覗き込んでいる。
ばかやろー!ほっとけよっ!なさけねぇー…
いらない世話を焼いた気の毒なクリスを振り切って、おれは事務所を飛び出した。
後を追ってくる気配がしたが、知ったこっちゃねぇ、ほっとけよ!
しばらく走って気がついたら、主のようにそびえ立ってるヒッコリーの木に抱きしめてもらってた。
巨木の心音が聞こえて、とても落ち着く。
収穫の時期を迎えるとラグビーボールに似た実を落とす。クルミ科の木の実でアメリカ人、ことにテキサス人にはなじみが深い豆だ。ルピータにはよくピーカン・パイを焼いてもらってた。
…わかってる。
恥じ入らなきゃならないのはおれの方だ。
うちの牧場には様々な人種の牧童たちがいるけど、中でも国境に近いせいか、メキシカンやチカーノがやっぱり多い。
彼らと接するうちにスパングリッシュやスペイン語が少し話せるようになったわけだ。
当然、スクールでもチカーノの友達が多いし、移民たちはおしなべて低所得者が多い。
親父に反発したのは、友達に「お前も貧乏人を省みない利益優先の白人」って、軽蔑の目で見られるのがこわかったから…
クリスがやっとおれを探し当てて、傍らで静かに見守っていた。
ーはあ
強い心が欲しいな。ちょっとのことで動揺したりしない、強い信念を持った心が欲しい。
「強くなりたい」
口に出して言ってみた。それをクリスが黙って聞いていた。
「おれの夢はさ、アンダーソン牧場を引き継いで行くことなんだ。経営するのが難しくなって、今度こそ土地を売る羽目になるかもしれない。それでも、おれ、この牧場の仕事が好きだからさ」
そこで、ちょっと思いついた…
「お前の夢は?」
おれの質問にクリスはびっくりしたように褐色の目を見張った。そして何かを振り切るように答えた。
「ぼくも手伝うよ!」
はあ!?
「ずっとJPのそばにいて、牧場経営の手伝いをする!」
おれはちょっと考え込んだ…そして、この違和感の答えが出た。
「でもそれは、お前の夢じゃないだろ?」
「ぼくの夢?……いや、そんなの考えたこともなかったから。だから、いま決めたんだ。ぼくの夢はJPの夢だ!!」
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2008.02.04 (Mon)
ファミリー 4
夜明け過ぎにメディナリバーで魚釣りをすることにした。
クローフィッシュ用の仕掛けをしてから、釣竿で魚が釣れるのを待つ。
「おい!クリスかかったぞっ!引けっ」
「おっ、重いよっ!JPどうしよう…」
悪戦苦闘しながら、何とかおれ達はキャットフィッシュと、小魚を数匹釣り上げることができた。
「ルピータにフライにしてもらおうぜ!」
「うん!」
風が吹いたんでうっとおしい髪を耳に引っ掛けたら、クリスの興味を引いたらしい。
「JP、ピアスしてんの?」
「んー?ああ、母さんの形見かな…」
「亡くなったの、JPのママって…」
まずいことを聞いてしまったという顔をしたので、訂正する必要を感じた。
「いや、生きてるよ」
「っだって、形見って…!」
「全然会ってねーモン。思い出の品には違いねぇしさ。3年前にゲストランチでやって来てた、イタリアの伊達男にイカれちまって、一緒に逃げちまったから」
あんぐりと口を開けてるまぬけヅラ。やだねぇ、小さいことにこだわる都会育ちは…
だが、気を取り直して話題を変えたクリスの一言は、おれを大いに傷つけた…
「そんなのつけてると、JPって女の子みたいだね」
「………おい、…おれ女だぜ」
13才になって、おれ達もミドルスクールの最終学年に進級し、クリスの姓がアンダーソンになってから三年が過ぎた。
去年の暮れに、老犬だったプーリーのガウチョが、クリスの腕の中で安らかに息を引き取った。衰えた足でクリスの後ばかり、追っかけてたガウチョ。しばらくはクリスも寂しそうだったが…。
ガウチョの死を乗り越え、クリスは最近良く笑うようになってきた。おれもそんなクリスを見るのが好きだ。
でもちょっとかわいくないところもある。
だんだん図太くなってきたようで、最近おれに大して失礼な態度を取るようになってきたんだ。
あまりにもムカついた時は蹴りを入れてやるけど、てんで堪えた様子がない。
この3年で身長も抜かされたし、青白くてひょろひょろだったのに、過酷な牧場仕事を手伝ってるせいか、逞しい西部の男になりつつある。
「やっぱり間違いは正さなきゃいけないと思うんだ。ずっと引っかかってたんだけど、訛ってるのはJPの方だよ」
「………!」
まるでおれのこと頭の悪い不憫な子みたいに、噛んで含めるような物言いをする、こいつの態度が更にムカつくんだ!
殴りかかろうとするのを、親父に止められるのはいつものことだった。
こないだだって鞍無しの調教で遠出して帰ってきたら、埃まみれになったおれの姿をしみじみと眺めた後、クリスは自愛に満ちた笑顔で言ったもんだ。
「テキサス女はブスで有名ってよく言うけど、JPは輝くブロンドの巻き毛と、ターコイズブルーの美しい瞳を持ってる。大丈夫!これで女の子らしいドレスを着て黙ってたら、かなりの美人だとぼくは思うよ」
もちろんこの言い草はおれの逆鱗に触れた。
はっきり言ってクリスは皮肉や意地悪で言ってるわけじゃない。
こいつのつもりとしては、親切でおれに助言してやってるつもりなのだ…が!!
だからこそ始末が悪いとも言える。
この!大丈夫ってなんだよっ!つか、おれのスタイルについて、おれがいつお前に助言を求めたよ!?黙ってたら…だとぉ〜!おれにしゃべるなって言ってるのかよ、デリカシーのない、天然ヤローがっ!
タコ殴りにしてやったが、それでも腹の虫が治まらない。
最近はみんな力仕事はクリスの方に任せてる。
おれだってもう一人でトラックの運転くらいできるのに、力仕事を言いつけられるのは決まってクリスの方だ。
おもしろくないけど、仕方ないとも思ってる。
おれは女でクリスは男だ。構造の違いがある。きっともう、力でもかなわないのだろう。
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クローフィッシュ用の仕掛けをしてから、釣竿で魚が釣れるのを待つ。
「おい!クリスかかったぞっ!引けっ」
「おっ、重いよっ!JPどうしよう…」
悪戦苦闘しながら、何とかおれ達はキャットフィッシュと、小魚を数匹釣り上げることができた。
「ルピータにフライにしてもらおうぜ!」
「うん!」
風が吹いたんでうっとおしい髪を耳に引っ掛けたら、クリスの興味を引いたらしい。
「JP、ピアスしてんの?」
「んー?ああ、母さんの形見かな…」
「亡くなったの、JPのママって…」
まずいことを聞いてしまったという顔をしたので、訂正する必要を感じた。
「いや、生きてるよ」
「っだって、形見って…!」
「全然会ってねーモン。思い出の品には違いねぇしさ。3年前にゲストランチでやって来てた、イタリアの伊達男にイカれちまって、一緒に逃げちまったから」
あんぐりと口を開けてるまぬけヅラ。やだねぇ、小さいことにこだわる都会育ちは…
だが、気を取り直して話題を変えたクリスの一言は、おれを大いに傷つけた…
「そんなのつけてると、JPって女の子みたいだね」
「………おい、…おれ女だぜ」
13才になって、おれ達もミドルスクールの最終学年に進級し、クリスの姓がアンダーソンになってから三年が過ぎた。
去年の暮れに、老犬だったプーリーのガウチョが、クリスの腕の中で安らかに息を引き取った。衰えた足でクリスの後ばかり、追っかけてたガウチョ。しばらくはクリスも寂しそうだったが…。
ガウチョの死を乗り越え、クリスは最近良く笑うようになってきた。おれもそんなクリスを見るのが好きだ。
でもちょっとかわいくないところもある。
だんだん図太くなってきたようで、最近おれに大して失礼な態度を取るようになってきたんだ。
あまりにもムカついた時は蹴りを入れてやるけど、てんで堪えた様子がない。
この3年で身長も抜かされたし、青白くてひょろひょろだったのに、過酷な牧場仕事を手伝ってるせいか、逞しい西部の男になりつつある。
「やっぱり間違いは正さなきゃいけないと思うんだ。ずっと引っかかってたんだけど、訛ってるのはJPの方だよ」
「………!」
まるでおれのこと頭の悪い不憫な子みたいに、噛んで含めるような物言いをする、こいつの態度が更にムカつくんだ!
殴りかかろうとするのを、親父に止められるのはいつものことだった。
こないだだって鞍無しの調教で遠出して帰ってきたら、埃まみれになったおれの姿をしみじみと眺めた後、クリスは自愛に満ちた笑顔で言ったもんだ。
「テキサス女はブスで有名ってよく言うけど、JPは輝くブロンドの巻き毛と、ターコイズブルーの美しい瞳を持ってる。大丈夫!これで女の子らしいドレスを着て黙ってたら、かなりの美人だとぼくは思うよ」
もちろんこの言い草はおれの逆鱗に触れた。
はっきり言ってクリスは皮肉や意地悪で言ってるわけじゃない。
こいつのつもりとしては、親切でおれに助言してやってるつもりなのだ…が!!
だからこそ始末が悪いとも言える。
この!大丈夫ってなんだよっ!つか、おれのスタイルについて、おれがいつお前に助言を求めたよ!?黙ってたら…だとぉ〜!おれにしゃべるなって言ってるのかよ、デリカシーのない、天然ヤローがっ!
タコ殴りにしてやったが、それでも腹の虫が治まらない。
最近はみんな力仕事はクリスの方に任せてる。
おれだってもう一人でトラックの運転くらいできるのに、力仕事を言いつけられるのは決まってクリスの方だ。
おもしろくないけど、仕方ないとも思ってる。
おれは女でクリスは男だ。構造の違いがある。きっともう、力でもかなわないのだろう。
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2008.02.04 (Mon)
ファミリー 3
鉄条網の修理は、革製のグローブをはめて慎重にやらなければ、ヘタをすると怪我をする恐れがある。
古くたわんで用を成さなくなったワイヤー部分を、ぺンチで切って新しいものに付け替える。
炎天下のもと、単調で気の遠くなる作業だ。
「おい、さぼるな!ちゃんとワイヤーを押さえてろよ」
おれは、顔を上げてクリスを注意したが、奴は別のことに気をとられていたらしい。ある一点を見つめている。
「…大変だ、JP、モップのお化けがこっちに向かってくる!」
クリスの視線の先を追うと、確かにそう見えなくはない、灰色の物体が徐々にこちらに近づいて来ていたが…
「おいで、ガウチョ!」
おれが呼びかけると、灰色の物体は小走りに駆け寄ってくる。
「こいつはプーリーのガウチョで、親父の愛犬だ」
「…犬」
そばにやってくると、束になった被毛の間からピンク色の舌を出して、ハッハッと、荒い息を吐いている。そして新参者の臭いをひとしきり確かめると、おれに向かって尻尾を振った。
『やあ、JP、今日も暑くてたまらんね』口が利けてたら、多分そう言ってたところだろう。
「ガウチョはもう、年寄りなんだ」
ガウチョの頭をなでてやりながら、そうクリスに教えてやった。
「…ねえ、JP、このドレッド・ヘアって、めちゃくちゃ暑そうだよ?」
確かにクリスの云う通りだが、親父に言わせると、プーリーとは元々被毛を縄状に伸ばした犬種なのだそうだ。
だが、テキサスの気候とは恐ろしくそぐわないし、クリスに指摘されて、改めて哀れに思えてきた。
そして、おれ達は顔を見合わせて、暗黙の了解を取った。
ピックアップの運転席では、窓を全開にして、居眠りしてる親父の姿を確認してから、荷台の奥に積みっぱなしになってた、羊用のバリカンをこっそり取り出すと『ガウチョ救出作戦』の実行に取り掛かった。
ガウチョは二人の人間に取り囲まれて、何をされるのかと不審そうに見つめたが、すかさずおれが前足を固定すると、大人しくされるがままになった。
その間に慣れない手つきで、クリスはバリカンを操り、ガウチョの毛を刈っていった。
羊のように丸裸にされてしまったガウチョ。もはやプーリーの面影はどこにもない…
自由の身になってヨロヨロと立ち上がると、ブルンと一振りして、体についた毛を吹き飛ばす。
初めて南部特有の乾いた風を感じたガウチョは、尻尾を振ってクリスに擦り寄ってった。
『こいつぁ、いいあんばいだ!』とでも、口が利けたら言いたい所だろう。
あとで親父にどやされたが、クリスがネットで調べて、プーリーの原産国は中央ヨーロッパのハンガリーで、彼の地は年間平均気温が10度前後だと指摘すると、ぐうの音もでなかった。
以来、ガウチョはクリスに毎年毛を刈ってもらうことになり、ほとんどクリスの犬になっちまった。
クリスとおれは親父の運転するフィードトラックの助手席に乗り込んで、給餌の手伝いをすることになった。
放牧地は広い範囲に別れている。餌の乾草はブロック状に梱包されていて、一つの重さが約30キロときてるからとても子供一人では持ち上げられない。おれたちは協力して一つのブロックの積み下ろし作業を手伝うことになる。
トラックを徐行させて散らばってる牛を呼び寄せて、荷台の上から乾草をばら撒いていくさまは、一見豪快だがけしていい加減なわけではない。
ふと横を見るとクリスは、まだ積み残ってる乾草のブロックにもたれて、舌を出してへたばっている。そのなさけない様子に、おれは笑い出してしまう。
クリスがやって来てすぐの頃、厩舎の掃除をすることになったが、都会育ちの奴が一言漏らしたセリフにおれはキレちまった。
「臭い…」
クリスは小屋に入ったとたんに鼻を押さえて言いやがった。
おれはギロリと奴をにらむと、薄ら悪い笑みを作って言ってやった。
「臭くなくなるまじないをしてやるよ、目つぶりな」
言いながら、ボケットの中を探り、目当てのものを取り出すと、ばかみたいに信じやすい性格の奴の鼻をそれで挟んでやった。
ぱちん!という音がした瞬間「ギャアッ!!」と鼻をおさえて蹲るクリスの惨めな姿。
はずれて落ちた洗濯ばさみを横目にザマミロと思ったね。
涙ぐんで非難がましい目を向けるクリスに、ふん!とそっぽを向いて作業をし始めながら、思うことを言ってやった。
「こいつらのおかげでおれ達は食っていけてるんだってことを忘れるなよ」
ヒヒーンとそれに呼応するように愛馬のエリーがいなないた。
『そうよ、臭いなんて失礼しちゃうわ。あんたなんかあたしの背中に乗っけてあげないわよ』
口がきけたら、多分そう言ってるはずだ。
その隣の囲いの枠から顔を出してる、未来のクリスの愛馬となるエストレージャは、ものめずらしげに新参者を眺めていたが。
ぶすくれて黙々と作業してるおれに、クリスはためらいがちに声をかけてきた。
「ごめん、手伝うよ」
「うん、サンキュー」
クリスを許せたのは奴の目が、本心から後悔してたように見えたから。
まあ、あの頃に比べて、たとえへたばってても、弱音をはかないだけましってもんだ。
子供だから牧場仕事をかなり免除されてるってのもあるけど、屈強な大人でさえ逃げ出すこともある。
研修生のヤスは一度脱走して、牧童頭のジムが見つけなきゃ、あやうく砂漠で干乾びてたとこだ。
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古くたわんで用を成さなくなったワイヤー部分を、ぺンチで切って新しいものに付け替える。
炎天下のもと、単調で気の遠くなる作業だ。
「おい、さぼるな!ちゃんとワイヤーを押さえてろよ」
おれは、顔を上げてクリスを注意したが、奴は別のことに気をとられていたらしい。ある一点を見つめている。
「…大変だ、JP、モップのお化けがこっちに向かってくる!」
クリスの視線の先を追うと、確かにそう見えなくはない、灰色の物体が徐々にこちらに近づいて来ていたが…
「おいで、ガウチョ!」
おれが呼びかけると、灰色の物体は小走りに駆け寄ってくる。
「こいつはプーリーのガウチョで、親父の愛犬だ」
「…犬」
そばにやってくると、束になった被毛の間からピンク色の舌を出して、ハッハッと、荒い息を吐いている。そして新参者の臭いをひとしきり確かめると、おれに向かって尻尾を振った。
『やあ、JP、今日も暑くてたまらんね』口が利けてたら、多分そう言ってたところだろう。
「ガウチョはもう、年寄りなんだ」
ガウチョの頭をなでてやりながら、そうクリスに教えてやった。
「…ねえ、JP、このドレッド・ヘアって、めちゃくちゃ暑そうだよ?」
確かにクリスの云う通りだが、親父に言わせると、プーリーとは元々被毛を縄状に伸ばした犬種なのだそうだ。
だが、テキサスの気候とは恐ろしくそぐわないし、クリスに指摘されて、改めて哀れに思えてきた。
そして、おれ達は顔を見合わせて、暗黙の了解を取った。
ピックアップの運転席では、窓を全開にして、居眠りしてる親父の姿を確認してから、荷台の奥に積みっぱなしになってた、羊用のバリカンをこっそり取り出すと『ガウチョ救出作戦』の実行に取り掛かった。
ガウチョは二人の人間に取り囲まれて、何をされるのかと不審そうに見つめたが、すかさずおれが前足を固定すると、大人しくされるがままになった。
その間に慣れない手つきで、クリスはバリカンを操り、ガウチョの毛を刈っていった。
羊のように丸裸にされてしまったガウチョ。もはやプーリーの面影はどこにもない…
自由の身になってヨロヨロと立ち上がると、ブルンと一振りして、体についた毛を吹き飛ばす。
初めて南部特有の乾いた風を感じたガウチョは、尻尾を振ってクリスに擦り寄ってった。
『こいつぁ、いいあんばいだ!』とでも、口が利けたら言いたい所だろう。
あとで親父にどやされたが、クリスがネットで調べて、プーリーの原産国は中央ヨーロッパのハンガリーで、彼の地は年間平均気温が10度前後だと指摘すると、ぐうの音もでなかった。
以来、ガウチョはクリスに毎年毛を刈ってもらうことになり、ほとんどクリスの犬になっちまった。
クリスとおれは親父の運転するフィードトラックの助手席に乗り込んで、給餌の手伝いをすることになった。
放牧地は広い範囲に別れている。餌の乾草はブロック状に梱包されていて、一つの重さが約30キロときてるからとても子供一人では持ち上げられない。おれたちは協力して一つのブロックの積み下ろし作業を手伝うことになる。
トラックを徐行させて散らばってる牛を呼び寄せて、荷台の上から乾草をばら撒いていくさまは、一見豪快だがけしていい加減なわけではない。
ふと横を見るとクリスは、まだ積み残ってる乾草のブロックにもたれて、舌を出してへたばっている。そのなさけない様子に、おれは笑い出してしまう。
クリスがやって来てすぐの頃、厩舎の掃除をすることになったが、都会育ちの奴が一言漏らしたセリフにおれはキレちまった。
「臭い…」
クリスは小屋に入ったとたんに鼻を押さえて言いやがった。
おれはギロリと奴をにらむと、薄ら悪い笑みを作って言ってやった。
「臭くなくなるまじないをしてやるよ、目つぶりな」
言いながら、ボケットの中を探り、目当てのものを取り出すと、ばかみたいに信じやすい性格の奴の鼻をそれで挟んでやった。
ぱちん!という音がした瞬間「ギャアッ!!」と鼻をおさえて蹲るクリスの惨めな姿。
はずれて落ちた洗濯ばさみを横目にザマミロと思ったね。
涙ぐんで非難がましい目を向けるクリスに、ふん!とそっぽを向いて作業をし始めながら、思うことを言ってやった。
「こいつらのおかげでおれ達は食っていけてるんだってことを忘れるなよ」
ヒヒーンとそれに呼応するように愛馬のエリーがいなないた。
『そうよ、臭いなんて失礼しちゃうわ。あんたなんかあたしの背中に乗っけてあげないわよ』
口がきけたら、多分そう言ってるはずだ。
その隣の囲いの枠から顔を出してる、未来のクリスの愛馬となるエストレージャは、ものめずらしげに新参者を眺めていたが。
ぶすくれて黙々と作業してるおれに、クリスはためらいがちに声をかけてきた。
「ごめん、手伝うよ」
「うん、サンキュー」
クリスを許せたのは奴の目が、本心から後悔してたように見えたから。
まあ、あの頃に比べて、たとえへたばってても、弱音をはかないだけましってもんだ。
子供だから牧場仕事をかなり免除されてるってのもあるけど、屈強な大人でさえ逃げ出すこともある。
研修生のヤスは一度脱走して、牧童頭のジムが見つけなきゃ、あやうく砂漠で干乾びてたとこだ。
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2008.02.03 (Sun)
ファミリー 2
「ぼくも学校の授業が終わったら、JPと一緒に牧場の仕事を手伝います!」
クリスは殊勝にも、親父にそんなことを言ったらしい…
クリス用に新調したウエスタン・スタイルは、サンアントニオでよく見かけるアーバン・カウボーイみたいで腹を抱えて笑っちまった。何というか、テンガロン・ハットもウエスタン・ブーツも当たり前だけど新品だからまだこなれてねぇし、ワークシャツにリーバイスのジーンズは、おれなら断然ラングラーってとこだけどさ。ま、それでも格好だけは新米のカウボーイとして認めてやるさ。けど牧場の仕事は甘くはないんだぜ。気軽に手伝うなんて言うから親父は単純によろこんでやがるけど。
クリスとコミュニケーションをはからなきゃっ…てのは家長命令なんだが、マズイ問題があった。
奴の話す言葉が早口すぎて聞き取れないのだ。
「おい!もっとゆっくりしゃべれよ。ーったく、どこのド田舎から出てきたんだ?お前の訛りひどいぜ!」
「ごめん、ニューヨークに住んでたんだけど……」
Yankee go home.
おれは心の中で毒づいた。
ヤンキーとレッドネックの確執は深いのだ。
古くはは南北戦争にまで遡る。北部の連中は南部の人間をレッドネック、つまり炎天下のもと、農作業で首を赤く日焼けして働く田舎の貧乏人と、侮蔑を込めて呼んでいるし、南部の奴は表向きには北部の人間を性差別者だとして嫌ってるけど、実の所は自分たちを見下してるのが、単純にムカついてるってことなんだけどさ。
カウボーイっていうと颯爽と馬にまたがり、ロープを操り、牛を四方から囲い込む。
でも牧場経営はそんなかっこいいことばかりじゃないんだな。
牛を育てるための作業は何でも自分達でやる。
夏場は私有地の荒野に放牧されている牛だが、病気の牛馬は檻や牧場内の放牧地に入れて飼育する。
更に冬場は餌不足になるのでほとんどの牛馬がそれに加わる。
放牧されている牛馬を含めた、すべての給餌は毎日続く。
その他に古くなった柵の修理だの、厩舎や畜舎に餌桶の掃除、他の家畜の世話や牛の交配、子牛の焼印押し、雌牛の卵巣除去と雄牛の去勢、ラウンドアップに出荷。春から秋にかけては牧場内の放牧地に牧草を栽培して冬に備える。
クリスがおれの通ってるエレメンタリースクールに通うようになり、友達のアルやコーディ達に、クリスと同居してることが知られてしまって、いろいろ詮索されたけど、めんどくさいんで遠い親戚ってことにしておいた。
だって、来ちまったモンはしょうがないじゃないか。問題はこれからお互いを知り合って、どう生活していくかであって、それ以前のことはもうクリスの方で決めちまったんだよ。
それに普段は親父のこと粗雑に扱ってるおれだけど、親父はやっぱりアンダーソン家の家長でさ、家長の決めたことは従わなくちゃならない。いざと言う時の親父の判断は常に正しいと信じてるんだ。苦労の割には報われることの少ない牧場経営を続けてる親父を心底尊敬してるから。その親父が連れてきたクリスだから、おれはクリスを受け入れることにする。
何というか、おれの後ばかりついてくるクリスがかわいいし、弟がいたらこんな感じかな…なんて思ったりもして、ちょっとくすぐったいけど悪い気はしない。
とにかく、牧場にいて馬に乗れないことにはお話にならない。
ラウンドアップの手伝いくらいは早めに出来たほうが良い。
そういう訳で、ルピータの息子のパコが、クリスの乗馬の世話係に任命されて、おれも同行することになった。
パコは岩場のゴツゴとした急斜面でも、手綱を操り内腿で馬の脇腹を締めて、易々と主人の命令に従わせる技術を持っている。一見すると馬を手荒く扱ってるようにもみえるが、パコは馬の扱いを心得てて、パコの愛馬も主人を信頼してるから彼に従うのだ。
カウボーイの乗馬は、馬術教室のようなお上品な乗馬とは違って、馬とともに生きる、生活の一部となっているのだ。
ちなみにパコのブーツには美しい拍車がついているが、それを馬に使うことは滅多にない。
なぜ必要かといえば、美しい拍車を身に付けることはカウボーイにとっての一種のステイタスだからだ。
おれも愛馬のエリーに跨って、パコのように馬を自在に操ることが目標だが、今のところまだ足元にも及ばない。
一方クリスはと言えば、鐙に足を引っ掛けて、馬の背に跨るまでに散々苦労して、馬上の高さに震え上がり、パコが並走してクリスの乗馬にウォークの指示を出すと、もはや恐怖でいっぱいになってしまったようだ。ただ、並足で歩かせてるだけだってのに…
クリスの乗馬は鹿毛の古馬で、額に星形の白斑があるので、エストレージャと言う名前がついている。牡馬で馬体は大きめだが、頭が良く、落ち着きがあって大人しいから、初心者には比較的扱いやすい馬だ。
そのはずだが、エストレージャも退屈するほどの牛の歩みで、パコもうんざりしてトロットの命令を出すと、馬は従うべき人間を心得ているので、エストレージャは嬉々として速足になり、クリスは前後に揺られて手綱を握り締めて、早々に弱音を吐いた。
「わっ!だめ!もう、無理だよっ…!」
「オッケー、オッケー、今日のところはこんなもんだろ。初めてにしては上出来だ!なあに、お前さんは筋がいいから、すぐにJPくらいには乗りこなせるようになれるだろうぜ!」
パコは噛みタバコのヤニで、黄色く変色してしまった歯を全開にして、クリスのやる気を奮い立たせるために、心にもないお世辞を言ってやった。
クリスはその慰めに恥ずかしそうにしてたが、叱られて覚えるよりも、褒められて覚えた方が進歩が早いってことを良く心得ている、パコは良い教師なのだ。
何とも無様な乗馬教室だったが、都会っ子ってのはそんなもんだろうから、このさき乗馬が好きになってくれるなら、おのずと乗馬技術も身についていくはずだ。
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クリスは殊勝にも、親父にそんなことを言ったらしい…
クリス用に新調したウエスタン・スタイルは、サンアントニオでよく見かけるアーバン・カウボーイみたいで腹を抱えて笑っちまった。何というか、テンガロン・ハットもウエスタン・ブーツも当たり前だけど新品だからまだこなれてねぇし、ワークシャツにリーバイスのジーンズは、おれなら断然ラングラーってとこだけどさ。ま、それでも格好だけは新米のカウボーイとして認めてやるさ。けど牧場の仕事は甘くはないんだぜ。気軽に手伝うなんて言うから親父は単純によろこんでやがるけど。
クリスとコミュニケーションをはからなきゃっ…てのは家長命令なんだが、マズイ問題があった。
奴の話す言葉が早口すぎて聞き取れないのだ。
「おい!もっとゆっくりしゃべれよ。ーったく、どこのド田舎から出てきたんだ?お前の訛りひどいぜ!」
「ごめん、ニューヨークに住んでたんだけど……」
Yankee go home.
おれは心の中で毒づいた。
ヤンキーとレッドネックの確執は深いのだ。
古くはは南北戦争にまで遡る。北部の連中は南部の人間をレッドネック、つまり炎天下のもと、農作業で首を赤く日焼けして働く田舎の貧乏人と、侮蔑を込めて呼んでいるし、南部の奴は表向きには北部の人間を性差別者だとして嫌ってるけど、実の所は自分たちを見下してるのが、単純にムカついてるってことなんだけどさ。
カウボーイっていうと颯爽と馬にまたがり、ロープを操り、牛を四方から囲い込む。
でも牧場経営はそんなかっこいいことばかりじゃないんだな。
牛を育てるための作業は何でも自分達でやる。
夏場は私有地の荒野に放牧されている牛だが、病気の牛馬は檻や牧場内の放牧地に入れて飼育する。
更に冬場は餌不足になるのでほとんどの牛馬がそれに加わる。
放牧されている牛馬を含めた、すべての給餌は毎日続く。
その他に古くなった柵の修理だの、厩舎や畜舎に餌桶の掃除、他の家畜の世話や牛の交配、子牛の焼印押し、雌牛の卵巣除去と雄牛の去勢、ラウンドアップに出荷。春から秋にかけては牧場内の放牧地に牧草を栽培して冬に備える。
クリスがおれの通ってるエレメンタリースクールに通うようになり、友達のアルやコーディ達に、クリスと同居してることが知られてしまって、いろいろ詮索されたけど、めんどくさいんで遠い親戚ってことにしておいた。
だって、来ちまったモンはしょうがないじゃないか。問題はこれからお互いを知り合って、どう生活していくかであって、それ以前のことはもうクリスの方で決めちまったんだよ。
それに普段は親父のこと粗雑に扱ってるおれだけど、親父はやっぱりアンダーソン家の家長でさ、家長の決めたことは従わなくちゃならない。いざと言う時の親父の判断は常に正しいと信じてるんだ。苦労の割には報われることの少ない牧場経営を続けてる親父を心底尊敬してるから。その親父が連れてきたクリスだから、おれはクリスを受け入れることにする。
何というか、おれの後ばかりついてくるクリスがかわいいし、弟がいたらこんな感じかな…なんて思ったりもして、ちょっとくすぐったいけど悪い気はしない。
とにかく、牧場にいて馬に乗れないことにはお話にならない。
ラウンドアップの手伝いくらいは早めに出来たほうが良い。
そういう訳で、ルピータの息子のパコが、クリスの乗馬の世話係に任命されて、おれも同行することになった。
パコは岩場のゴツゴとした急斜面でも、手綱を操り内腿で馬の脇腹を締めて、易々と主人の命令に従わせる技術を持っている。一見すると馬を手荒く扱ってるようにもみえるが、パコは馬の扱いを心得てて、パコの愛馬も主人を信頼してるから彼に従うのだ。
カウボーイの乗馬は、馬術教室のようなお上品な乗馬とは違って、馬とともに生きる、生活の一部となっているのだ。
ちなみにパコのブーツには美しい拍車がついているが、それを馬に使うことは滅多にない。
なぜ必要かといえば、美しい拍車を身に付けることはカウボーイにとっての一種のステイタスだからだ。
おれも愛馬のエリーに跨って、パコのように馬を自在に操ることが目標だが、今のところまだ足元にも及ばない。
一方クリスはと言えば、鐙に足を引っ掛けて、馬の背に跨るまでに散々苦労して、馬上の高さに震え上がり、パコが並走してクリスの乗馬にウォークの指示を出すと、もはや恐怖でいっぱいになってしまったようだ。ただ、並足で歩かせてるだけだってのに…
クリスの乗馬は鹿毛の古馬で、額に星形の白斑があるので、エストレージャと言う名前がついている。牡馬で馬体は大きめだが、頭が良く、落ち着きがあって大人しいから、初心者には比較的扱いやすい馬だ。
そのはずだが、エストレージャも退屈するほどの牛の歩みで、パコもうんざりしてトロットの命令を出すと、馬は従うべき人間を心得ているので、エストレージャは嬉々として速足になり、クリスは前後に揺られて手綱を握り締めて、早々に弱音を吐いた。
「わっ!だめ!もう、無理だよっ…!」
「オッケー、オッケー、今日のところはこんなもんだろ。初めてにしては上出来だ!なあに、お前さんは筋がいいから、すぐにJPくらいには乗りこなせるようになれるだろうぜ!」
パコは噛みタバコのヤニで、黄色く変色してしまった歯を全開にして、クリスのやる気を奮い立たせるために、心にもないお世辞を言ってやった。
クリスはその慰めに恥ずかしそうにしてたが、叱られて覚えるよりも、褒められて覚えた方が進歩が早いってことを良く心得ている、パコは良い教師なのだ。
何とも無様な乗馬教室だったが、都会っ子ってのはそんなもんだろうから、このさき乗馬が好きになってくれるなら、おのずと乗馬技術も身についていくはずだ。
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2008.02.03 (Sun)
ファミリー 1
テキサス州西部サンアントニオから車で約一時間ほどの田舎町バンデラ。
そこに広大な敷地を有するアンダーソン牧場がある。
深夜、親父の運転するおんぼろピックアップのエンジン音が聞こえた。
おれは部屋から飛び出して、玄関ホールまで一気に駆け降りて出迎えた。
「残念、親父っ、見逃したな!きのうの朝エリーの子供生まれちまったぜ。すっげえかわいい栗毛の牝馬で…!」
おれは最後まで言い終えることができなかった。
何しろ、親父の後ろに隠れるようにして、心配そうにおれを覗き込んでくる、ダークヘアの白人の子供が、そこにつっ立てたからだ。
気弱そうな生っちろいボーイ…それがおれから見た、クリスの第一印象だった。
親父がそのガキの頭に手を置くと、決然と言い放った。
「今日からアンダーソン家の新しい息子になったクリスだ」
一瞬、おれは親父の有無を言わせない、断定口調に気圧されてしまった。
「二人とも同じ年だが、クリスは慣れない牧場暮らしで大変だろうから、お前がよく面倒をみてやってくれ」
心の余裕ができたところで、そいつを観察してみると、いままでずっと泣きはらしました…ってわかる充血した目をしてた。
真っ赤な目でおれのことオドオドと見てるので、ちょっとたまらなくなってしまった。
どうしてそいつが泣いてたのかわかんねぇし、詮索して聞く気もなかった。
でも、おれまで泣きそうになってきそうだった。
だから、おれはとっておきのスマイルを貼り付けて自己紹介した。
「おれ、JPってんだ。よろしくな!」
「………」
クリスは親父の陰に隠れて更に硬直して縮こまったが、かまわずおれは引きずり寄せてハグした。
おれ達が出会ったのはまだ10才の頃だった。
次の日ルピータに紹介すると、いつになく険しい顔をして、クリスを上から下まで眺め回した。
そして、でっぷりと太った腰に手を当てながら言い放つ。
「あんれまあ!生っちろいひょろひょろのぼんずだねぇ!かわいそうに、ろくなもん食ってなかったんだろう。まってな、いまルピータ母さん特製のトルティーヤと牛肉の黒ビールシチューを用意してやるからね」
クリスは期せずしてルピータの料理魂に火をつけたようだ。
いかにも重そうな体をどたどたと揺すりながらキッチンに向かうルピータをクリスと一緒に見送りながら、おれは意地悪くささやいてやった。
「気をつけろよ、ルピータの何より許せないことは、自分の作った料理を残されることだからな」
クリスが蒼白になったことは言うまでもない。
母屋に住んでいるのは親父とおれと、住み込み家政婦で、気のいい陽気なチカーノのルピータだ。
そして牧童達は敷地内にある、平屋建ての牧童棟に住んでいる。
親父の弟で牧童頭のジム。ベテランのロックにルピータの息子のパコ。物好きな日本からの農業研修生のヤス。メキシカンのカルロスとホセは不法入国者らしい。まあ、テキサスでは珍しいことではない。他に季節労働の流れのカウボーイが何人か入れ替わっている。
そんな大所帯のアンダーソン・ファミリーにクリスは加わったんだった。
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そこに広大な敷地を有するアンダーソン牧場がある。
深夜、親父の運転するおんぼろピックアップのエンジン音が聞こえた。
おれは部屋から飛び出して、玄関ホールまで一気に駆け降りて出迎えた。
「残念、親父っ、見逃したな!きのうの朝エリーの子供生まれちまったぜ。すっげえかわいい栗毛の牝馬で…!」
おれは最後まで言い終えることができなかった。
何しろ、親父の後ろに隠れるようにして、心配そうにおれを覗き込んでくる、ダークヘアの白人の子供が、そこにつっ立てたからだ。
気弱そうな生っちろいボーイ…それがおれから見た、クリスの第一印象だった。
親父がそのガキの頭に手を置くと、決然と言い放った。
「今日からアンダーソン家の新しい息子になったクリスだ」
一瞬、おれは親父の有無を言わせない、断定口調に気圧されてしまった。
「二人とも同じ年だが、クリスは慣れない牧場暮らしで大変だろうから、お前がよく面倒をみてやってくれ」
心の余裕ができたところで、そいつを観察してみると、いままでずっと泣きはらしました…ってわかる充血した目をしてた。
真っ赤な目でおれのことオドオドと見てるので、ちょっとたまらなくなってしまった。
どうしてそいつが泣いてたのかわかんねぇし、詮索して聞く気もなかった。
でも、おれまで泣きそうになってきそうだった。
だから、おれはとっておきのスマイルを貼り付けて自己紹介した。
「おれ、JPってんだ。よろしくな!」
「………」
クリスは親父の陰に隠れて更に硬直して縮こまったが、かまわずおれは引きずり寄せてハグした。
おれ達が出会ったのはまだ10才の頃だった。
次の日ルピータに紹介すると、いつになく険しい顔をして、クリスを上から下まで眺め回した。
そして、でっぷりと太った腰に手を当てながら言い放つ。
「あんれまあ!生っちろいひょろひょろのぼんずだねぇ!かわいそうに、ろくなもん食ってなかったんだろう。まってな、いまルピータ母さん特製のトルティーヤと牛肉の黒ビールシチューを用意してやるからね」
クリスは期せずしてルピータの料理魂に火をつけたようだ。
いかにも重そうな体をどたどたと揺すりながらキッチンに向かうルピータをクリスと一緒に見送りながら、おれは意地悪くささやいてやった。
「気をつけろよ、ルピータの何より許せないことは、自分の作った料理を残されることだからな」
クリスが蒼白になったことは言うまでもない。
母屋に住んでいるのは親父とおれと、住み込み家政婦で、気のいい陽気なチカーノのルピータだ。
そして牧童達は敷地内にある、平屋建ての牧童棟に住んでいる。
親父の弟で牧童頭のジム。ベテランのロックにルピータの息子のパコ。物好きな日本からの農業研修生のヤス。メキシカンのカルロスとホセは不法入国者らしい。まあ、テキサスでは珍しいことではない。他に季節労働の流れのカウボーイが何人か入れ替わっている。
そんな大所帯のアンダーソン・ファミリーにクリスは加わったんだった。
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